035 反王族のレッテル、いただきました?
--------------------ユイナの視点。
王の間に足を踏み入れた瞬間、強烈な違和感を覚えた。目の前には、空気を切り裂くような重々しさが漂っていた。部屋の中央には、王が倒れたままだった。
「えっ…」
私の声は、無意識に漏れた。どう見ても、王が生きているようには見えなかった。
「王様…」
クロエが言葉を失っていた。エルフィーナも無言で王の姿を見つめている。
そのとき、どこからともなく近衛兵の足音が響いた。金色の鎧を着た彼が、歩みを進めてきた。
「王様を暗殺したのはユイナたちだ。」
彼の言葉が、私たちを打ちのめした。
「は?」
私は思わず口にした。なんでそんなことを言うのか理解できなかった。王を討ったのが私たちだなんて、あり得ない。
「待って! どういうこと?」
エルフィーナが急いで言い返すが、近衛兵は一切動じない。
「証拠は揃っている。」
近衛兵は冷たく言い放った。
その言葉が私の頭を支配する。証拠?
思わず周囲を見回すが、誰も答えをくれない。王が倒れている部屋の中で、誰一人として立っている者がいなかった。
「誰がこんなことを…」
クロエが震えた声で言う。ルビーも、動けないようだ。
私は深呼吸を一度して、冷静を装う。心の中で、「まずいなぁ」と呟く。
「でもさ、どう考えても私たちじゃないでしょ?」
自分の声が少しだけ頼りなく響くのが、逆に不安を増幅させているような気がする。
近衛兵は一歩、二歩と近づいてきたが、私たちをじっと見つめている。その眼差しは、まるで私たちを試すようだ。
「証拠があるなら、出してみろよ。」
私は少しだけ挑戦的に言ってみた。何もできない気がしていたが、何かしらの言い訳を見つけたかった。
「証拠がここにある。」
近衛兵は冷静に言った後、何もなかった空間を指し示す。
私は一瞬だけ、周囲を見回す。何も起こらない、静かな部屋。けれど、その「静かさ」が逆に不安をかき立てる。何か隠されているのだろうか?
「信じられない…」
ルビーが呟いた。私も同じ思いだ。
「冗談でしょ?」
エルフィーナも眉をひそめながら言う。
その時、再び近衛兵が一歩踏み出し、私たちを鋭く見つめる。
「反王族の者たちが王を討ったという証拠は、既に王宮内で確認されている。」
彼の冷たく、響き渡る声に、私は言葉を失った。まさか本当に、何かが裏で動いているのか?
王を討ったのが私たちだなんて、信じられない。何かしらの陰謀があって、私たちをその真相に巻きこもうとしている。
私は心の中で、冷静に整理を始める。このまま何もしなければ、私たち全員が疑われる。そして、何か別の理由でこの状況が作られているのだと気づいた。すぐにその理由を突き止めなくてはならない。
「反王族…」
その言葉を口にした瞬間、私の中で一つの思いが確信に変わった。王宮の中で、何か大きな戦いが進行している。そして、私たちはその渦に巻きこまれている。
「私たちは無関係だ!」
私は力をこめて言うと、近衛兵は静かに頷く。
「証拠は、あなたたちの前に現れるだろう。」
彼の言葉は、私たちにさらに深い疑念を抱かせた。
私たちがここに呼ばれた理由は、ただの偶然ではない。この場に来る前から、すでに計画が進んでいた。そして今、私たちはその一部にされたのだ。
次に何をすべきか。どう動けば、この疑念を晴らせるのか。その答えを見つけるために、私は歩みを進めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。