031 王様に呼ばれた理由は、たぶんおやつ
--------------------ユイナの視点。
『ちょっと待って、なにこのフラグ。』
魔導兵は全力疾走中。鎧着てあのスピードってどういう仕組み?
魔導で軽量化? それとも中が空洞?(それはそれで怖い)
「おーい! そこの旅の方々ーッ!」
ああもう、完全に私たち目当て。逃げる暇すらなかった。
「ユイナ、なんかした?」とクロエ。
またその質問? 今回はりんご飴しか買ってないよ。罪の甘さくらいしか背負ってない。
魔導兵は目の前でピタッと止まり、息も整えないまま勢いよく口を開いた。
「アレクサンドロス=ユイナさんですねっ!? それと、そのご一行の皆さま!」
……え、なにその“伝説のパーティー登場”みたいな紹介。
こっちはおやつ休憩中なんですけど!? カステラとブルーハワイの時間なんですけど!?
「王城より緊急の要請です! すぐにお越しいただきたいとのことで!」
……は?
今なんて?
“王城”って言った? “緊急”ってつけた? それ、完全に“呼ばれた”じゃん。
「ねえクロエ、もしかして、これ……」
「フラグ、回収されたね」
満面の笑み。鼻の先、まだシロップついてるよ。
「……いやいやいや、私たち旅の素人だよ!? 王様案件に対応できるスキルセットなんて持ってないから! 履歴書に“りんご飴に弱い”って書くレベルだよ!?」
それでも魔導兵さんの顔は「すぐ来てください!」の一点張り。
この人、カチカチの真面目系だ。柔軟性ゼロ。逆に安心するけども。
ルビーはまだ謎のバナナ(チョコ付き・パン入り)を大切そうに持ってるし、
エルフィーナはカステラを一粒ずつ、几帳面にポーチへ詰めてるし、
クロエは「お城ってお風呂あるかなー」とか言ってるし……。
私だけじゃない、このパーティー、全員自由すぎる。
でも、そんな私たちに「要請」が来たってことは──
「……行くしか、ないのかぁ。」
王城へ、いざ。りんご飴のスティックを握りしめたまま。
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