017 温泉ハーレム、俺の心臓が熱すぎる
--------------------リチャードの視点。
クエストを終えて、全員が汗だくになったので、いつものようにお風呂に行くことになった。が、なんと、ユイナ様も、ルビーも、エルフィーナも、クロエも、全員が一緒に入ると言い出した。
「え、えっと、みなさん一緒にですか?」
俺は思わず声をかけるが、全員が異口同音に「当たり前でしょ?」という顔をしている。
いや、いやいや、そんなはずはないだろ。さすがにお風呂で一緒なんて――。
だが、すでに手は水に浸かり、誰もが湯船に浸かってくつろぎ始めている。俺が立っているのは、ほんの少し前の出来事に過ぎない。
ユイナ様は、ふわっと湯気の立つお湯の中で、すっかりリラックスしている。
「あ~、気持ちいい……リチャードも入ってきたらどう?」と、無邪気に笑いかけてくる。
「いや、私は……」
返す言葉もなく、うっかり視線が合ってしまうと、ユイナ様の顔が微笑んだままで、まるで俺に何かを期待しているように見える。
その隣、ルビーはというと、タオルで髪を軽く拭きながら、ちょっとだけジトっとした視線を向けてきた。
「別にリチャードが入ろうが、どうでもいいんだけどね。さっさと入ってきて。」
あれ、なんか嬉しそうに見える。いや、ツンデレは本当に面倒だ。
そして、エルフィーナ。
彼女はいつも通り、冷静そのものだが、湯気の中で微かに彼女の息が漏れるのを感じる。
「……どうして、リチャードはそんなに、恥じらうの?」
言葉の端に、少しだけ甘さが混じっているように感じる。確実に何かがある。
無理して顔を上げるのを避けて、視線をちょっとだけ逸らすと、エルフィーナがさらに近づいてきた。
「こっちに、来て。」
その一言に、俺は思わず内心で息を呑んだ。
最後にクロエ。
彼女は、というか、もはやその年齢に無理があるんじゃないかと思うくらい、照れくさい笑顔を見せながら、無邪気に湯船で体を横たえている。
「リチャード、こっちに来て。みんなと一緒じゃないと、駄目です!」
何その、妹のような無邪気さは。俺は、どこを見ればいいのか分からなくなってきた。
――そして、こうなると、普通は何かしらの事件が起きるものだ。
だが、俺の周りではそんなに簡単に事が進むわけもなく、結局、誰もが無言のうちに、ただ静かにお湯に浸かっていた。
「……あー、すごくリラックスする」
ユイナ様がまたつぶやいた。湯気の中でその瞳がきらきらと輝いている。彼女の無邪気な言葉に、思わずこっちが恥ずかしくなる。
「リチャード、なかなかお風呂で一緒になることがないから、こうやってみんなと過ごせるの、いいよね?」
言ってきたのはルビー。とても不機嫌そうに見えても、どこか嬉しそうにしているから、この子もまた、さすがツンデレ。
「うん……まあ、たしかに。」
そう答えつつも、心の中では「この後、絶対俺だけが疲れる未来しか見えない」と思っていた。
しかし、問題はここからだ。
エルフィーナが静かに俺の肩を押し、すぐ近くに寄ってきた。
「……リチャードがあまりにも意識しすぎて、こっちが気まずくなるから、もう少しリラックスして。」
その静かな口調に、またしても胸がドキリとした。
そして、少しだけ頬が赤くなっている自分に気づき、慌てて視線を逸らした。
クロエは無邪気に俺に向かって笑顔を向け、「リチャード、早く!」と手を差し伸べる。
その素直すぎる笑顔に、思わずまた心臓が跳ねる。
結局、何も起きないと決めつけていた俺の心は、完全に崩れかけている。
だが、誰もがその様子に気づくことなく、無言でリラックスした時間が続くのだった。
しばらく後、俺はお風呂から上がりながら、何とも言えない気持ちを抱えていた。
――これ、完全に俺の思いこみだけど、今後もこの状況、続くんだろうなぁ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。