013 ねえリチャード、これってもう反則じゃない?
--------------------リチャードの視点。
気がつけば、さっきまで押し寄せてた敵が、いない。
いや、ほんとに。
最初は何千、何万って感じだったのに、今は静かで、風の音すら気まずそうに聞こえてくる。
…ああ、これアレだ。戦争終わった後の沈黙ってやつ。
ルビーがぽつりとつぶやいた。
「ねえリチャード、これってもう反則じゃない?」
俺は肩を軽く回した。肩こりひどいし。
「ルールブックに“召喚禁止”って書いてない。」
まあ実際はね、**「リチャード以外は禁止」**ってちっちゃく書いてあるんだけどさ。
それ見えなかったことにしてる。眼鏡かけてないし、たぶんノーカウント。
結果:終わってた。
戦場? どこ行ったんだ戦場。
目の前にあるのは、焼け焦げたクレーターと、果物をむく魔界の王の姿だけ。
イグナティオス=ヴェルゼンは平然と口を動かしながら言った。
「いい運動だった。」
何のジム通いだよ。
俺はため息ひとつ吐いた。
「これで週末の整地作業に俺が呼ばれないことを祈る。」
そしたら、横でルビーが優しく笑った。
「大丈夫。誰かがやってくれるよ。」
おお、それはありがたい。
でも俺知ってるんだ。その“誰か”って、だいたい俺。
こうして、“時空の支配者クロス・イレオス”とその軍勢は、一晩で歴史から消えた。
記録にはこう書かれることになる。
『リチャードの七つの棺がマジでやりすぎた事件』
…あの棺、絶対もう一個くらい余ってたけど、黙っておこう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。