067 【忘れられた星樹林】
翌日。
俺たちはアカデミーの北側に広がる広大な森林ダンジョン【忘れられた星樹林】に集まっていた。
巨大な結界に包まれたその森には、背の高い木々が立ち並び、不思議とどこか神聖な趣がある。
普段は厳重に立ち入りが制限されているこの場所で、中間試験が行われるのだ。
ちなみにこの【忘れられた星樹林】は、一年編と二年編、どちらの中間試験でも舞台となるダンジョンである。
異なる点があるとすれば、それは試験を受けるメンバーだろう。
二年編ではクラス単位での試験になるが、一年編では学年単位。
そのため現在、この場にはEクラス以外の面々も集められており、当然Aクラスのユーリやアルバートもいた。
「時間だな」
そんな風に俺が周囲を観察していると、長めの黒髪と整った顔立ちを持つ年若い男性――Aクラスの担任かつ学年主任でもあるゼントリヒが前に出てくる。
彼は全体を見渡した後、静かに口を開いた。
「では、これより中間試験の内容について説明していく」
前置きの後、ゼントリヒが淡々とした声で語り始める。
まず基本的な試験内容としては、定められた試験時間内に【忘れられた星樹林】内の魔物をどれだけ倒せるか。
その際、討伐して得られた魔石の質と量で点数が決められるとのこと。
パーティーを組んでの挑戦も認められているが、その場合は獲得した点数が人数で等分される。
また、生徒同士での魔石の奪い合いも認められるとゼントリヒは語った。
「ただし、幾つか注意点がある」
ここまでの説明を聞きざわつき始める。学生たちを制するように、ゼントリヒは説明を続ける。
【忘れられた星樹林】は普段、結界により侵入を禁止されている。
内部の魔物の中には、非常に強力で危険な個体も数多く存在しているからだ。
ダンジョンの内部は大きく4つのエリアに分かれており、その区画ごとに出現する魔物のレベルも変わる。
下位の2つはEランクやDランクの実力があれば十分に攻略可能だが、上位の2つはCランクやBランクの実力が必要であり、一学年にとっては荷が重い。
それでも挑むのは自由だが、命を落とす可能性もあるため推奨しない――そうゼントリヒは語った。
(危険があるのを承知した上で、禁止じゃなくて推奨しないってのがステラアカデミーらしいな……)
ステラアカデミーは、突き抜けた逸材を育てるための育成機関。
そのためなら、多少のリスクは承知しているということだろう。
「おい、お前はどのエリアに挑戦する?」
「中間試験で危険は冒したくないからな。素直に一番下のエリアを探索するよ」
「俺は最低でもDランク認定を受けなくちゃいけないから、二つ目はマストだな」
学生たちは試験前最後の計画を立てていく。
そんな中、俺はというと――
(――さて。試験が始まる前に、改めてゲームの振り返りといくか)
『ダンアカ』において、この試験がどういう流れだったかを思い出していた。
まず、主人公はミク、トールとパーティーを結成。
ゲームでパーティーは基本的に4人制だったのだが、この中間試験では残り1枠にモブクラスメイトを勧誘することも、空けたまま3人で挑むことも可能だった。
その後、グレイは下位の2エリアを探索し魔物の討伐に励むことになる。
ちなみに上位の2エリアには入れない。
この段階のグレイのレベルではその2エリアはまだ実力が足りず、もし入ろうとすると、
『ここから先に挑むのは危険だ。しっかりと実力をつけてから挑戦しよう』
といったメッセージが出現し、強制的に引き返されるというゲームあるあるな演出が発生するためだ。
それ故、二年編の中間試験以降でなければ、グレイは上位エリアに進むことができない仕様だった。
その後、順調に魔物を倒し続けるグレイたちたが、当然それだけで中間試験が終わるわけはない。
なにせこの中間試験は――
『メインエピソードⅠ
最終パート 【古竜の激昂】』
――こう名付けられていることから分かる通り、第一章最大の山場なのだから。
では、具体的に何が起きるのか。
試験中盤、順調に魔物の討伐を進めているグレイたちだったが、突如として地鳴り発生。
何かと思った直後、地下から一体の巨大な魔物が出現する。
それは全身に火傷を負い、どう考えても死んでいると見間違えるほどボロボロの状態となった古竜。
そしてその古竜こそ、メインエピソードⅠのラスボス――煌血竜ブルート。
すなわち、不死の竜だった。
ブルートはかつて、ここから程近い山脈にて紅蓮の勇者レイヴァーンに敗北。
致命傷を負い、自身の不死性ごと滅ぼされかけたブルートは、この大森林の地下深くに逃げ込み眠りについた。
眠ったとてレイヴァーンから受けた傷が癒えるわけではないが、ただ生き続けるためにそうする必要があったのだ。
それから約500年間、ブルートはこの地で眠り続けることとなる。
(――だけど今日、グレイがこの地に足を踏み入れたことで、状況は大きく変わるはずだ)
ゲーム通りに進むなら、グレイの内に秘められたレイヴァーンの魂に反応したブルートは永い眠りから目覚め、かつての雪辱を果たすために地下深くから姿を現すだろう。
煌血竜は非常に強力な――Sランクの中でも上位とされる魔物だが、ブルートの場合は例外。
レイヴァーンに受けたダメージが残り続け、既に死に体だからである。
とはいえ、この段階のグレイにはブルートを倒せるだけの手段が存在せず……仲間がピンチになったタイミングで、一つ目のレイヴァーンの試練が発生。
それを突破したグレイが、初めて自分の意志で奥義を放つことに成功し、ブルートの討伐に成功するのだ。
この一件により、グレイは自分の意志で奥義を放てるようになる他、さらに周囲の注目を集めるようになる。
『ダンアカ』におけるメインエピソードⅠは、そんな流れで終幕する。
(あとは、現実でもゲーム通りに進むかどうかだが……)
そんなことを考えつつ、俺はシナリオ通りに進行させるための重要な二人――グレイとリリアナに視線を向けた。
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