065 解放のスキルオーブ
『パンパカパ~ン! 挑戦者の知恵を称えましょう。貴方に奥へと進む資格を与えます』
中間試験前日。
俺は一人で【英知の書架迷宮】にやってきていた。
今はちょうど、いつものようにクイズに正解したところだ。
レベルアップやアイテム集めという目的はもちろんあるが、今回に限ってはそれだけじゃない。
この一か月間の修行の成果を試すためには、一人でグランドオウル&グリモアに挑むのが最適だと考えたのだ。
「それにこれくらい一人でクリアできなきゃ、明日、あのギミックに挑戦する権利すらないからな」
ふぅーと息を吐いたのち、奥へと進んでいく。
重厚な扉の向こうには既に見慣れた書庫が広がっていた。
大量の本棚が立ち並ぶ中、俺は静かに中央へと歩を進める。
すると、
「ホホォー!」
「aaaaaA!」
出現したのは、巨大な梟――グランドオウルと、四方の本棚から飛び出してくる魔本――グリモアの群れ。
黄色い瞳で鋭く俺を見据えながら、グランドオウルは翼を羽ばたかせ上空へと浮かび上がっていく。
その光景を眺めつつ、俺は事前に考えていた作戦を反芻していく。
まず、相手のレベルは45なのに対し、俺のレベルは38と差は歴然。
さらにグランドオウルの基本的な討伐方法は遠距離から魔法でダメージを仕掛けていくことだが、残念なことにヤツは知力が高い。
こちらが『不死人形』特訓によるパラメータ上昇と、聖錬による火力上昇があるとはいえ、真正面から撃ち合うのは不利だろう。
聖錬はMPを大量に消費するし、何より途中でグリモアの群れに襲われたら何もできずに蹂躙されかねないからだ。
――もっとも、それを解決するための作戦は考えてきた。
「ホホォー!」
叫び声と共に風を放ってくるグランドオウル。
横に躱そうにも、周囲にはグリモアが集まってきていた。
逃げ場は完全に塞がれている。
万事休す?
否――
「プロテクト」
俺は詠唱と共に、透明な防壁を床と平行の角度で展開すると、それを足場に跳んだ。
「ホホォー!?」
「aaaaaA!?」
グランドオウルもグリモアたちも、まさかそんな躱され方をするとは思っていなかったように驚愕の声を上げる。
風魔法は先ほどまで俺がいた場所を通過し、背後にいたグリモアを巻き込んだ。
そんな光景を見下ろしながら、俺はにっと笑う。
「よし、成功だ」
プロテクトは本来であれば、透明の防壁を展開して敵の攻撃を防ぐスキル。
『ダンアカ』においても、それ以外の使い道なんて想定されていなかった。
しかしルクシアとの特訓を重ねる中、俺はふと思った。
展開した防壁はその場に固定され、敵の攻撃を防ぐ機能を持っている。
であれば、固定された足場として運用することも可能ではないのか――と。
実験の結果は見ての通り。プロテクトを連続で発動することにより、俺は疑似的な空中歩行を可能としていた。
風属性の浮遊魔法に比べればMP効率も操作性も悪いが――使いどころさえ間違えなければ、このように活用できる。
グランドオウルより高くまで移動した俺は、上空からヤツを見下す。
「上は隙だらけだな」
「ホホォー!?!?!?」
上空から、聖錬炎球を付与したエンチャント・ナイフを振り下ろした。
瞬刃による速度上昇効果が加わった一撃は、そのまま見事にグランドオウルの体を深く切り裂く。
コイツの防御力は決して高くないため、俺のレベルでも十分にダメージを与えることができた。
「aaaaaA!」
「ruuuu!!」
その光景を前に、グリモアたちが慌てた様子で魔法攻撃を放ってくる。
だが、それすらも俺の計算内だった。
「プロテクト」
「ッッッ!?!?!?」
プロテクトを斜めに展開し、反射することによって魔法をグランドオウルに命中させる。
この運用法も、ルクシアと特訓する中で習得したものだ。
だってアイツ、手加減してくれって頼んでいるのに真正面からじゃ防ぎ切れない火力の魔法撃ってくるし……
とまあ、そんな思い出はさておき。
「このまま畳み掛けていくぞ」
俺はそのままプロテクトを展開しては足場にし、時には盾に、時には反射板として活用。
さらにはエンチャント・ナイフとナイトブリンガーを駆使して、着実にグランドオウルにダメージを重ねていくのだった――――ー
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
数分後。
俺は無事に勝利を収め、レベルアップすることができた。
「ふぅー、危うい場面がなかったわけじゃないが、思ってたよりは簡単に倒せたな」
それだけこの一か月間に成長できたということだろう。
次からリリアナたちを誘ってダンジョンに行くときは、もう少し難易度の高い場所でも問題なさそうだ。
(中間試験で結果を残せれば、挑戦できる範囲も広がるからな)
そんなことを軽く考えていた直後、ふと目に入るものがあった。
「ん? あれは……」
グランドオウルが消滅した場所に、二つの球体が落ちているのが見える。
一つは透明で、もう一方は深い青色。
後者の持つ神々しい輝きに、俺は思わず息を呑んだ。
「っ! まさか――!」
俺は慌てて駆け寄ると、その球体の情報を確かめる。
そこにはこう書かれていた。
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【解放のスキルオーブ】
・対象スキルの潜在能力を開放し、新たに進化スキルを獲得することができる。
※対象スキルのレベルが10(MAX)および、対象者のレベルが40以上の時のみ使用可。
――――――――――――――――――――
「やっぱり……解放のスキルオーブだ」
解放のスキルオーブ。
それは俺が、どれだけの年月をかけてでも入手したいと考えていたアイテム。
――――【ヒーラー】の俺が最強を目指す上で、必須となる要素だった。
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