061 クイズ!
置物から、愉快な音声が鳴り響く。
まるでお祭りの司会者のような陽気な声に、リリアナたちは怪訝そうな表情を浮かべた。
「アレンさん、こちらはいったい……?」
「ああ、実はな――」
俺は二人に簡単な仕組みを説明していく。
この置物は【英知の書架迷宮】の隠し部屋へ入るための門番であり、挑戦者に幾つものクイズを出題してくる。
それを10回連続正解することができれば、晴れて中に入れるというわけだ。
『ダンアカ』に登場する多種多様な特殊ギミックの中では、特に珍しくもない一般的な形式である。
しかし、
「「………………」」
この反応を見るに、どうやら二人にとってはそれなりに衝撃だったようだ。
まあ実際、俺としてもこうして現実で目の当たりにしたら、かなり異質な光景だと思う。
何でダンジョンの中でいきなり愉快なクイズ勝負が始まるんだ、って。
とはいえ、これがこのダンジョンのギミックなのだから仕方ない。
奥に行くためにも、さっそくクイズに答えていくことにする。
『ここでは挑戦者の知恵が試されます。超難問クイズに挑戦しますか?』
置物からの問いかけに、俺は頷く。
「ああ、さっそく始めてくれ」
すると、フクロウは白い光を纏いながら、次々と問題を出題していく。
『ステラアカデミーを設立した者の名を答えよ』
『基本ジョブ【剣士】からランクアップできる上位ジョブを三つ答えよ』
『魔力の基本属性を全て答えよ』
『相反する属性が衝突した際、生じる現象とその名称を――――』
「大賢者ヴァールハイト、【聖騎士】・【双剣士】・【侍】、火・水・風・土、それから次は――――」
超難問クイズとはいっても、実のところ難易度は大したことがない。
特に『ダンアカ』をやり込んできた俺からすれば容易も容易だった。
結果、一度も詰まることなく10問連続で正解する。
すると、フクロウの置物は白い光を強め、勝利のファンファーレのような音を響かせた。
『パンパカパ~ン! 挑戦者の知恵を称えましょう。貴方に奥へと進む資格を与えます』
置物がそう宣言した直後、背後の本棚が左右に割れ、秘密の扉が姿を現した。
「というわけで、この扉をくぐるとすぐにボス部屋だ。先にボスの情報を伝えておくと――」
「「………………」」
「……えっと、聞こえてるか?」
未だに呆然とする二人に呼びかけると、リリアナは「はっ」と目を見開いた。
「も、申し訳ありません。少々驚いてしまいまして」
「……数分間も呆けるほど、ギミックが珍しかったか?」
「それもありますが、そうではなく……最も衝撃を受けたのはアレンさんの知識量です。出題された問題の中には、皇族としての教育を受けた私でさえ答えに窮するものが幾つか含まれていました。にもかかわらず、アレンさんは迷うことなく答えていらっしゃいましたから」
「…………」
……ふむ。
ゲームでは当然のように突破できるギミックだったため普通に答えたが、もしかしたらもう少し慎重にすべきだったかもしれない。
何と誤魔化そうかと悩んでいると、リリアナが続けて口を開く。
「もしや、その辺りについても魔導図書館で学ばれたのですか?」
「……あ、ああ。そんな感じだ」
「なるほど、やはりそうでしたか。ステラアカデミーの蔵書数とその質は群を抜いていると伺っていましたが、まさかそれほどとは……」
何だか都合のいい方向で誤魔化せそうだったので、リリアナの問いに頷いておく。
(いつもありがとう、魔導図書館)
俺は心の中でそう呟いた。
と、それはさておき、いつまでも話をしている暇はない。
本命はこの奥のボス部屋にあるのだから。
俺は落ち着きを取り戻した二人に、ボスの情報を伝えることにした。
「この先にいるボスの名前は智慧の梟。レベル45前後の巨大なフクロウの魔物で、戦闘中に取り巻きの魔物――魔本を複数召喚してくるとのことだ」
「レベル45……と申しますと、私と同等ということですね」
「ああ。それで本題だが、ボスの討伐はリリアナに任せたいと思う。相手は飛行能力と風魔法、そして強化魔法も駆使してくるけど……速度と知力を除いたステータスは低めだし、何といっても氷属性が弱点だから、相性的にも問題ないはずだ。それに経験値効率からしても、これが一番だからな」
レベル45の魔物となると、ローズなら問題なく倒せる代わりに獲得できる経験値が少なく、俺だと単純に実力が足りない。
フクロウの魔物ということで飛行するため、ワーライガーと戦った時のような戦法も通用しないだろうし……
となると、ここは遠距離攻撃手段があり、属性的にも相性のいいリリアナがボス討伐を務めるのは至って自然な流れだった。
(そもそもこのダンジョンがリリアナにとって魅力的だと考えたのも、安全かつ効率的に経験値を稼ぎやすいからだしな)
そんなことを考えていると、
「なるほど。そして私とアレン様で、取り巻きの排除を担当するということですね」
まず、ローズが納得したようにコクリと頷く。
従者である彼女の立場としても、主人が経験値を稼げる機会を無駄にしようとは思わなかったようだ。
そして、最後にリリアナも笑みを浮かべ、
「ええ、私もアレンさんの作戦に異論はありません。個人的にも成長の機会を求めていましたから……それより、取り巻きの方は大丈夫なのですか?」
「グリモアのレベルは30前後だから、ローズさんならまず楽勝だし、俺にとっても相性が悪い相手じゃないから問題ない」
「――では、準備は万全ですね」
三人での役割を確認し終えた俺たちは、そのまま扉の奥へと足を踏み入れた。
扉を開けた先に広がっていたのは、巨大な一室だった。
四方の壁に本棚が立ち並ぶ書庫。
そして、その中心には――
「ホホォー!」
一羽の巨大なフクロウが鎮座していた。
先ほどの置物とは違い立派な生物で、翼を広げれば4メートルを超えるだろう。
黄色い瞳は鋭く、肉食獣に負けない狩猟者の眼光を放っていた。
隠しエリアのボス【智慧の梟】。
その姿は端正なフクロウといった風情ながら、放つ気配は尋常ではなかった。
「ホホォォォーーー!!!」
グランドオウルが再び雄叫びを上げると、四方の本棚がガタガタと揺れ始める。
すると本棚から幾つもの本が飛び出し、魔力を纏って浮遊し始めた。
あれらがグリモアと呼ばれる魔物である。
まずは7~8冊のグリモアが姿を見せたところで、召喚は終わりを迎えた。
グランドオウルは大きな羽を羽ばたかせ、ゆっくりと宙に浮かび上がる。
「じゃあ、作戦通りに」
「ええ」
「かしこまりました」
こうして、ボス戦が幕を開けた。
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