015 ゲーム世界の主人公
教壇の前に立ったリオンは軽く教室を見渡した後、芯のある声で告げる。
「私は今日からこのクラスの担任を務めるリオン・コルニクスだ。君たちも知っての通り、ここステラアカデミーは実力至上主義を掲げている。力がある者はそれだけ恩恵を受けられるわけだが――逆にこの底辺クラスにしか入れなかった君たちのような落ちこぼれは、何もしなければただ搾取されるだけの立場となる」
ただでさえ重い雰囲気が、さらに重くなる。
そんな空気の中、リオンは真剣な表情を緩める。
「だが、安心しろ。私の手でお前たちをビシバシと鍛え上げてやる。各学期末にはクラス対抗戦があるが、上位クラス――最上位のAクラスだろうと倒してやるのだという気概を持ち続けろ。私からお前たちに求めることはそれだけだ。以上」
彼女の言葉に、生徒たちの表情が少しだけ明るくなる。
このアカデミーに入りたいと思った時の気持ちを思い出したのだろう。
先ほどまでの重たい空気は払拭されていた。
その後、リオンは生徒たちに自己紹介を促し、一人ずつ立ち上がって名前とジョブを語っていく。
「トール・ブロスト。ジョブは【槍使い】だ」
「ふぁ~、ルクシア・フォトン、【魔法使い】だよ~。むにゃむにゃ……」
「ミ、ミク・アドレット。ジョブは【召喚士】です!」
キリっとした目つきと黒色の短髪が特徴的な、近く主人公の戦友となる少年――トール・ブロスト。
軽やかなピンク色のセミロングを揺らす、とある事情からEクラスに所属する稀代の天才魔法使い――ルクシア・フォトン。
肩口に切りそろえた茶髪と、穏やかな笑みが特徴的な主人公の幼なじみ――ミク・アドレット。
ゲームにも登場したメインキャラクターたちが喋っている姿に見惚れていると、すぐに俺の番になる。
俺は立ち上がると、迷うことなく告げた。
「アレン・クロード。ジョブは【ヒーラー】です」
ヒーラーと名乗ると、教室中から怪訝そうな視線が向けられる。
しかし、反応はその程度で、批判的な声が飛んでくるでもない。
それも当然だろう。
俺は主人公ではなく、今流行りの悪役転生をしたわけでもない。
ただのモブなのだから、注目を浴びないのが自然である。
(――それに、この自己紹介イベントにおいて最も注目を浴びる人物は他にいる)
俺と入れ替わるようにして、ガタリと窓際の最後列の人物が立つ。
そこは入学試験において、最下位だった者が座る席。
俺はゆっくりと振り返り、彼の姿を視界に収める。
するとそこに立つ、少し長めの灰色の髪を持つ少年がゆっくりと口を開いた。
「僕はグレイ・アークと言います。ジョブはありません」
外ならぬ『ダンジョン・アカデミア』の主人公――グレイ・アークの言葉に、教室中がざわついた。
新キャラが続々登場していますが、現時点で名前はうろ覚えで大丈夫です!
再登場時には、適宜どんな立ち位置か説明を入れる予定です! ざっくりとストーリーだけ追っていただければと!