第一部「夢現の狭間」その9
目次
第20章「覚醒」
第21章「救い無き扉」
第22章「祈りの弾丸」
あとがき
第20章「覚醒」
「な…何なんですか…あれ…!」
「分かるわけねぇだろ…あんなの初めて見たぞ…あれじゃまるで…」
「…半魚人みたいっすね。」
彼等は今、何も見えない状態だ…私が彼等を導かなければ大変なことになる…!
「皆さん、取り敢えず私の方へ来て下さい!」
なんて奇妙な…生物なのだろうか。
怪物の目は頭の側面に付いていて、鼻の穴と思われる物は目と目の間にあった。
大きくて丸い口には唇が無く、真っ黒な口の中には大量に鋭い牙が生えている。
頬は異様に骨ばっていて、へこんでいるように見える。
そして、その怪物の首は人間の物とは明らかに違っており、まるで顎と首が合体しているように見える。
身長は普通の人間よりも少し高く常に猫背で、とても筋肉質な体だった。
腕と脚の筋肉は異様に盛り上がっており、ヒレと水掻きが生えていた。
更に魚のような尻尾も生えており、頭から尻尾の先まで背ビレのような物が生えていた。
身体中には黒い斑点模様が不規則に浮き出ており、鱗はびっしりと敷き詰められるように生えていた。
簡潔に表すなら、正に半魚人といったところか…
「キルィエァアァアアア!!」
くっ…
まるで蛇の威嚇とタカの鳴き声を足したような咆哮を…
「何だ!?」
あの前傾姿勢は…まずいッ!
「右へ避けて下さい!」
「わッ!」
「…ッぶねぇな!!」
怪物が私たち目がけて全力で突進し、飛びかかってきた。
なかなか速い動きができるようだ…
だが、飛びかかった後の隙は大きい!
ダメージが薄いとはいえ、カッターの刃が通るなら…打撃も通るはずだ!
全力で左側頭部に回し蹴りを!
「ふっ!」
「グゥェルェア!?」
今のを受けて倒れないとは…やはりただの生物ではないようだ。
しかし、時間は稼げただろう。
「皆さん、早く出口へ!時間を稼ぎながら私も少しづつ後退します!」
「あぁ、分かった!…おい、早く行くぞ!俺達がここに居てもあいつがやりずれぇだけだ!」
「た…確かにそうですけど…」
「先に行って待つだけっすよ。」
「急いで下さい!怪物が体勢を整える前に!」
「わ…分かりました!」
「おい!こいつはあんたに返しとくぜ!」
彼はそういうと私の足元へカッターを滑らせ、他の2人と共に出口へと走って行った。
「き…気をつけて下さいね!」
よし…これで怪物との戦闘に集中出来る。
リボルバーは…敵性個体の数が分からない以上、なるべく温存しておきたい。
カッターがあるが…切りつけるだけでは鱗に弾かれてしまうだろう。
もう一度相手の攻撃を見切って…首か膝に刃を突き刺して確実に無力化しよう。
「グ…ゥェエアアアァア?」
…目の前にいる私を見つけられていないのか?
暗闇の中ではあまり物が見えないのだろう。
それなら今の私の方が有利だ。
唐突な暗視能力の発現には戸惑ったが…今はこの能力を有効活用するとしよう。
今は出口の方へ後退しながら距離を取って……
「え…?」
音が…後方から…?
今、私の後ろには彼ら以外に誰もいないはず…。
…違う…この音は…?
はっきりと聞こえるのに…遠くで音が鳴っているような感覚が…
床板が軋む音と…濡れた足音か…
そもそも床板なんてここには…
「…さん…大丈夫でしょうか…」
「今はあいつに任せるしかねぇだろ!そんなこと考えてる暇があったらさっさと出口に向かって走れ!」
「きっと大丈夫っすよ。」
これは……もう約30m程は彼等と距離が離れているというのに…
彼らの靴音さえもはっきりと聞こえる!
じゃあ…さっき聞こえた音は…まさか!
「グッィェエ…キュシュゥエアァアアアアァア!!」
私の身に何が起きているか分からないが、今の音への仮説が正しければ…
「貴方に構っている暇はありません…!」
「キェアシュァアァアアア!!」
また飛びかかって来るつもりか…なら…
「受け止めて差し上げましょう…!」
「ギェアェアアッッ!!…グァッ…クシュア…」
…落下地点を予測して、喉にカッターの刃が突き刺さるように構えるだけだ。
「ゲブァ…」
怪物の血がカッターの刃を伝って腕に流れ落ちてくる。
怪物の吐く血が頭上から雨のように降り注ぎ、カッターの刃が折れると同時に、濡れた怪物の体が音を立てながらタイルの上に落ちた。
カッターは使い物にならなくなってしまったが、この怪物を無力化する事には成功したはずだろう。
しっかりと生死確認をしておきたいが…今はそれどころでは無い。
「早く皆さんに知らせないと…!!」
第21章「救い無き扉」
「はぁ…はぁ…ジョゼフィーヌさんは…大丈夫でしょうか…」
「今はあいつに任せるしかねぇだろ!そんなこと考えてる暇があったらさっさと出口に向かって走れ!」
「きっと大丈夫っすよ。」
クッソ…
やっぱり逃げるしかできないのか…
確かに皆で一緒に居ましょうって言ったのは俺だけど…
こんなの予想出来るわけないじゃん!!
相手が人だったら…話し合いでも解決出来るかもしれないし…
まぁ、ちょっと話し合いじゃ解決できなくてもさ…少しは役に立てると思うし…
そりゃあ4対1なんて流石に勝ち目が無いって分かるでしょ…
相手が人間ならね!
何だよ半魚人って!!
強いし、怖いし、キモイ!!!
くそ…
やっぱり…暗闇の中で一般人が戦いを手伝うなんて…
無茶だってわかってたけど…
少しは役に立てるって思ってたのに…俺は……!!
「よし、あともう少しで出口だ!」
ん…?
「今、ジョゼフィーヌさんの声が聞こえませんでしたか!?」
「…………!」
「確かに何か聞こえるな…クソッ…何でここだけ音が聞こえにくいんだ?」
「じゃあ大丈夫だったんすね。」
「こ…ここで待ちませんか?」
「いや…今はあいつの状況が分かんねぇんだ。あいつがあの魚野郎をぶっ殺してくれてりゃ最高だが、もし…あいつがまだ戦ってたり、何かの理由で逃げてきたら俺達が邪魔になるだけだ!」
「じゃあ先にここ出るっすか?」
「あぁ、先ずはここを出て俺たちにできることをやるぞ。」
「な…何をやるんですか?」
「あんたはドアの前であいつのことを待って、ヤバそうなら引っ張ってここから出ろ。」
「OKっす。」
「お前は俺と後ろの方で待機して、俺とお前であいつのサポートだ。分かったか?」
「さ…サポートって…」
「んなもん状況に合わせろ!」
「は…はい!」
「………ドアを……………………さい!!」
「やっぱりジョゼフィーヌさんの声ですよ!!」
「おい…マジかよ。あいつ足速すぎじゃねぇか!?」
「なんて言ってるんすかね。」
「全力でこっちに走って来てるってことは…逃げろっつってんのか?」
「暗くて音も聞こえにくいので…良く分からないですね…」
なんて言ってるか聞こえないけど…
ジョゼフィーヌさんが…生きてて本当に良かった!
「あいつの声が聞こえるようになったってことは、もう近くまで来てるってことだ…だったら出口で詰まらないように先に出た方がいいな。俺の後ろに並んで着いてこい、俺が最初にドアを開けておく、さっき話した通りに動くぞ!」
「ダ…です!ドアに近………いで下さい!!」
「え?」
何で…何であいつが?
「マジかよ…!?」
「キュゥアアアアシャエエエエ!!」
あの叫び声は…ヤバい!
今…星次さんを助けられるのは…
俺しか居ない!
「うぉおおおあああ!!」
大丈夫だ…!
星次さんの脇腹を掴んで全力で右に倒れれば…!
「星次さん!」
「お前…」
間に合え!
「キュアエアアエア!」
間に合え!!
「シュルエアアアア!!!」
間に合え!!!
「うわぁっ…!」
「つッ…!」
あ…
あっぶねぇええ!!
あいつの爪が…あた…頭の左側の方シャーって!
風切る音聞こえたって!
てかタイル痛っ!
「立てッ!散らばるぞ!」
「あ…はい!」
そうだ…
相手は怪物なんだし…待ってくれるわけないんだ。
「おい!」
「は…はい?」
「お前、結構やれんじゃねぇか…助かったぜ。」
「……はい!」
…え?
もしかして俺…今、褒められた…よね?
しかも…ちょっと厳しめの星次さんに!?
今…こんなこと考えてる場合じゃないけど…
めっちゃ…嬉しい!
役に立てて良かった!
こんな俺でも…やろうと思えば…役に立てる!
でも…
「キュア?」
状況は変わってない…
たったの一撃を全力で避けただけだ…!
でも…あいつだって目が良いわけじゃない!
「え!?」
は…春喜さん…
まさか!
「グゥエシャアア!!」
「流石にこれで倒れるっすよね。」
い…医療箱を…
全力で……!
「…流石だな。」
「い…1発で…ノックダウンって…」
「鍛えてて良かったっすね。」
「流石に死にまし…た…よね?」
「いや…念の為にきっちり首をはねて…心臓を潰す。」
うわぁ…えぐいなぁ…
まぁ、必要な事だけど…
「じゃ…じゃあ…俺が…」
「いや、お前はあんまり力が強くねぇんだ。なぁ、あんたに頼めるか?」
「OKっす。」
「あ…確かに鱗硬いですしね。じゃあ、これどうぞ。」
「借りるっす。」
なんか…呆気なく終わったけど…
何事もなく終わるのが1番!
てか…春喜さん強すぎじゃね?
まぁ、鉄の箱で後ろから頭ぶん殴られたら流石に怪物も倒れるよね…
「それじゃあやるっすよ。」
あ〜…ちょっと目そらそ…
そういえばジョゼフィーヌさんは?
多分…もうここに居てもいいはずだと思うけど…
「シシャエアアアアアア!!」
「春喜ッ、避けろ!!」
は?
何で…?
ダメだ…近すぎる…
避けられるわけない!
助けに行くのも間に合わない!
「は…春喜さん!!」
第22章「祈りの弾丸」
「シシャエアアアアアア!!」
マジかよ…!
うつ伏せから仰け反って喉笛噛み切りに行くなんざイカサマじゃねぇか…!?
蛇みてぇな動きしやがって!
「春喜ッ、避けろ!!」
「は…春喜さん!!」
クソッ!間に合わねぇ!!
「うわッ!」
「ッんだ今の音!」
「クェアッ…」
さ…魚野郎の頭が弾けやがった!
じゃあ…今のクソでけぇ音は!
「あいつが撃ち殺したのか…!」
「は…春喜さん、大丈夫でしたか?」
「大丈夫っすよ。」
「てか…お前も床にぶつけた所は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です!まぁ、打撲しましたけど…。」
「おい、あんたも大丈夫か?そこに居るんだろ?」
……声が聞こえてねぇのか?
いや、銃声は近くで聞こてたんだ…それはねぇか。
「ジョゼフィーヌさーん!…どうしたんでしょうか?」
「何かあったんすかね。」
「あの光ってたやつも取りに行かないといけねぇんだ…戻ろうぜ。」
「そうっすね。」
「あ…そういえば何か光ってるのがあったの忘れてました…」
「まぁ、あれが何かも分かんねぇし…玄関の鍵じゃなかったら最悪だけどな。」
「た…多分、大丈夫ですって!あの〜…ゲームでもボス倒したら何か…次に進めるアイテムが!…とか…ありますし…」
「はっ!俺達が今ホラゲーの中に居るなら有り得…た…」
何だよこれ……冗談だろ?
あとがき
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