第一部「夢現の狭間」その6
目次
マップ:1階の間取り
第14章「リビング」
マップ:リビングの間取り
第15章「惨劇の跡」
あとがき
マップ:1階の間取り
第14章「リビング」
ジョゼフィーヌさん…大丈夫かなぁ…
流石に1人は危ないんじゃないかなぁ…
でも…俺にはどうにも出来ないもんなぁ…
でもジョゼフィーヌさんだしきっと大丈夫で…
「皆さん、お待たせしました!」
「ね?」
「何がだよ」
「何がっすか?」
「ふふっ…なんの事を話してたのか分かりませんが、賑やかで良いですね!」
「てか戻ってくんの早くねぇか?」
「そうでしょうか?10秒も皆さんを待たせてしまいましたが…とりあえず、ここには私たち以外誰もいませんでした!あと危険なものも特には見つかりませんでしたよ!」
よ…良かったぁ…
銃もったヤバい人とか触ったら即死級のトラップとか無くて…
でも…だとしたら俺達ってどうやってここに?
「じゃあさっさと出口探そうぜ。」
「出口も見つけましたよ!」
「流石っすね。」
「じゃあ…こ、ここから出られるんですか?」
「それが…こちらも実際に見てもらった方が早いかと…とりあえず、着いてきてください!」
「OKっす。」
あれ?
今…ジョゼフィーヌさんの顔が一瞬だけ曇ったような…
てか、実際に見てもらった方が早いってことは…
「なぁ、こっちのドアは何だ?」
「そちらのドアはまだ詳しく調べていないのですが…敵性存在が無いことは確かです!」
まだ調べてないってことは…このドアは出口じゃないのかな?
てか玄関がこんな普通のドアなわけないか。
「このドアノブ…回らねぇな。」
「何か音的に…固くて回らないっていうよりも…何かこう…ドアノブがピタッとしてて回る様子すらないというか…」
「金具が擦れる音がないっすよね。」
「鍵が掛かっていて開かない…という感覚とは別という事ですか?」
「あぁ、そんな感じだ。」
あ〜そんな風に分かりやすく言いたかったなぁ…
「なぁ…ここに誰も居ないんなら隠れなくてもいいんだろ?つまり、音が出ても良いんだよな?」
「確かにそうですね。」
「おい、アンタが思いっきりここにタックルしてみろよ。」
いや…流石にぶっ飛び過ぎじゃない!?
確かに…警戒する必要ないけど!
「それは危険なので止めておきましょう。」
止めるのは賛成だけど…
何で危険なんだろう?
「何でっすか?」
「このドアの向こう側に危険な何かがあるかも知れません。その場合にタックルでドアを開けると、そのまま勢い余ってトラップに…なんて事が起こる可能性があるからです。」
「…確かにそうだな。」
うっわぁ…
想像しただけでゾワゾワするなぁ…
「なのでここはピッキングツールで開けちゃいましょう!」
おー!スタイリッシュ犯罪発言!!
そんなに笑顔で言っていい事じゃ…
ってか右手になんか持ってるし!
「でも鍵穴ないっすよ。」
「大丈夫ですよ!このカード式のピッキングツールはドアノブのすぐ横の隙間に差し込んで使うだけなので!まぁ、ラッチという部分が斜めのタイプじゃなければ使えませんし…ピッキングという表現であってるのか分かりませんが…」
「いや…立派な鍵開けだと思いますよ…」
「とりあえず試してくれ。」
「それではやってみますね!」
本当にあんなので簡単に開くのかなぁ…
「あ…ここもですか…」
いま…隙間にカード構えただけじゃ?
「あ?何でカード使わないんだよ。」
「それが…カードが入れられないんです。」
「あ…あの…充分カードが入る隙間あると思いますよ?」
「そうですね…まとめて説明したいのであちらの扉まで行きましょうか。」
「あのドア…随分古いんだな。」
「そうっすね。」
何か…
あのドアだけ別の時代の物って言われても違和感無いくらい古いな…
それで、左がリビングで右が…洗面所かな?
てかトイレないんだ!?
「ここが玄関です!」
「じゃあ早く出た方が良くないっすか?」
「いや…出れないんだろ?出れるんだったら階段に戻ってきた時に話してるだろ。」
「流石ですね!実は…ここもピッキングを試した…いや…試そうとしたのですが、それも先程のドアと同じく、ピッキングツールが入れられないという結果に終わりました…」
あ、またポーチからなんか取ってる。
「このピックを今からあの鍵穴に全力で通します、よく見ていて下さいね!」
逆手持ちにして…
「いきますよ!」
振りかぶって…
「3…2…1!」
全力でぶち込んで…!?
「今…空中で…跳ね返りましたよね!?」
「おいおい…これもイカれた現象の内の1つか?」
「つまり鍵穴に物が通らないってことっすか?」
「…指も入らねぇな。何か…ガラス突っついてるみてぇな感じだぜ。」
「推測でしかないのですが…無理やり開けることは出来なさそうです。」
「そうだな…じゃあ俺達はどうすりゃいいんだ?」
「とりあえず…リビングを探索してみませんか?私もまだ詳しく部屋の中を調べられていないので、特殊な鍵が見つかるかもしれません!」
「そうだな、そんな銃が有ったんだし…何でも開く鍵ぐらいあんだろ。」
「そうっすね。」
「何か…皆さん感覚麻痺してきてません?」
「いや…いちいち現実じゃ有り得ないなんて考え続けても意味ねぇし…自動翻訳とか動く闇とかに比べたら何ともねぇだろ。」
「そうっすよね。まぁ僕は考えるの苦手なだけなんすけど。」
「さっさと行こうぜ。」
適応力高すぎるって…
普段どんな生活してたらそんなに割り切れるんですか!?
「…大丈夫ですよ、流輝さん!正直に言うと…私もお2人の適応力に少々驚いているので…流輝さんの方が一般的な反応かと……」
「そう…ですよね?俺が適応力低すぎるって訳じゃ…」
あれ?そんなに分かりやすい反応してたかな?
まぁ…慰めてもらえて感謝しかないんですけど。
「はい、大丈夫ですよ!無理に割り切ろうとすることはありません。思考は人それぞれですし、ここには流輝さんの事を責める人なんて居ませんよ!今は安全ですし、無理に考え方を変えようとしないで良いんですよ。流輝さんは流輝さんなんですから!それでは…行きましょうか?」
「はい…ありがとうございます!」
あぁ…本当にありがとうございます…
御守りに弾丸くれた時もそうだけど…なんて有難いお言葉を…
もう…なんか泣きそう…
勇気づけてくれるジョゼフィーヌさんの優しさと良い話で泣きそう…
「なるほどな…ここが2階から見える場所だったのか。」
「ここは普通のリビングっぽいっすね。」
…オシャレなリビングだなぁ。
ドアから入って右側がキッチンで左側にリビングがあって…一体化してるって感じなのかな?
リビングは…壁の真ん中にカーテンがあって、キッチン側にテーブルと4つの椅子と、入口の近くの壁に壁掛け時計と花瓶が乗った横長の棚が…
それで、テーブルの反対側には2~3人座れそうなソファーがあって、そのすぐ前に低めのテーブルと壁に埋まってる大きめのテレビがあって…
めっちゃ良い家じゃん!
…不気味な事がなければ!
「やっぱり…このも開きませんね。」
カーテンの裏に何かあったんだ。
「そっちは…ガラスの引き戸か。」
あっちはジョゼフィーヌさんと星次さんに任せて…
俺はあっちの棚を調べてみようかな…
テーブルとイスには…なんにも無いな。
それで時計は…ずっと1時で止まってるな。
壊れてるのかな?
棚の引き出しは3つか…
これは?
…ハズレか。
こっちは?
…これもハズレ。
最後は?
…なーんにも無い。
じゃあ花瓶は?
…花も飾られてないし、水も無い。
中には何にも……
「あ!」
「どうしたんですか?」
「なんか見つけたんすか?」
「花瓶の下に…メ…メモが!」
よっしゃぁあ!!
役に立てて…たら…良いな!!!
マップ:リビングの間取り
第15章「惨劇の跡」
「メモって…あの部屋にあったやつと同じのか?」
「は…はい!同じ紙で…大きさも近いので…そうだと思います!多分…」
「お手柄です、流輝さん!今はとにかく情報が欲しいので助かります!」
「とりあえず持ってきて見せてくれ。」
「は…はい!」
「何か嬉しそうっすね。」
「やっとお役に立てたのが嬉しくて…あ、コレです。」
「なぁ、あんたが持ってるメモも見せてくれねぇか?」
「はい、コレですね!」
「よし、広げてみるぞ。」
これも破れてて血が着いてるってことは…
このメモは元々1枚の紙だったっぽいな。
そんで…今度はどんなイカれた事が書かれてるんだろうな…
『記録No.1より12時間半が経過
禁域を屋内から観察しているだけだというのに3人のメンタルに段々と異常が現れ始めた。
ウェスはもう限界に近いだろう、グレイルもすっかり憔悴しているがなんとか正気を保っている。
マリーは比較的に症状が軽いようだ、彼女は今ウェスと一緒にリビングに居るがグレイルは先程から…
確かに私もこの家の中に入った瞬間から、おぞましい何かの視線のようなものを感じたが、精神に異常をきたす程のものでは無かった…
恐らく禁域には精神汚染の様な悪影響を及ぼす能力が有るのだろう。
この悪影響も個人差があるようだがその差は一体…
先に私以外の3人だけでもここから出してやりたいが…』
まぁ…あのメモよりはまだ何があったか分かりやすいが…なんの事かさっぱりだ。
「このメモの破れ方やNo.1より12時間半経過というところを見ると…あの部屋にあったメモより1つ前のメモで間違いなさそうですね。」
「確かに…敗れた部分がピッタリくっつくな。」
「そ…それに、血も着いてますもんね…。」
「そして、このメモの内容からの推測ですが…どうやらこのメモを書いた方は、屋外を…禁域と呼んでいるそうですね。」
「あ…あの、初めに拾ったメモを読み返してみませんか?今なら意味が少しは…分かりそうな…気がしません?」
「そうだな。」
確か…こっちにも禁域がどうとか書かれてたな…。
『記録No.2より30分が経過
前々から異変を感じていたが、まさか2人があんな怪物になるとは…やはり禁域は混沌と邪悪の世界なのだろう…私はもう教団に帰れない。
友よ、置いていくことを許してくれ。』
…やっぱり分かんねぇな。
話がぶっ飛びすぎだ。
「これも推測に過ぎないのですが…この屋内には、私達よりも先に4人の…教団という組織に所属している調査員の様な役割の方達が居たようですね。そして、13時間が経過すると2人が怪物と化した…これは比喩なのか分かりませんが…先程のメモに書かれていた3人の内の2人に何かが起こったのではないでしょうか?」
「じゃあ…あと1人は一体どうなったんだ?」
「そこまでは分かりませんが…考えられるパターンは、このメモを書いた方と一緒に脱出したか、何らかの理由で…死んでしまったと考えるのが妥当かと…」
「と…ところで…せ、精神汚染って…俺達は大丈夫なんでしょうか?」
「今のところ何ともないんで僕は大丈夫っす。」
「俺も…特に何もねぇな。」
「…私も何ともないですね。」
……いや、多分嘘だろうな。
でないとあの部屋出た時の焦りようは説明がつかねぇ。
まぁ、こいつなりの気遣いってやつだろうな。
「とりあえず…ここで見付かったのはこれくらいか?」
「まだソファとテレビ調べてないっすよね。」
「テレビは…まぁ電波がねぇから調べる意味ねぇな。」
「念の為にテレビの裏も探してみませんか?このリボルバーを見つけた時のように、隠しスペースがあるかも知れませんし。」
「じゃあそっちは頼む。あんたは俺とだ、力持ちなんだろ?動かすときに手伝ってくれよ。」
「OKっす。」
「それでは流輝さんはテレビを動かすのを手伝ってくれませんか?」
「は…はい!」
「それじゃ…調べるとするか。」
パッと見た感じ普通のソファだな。
クッションの下は…何も無しか。
特に隠しスペースみたいなもんもねぇ…
「よし、ソファ退かしてみようぜ。」
「OKっす。」
「じゃああんたはそっちを持ってくれ…よし、行くぞ。せーのっ…!」
「あれ?なんか見た目より軽くないっすか?」
「そうだな…明らかにおかしい。」
普通…鉄とか木とかが入ってるだろ。
なのに重みが一定っていうか…なんか中身が詰まってない様な…いや、空洞って訳でも無い…
「とりあえず、こっちにどかすっすよ。」
「あ…あぁ、OKだ。」
「こっちの調査は終わりましたよ!特に何も……」
「どうしたんすか?」
「そ…それって…血…血じゃぁ…ないですか!!」
「はい…血痕ですね。」
「…マジかよ。」
「この血から何かわかんないんすか?」
「そうですね…今は検査キットが無いので分かりませんが、血痕の数や形等から分かることは有ります。少し調べて見ますね…」
「いつ着いた血なのか分からねぇのか?」
「血液は環境によって乾燥するスピード等が変わるので、見た目だけでは正確なことは分からないんですが、血痕の色からして…最近の物であることは分かります。」
「なるほどな。」
「……奇妙ですね。」
誰かの血と睨めっこか…こいつは少しだけ時間がかかりそうだな。
ちょいと待つか。
………?
気のせいか?
一瞬こいつの目がちょいと光ったような…
「…これは…なんでしょうか?」
「どうしたんですか?何か分かったんですか?」
「何かが血と一緒に固まってますね…」
ピンセットか…てかこいつ何でも持ってんな。
あのポーチも部隊の装備か?
「これは…魚の鱗ですね。」
「ここで魚でも捌いたんすかね。」
「それは…無いかと思います。」
「じゃあ何なんだ?」
「私の推測と不可解な点について話すと少々時間がか
かりますが…」
「あ…あの…ちょっとここまで緊張しっぱなしで疲れましたし…ジョゼフィーヌさんの話を聞きながら皆で休みませんか?俺…ヘタレなんで…疲れてきたんです。」
「そうっすね。休憩もした方がいいっすよ。」
「じゃあそうするか。とりあえず、適当に座って…あんたの話を聞かせて貰おうか。」
あとがき
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回は5500文字以上も入ってしまいました…
いつものことながら感想もお待ちしております!
それでは次回もお楽しみに!