第一部「夢現の狭間」門の向こうへ
『門を開く』
これがあなたの選ぶ終わりですか?
正しいのならば、そのまま物語の幕が降りるのを見守って下さい。
また、既に別の終わりを見届けたのならば…同じように最後までお付き合い下さい。
もし、もう一つの終わりをお選びになるのであれば…ここを立ち去り、あなたが望む終わりを見に行って下さい。
お伝えしたい事はそれだけです。
それでは、最後をお楽しみ下さい。
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「でも…俺も『マーリン』さんの所に行きたいです!」
「…何でだ?」
「実は…俺には……ちっちゃい妹と弟が居るんです。」
「それとどんな関係があるんだ?」
「俺の妹は…治療法が見つかってない原因不明の病気にかかってて……病院で寝たきりなんです…」
まだ…あんなに幼いのに…本当なら小学校に通って普通の小学生みたいに楽しく……過ごせたのに…
「だから…『魔法』で妹を治してもらえれば…妹は普通の子と一緒に楽しく過ごせて…病んでたお母さんも…いっつも悲しそうな顔をするお父さんも…前みたいに笑ってくれるんじゃないかって…思ったんです。」
「よく頑張ってきたっすね。」
「そいつは…気の毒だったな…」
それに…!
「ジョゼフィーヌさんのことも…『魔法』ならどうにかなるんじゃないかなって思ったんです!魔法については何も分からないんですけど…それでも…少しでも可能性があるなら、俺はそのチャンスを逃したくありません!」
「そうか…」
「だから俺はマーリンさんの所に…」
「俺も行く。」
「え?」
そんな簡単に?
「お前らが深い事情を話してくれた様に…まぁ、俺にもそれなりに深い事情があってな。どういう事かって話を始めたら……まぁ長くなるから今は置いとくとして…」
星次さんは…過去に何があったんだろう?
「まぁ簡単に言うと…復讐の為に金やら武器やらが要るって事だ。それに…そいつには借りがあるしな…お前が言った通り、『魔法』でどうにかなんなら俺の目標も達成…借りも返せて一石二鳥って事だ。」
「ふ…復讐…?」
「まぁ、いつか話してやるよ…そんで、行く所が決まったってのにお前らはいつまでそこに座ってんだ?」
「そうっすね…ジョゼフィーヌさんも連れていっちゃっていいんすかね。」
「まぁ…大丈夫だろ。それにこいつはこのメモ読んたら『世界中の人々の為に!』とか言い出すタイプだろ。」
「あははっ…確かにそうですね!それにジョゼフィーヌさんは強いですし!」
「じゃぁ…さっさと行こうぜ。この『門』ってやつは…『門は棚のある壁に設置する。』ってメモの内容的に最初の部屋にあるはずだ。」
「でもあの部屋に『門』なんてありましたっけ?」
「多分このメモみたいに後から見えるようになるんじゃないっすか?」
「とりあえず行ってみないとわかんねぇな。」
「じゃあ僕がジョゼさんのこと連れて行くっすよ。」
「念の為に警戒しながら二階に行くぞ。」
「はい!」
それにしても…
あの怪物はどこに行ったんだろう?
いきなり消えちゃった…とか?
だったらいいんだけどなぁ…
「おい、床見てみろ。あのドアからここまで濡れた跡があるぞ…」
「じゃ…じゃあ、あれはあの開かなかった扉からここまで歩いてきたってことですかね?」
「かもな…階段上がろうぜ。」
あの扉の向こう…どうなってるんだろう…
まぁ、開けたくもないし開きもしないんだけど…
「なんかここの階段が懐かしいっすね。」
「あの時のジョゼフィーヌさんには驚かされましたよね…」
たった10秒で1階を見て回ってきたって聞いた時は本当にびっくりしたなぁ…
それに…
この階段を下りる時にお守りも貰ったんだったな…
あの時は本当に勇気が出たな…
「うわっ…窓がこんな風になってるのも忘れてました…」
「ふっ…そういやここで気絶してたよな。」
「ちょッ!笑わないで下さいよ!」
あぁ〜…!
俺が気絶した事…ジョゼフィーヌさん忘れててくれないかなぁ〜!!
「ジョゼさんはこの部屋出た時とっても取り乱してたっすよね。」
「そうでしたね…結局あれなんだったんでしょう…」
「よし…やっと戻って来たな…ドア開けるぜ。」
「OKっす。」
「はい!」
一応構えとこ…
「あぁ…『門』ってあれの事か……もう驚かなくなってきたな。」
「何か麻痺してきたっすよね。」
「えっ!?いやいやいや!あれも十分おかしいですよ!?」
何だよあれ!
いや…まぁ予想は出来てたけどさぁ!
でも本当に棚が無くなってて、壁に『門』ができてるなんて思わないじゃん!
「何か…これもめっちゃ古くないですか?」
「……そうだな。」
門の…枠?の部分はレンガで作られてて……
上の方もレンガでアーチが作られてるんだ!
それにしても…このレンガも古いなぁ…
上の方はガラスがはめられてて…
扉も古い木でできてて…両開きの扉で…
あっ!
ドアノブじゃなくってあの輪っかみたいなやつ引っ張るタイプだ!
本当にファンタジー映画とかでしか見た事ないのが目の前にある…
「それで…どこに鍵穴があるんだ…?」
「う〜ん…見当たらないですね。」
「とりあえず鍵当ててみるとかどうっすか。」
「…やってみるか。」
いやぁ…流石に近づけただけで開くなんて…
「おっ…今の音…鍵が開いたんじゃねぇか?」
「えっ…えぇぇ…?」
ガチャッ!って何だよ!
普通開かない……まぁいっか!
「お前ら…もう引き返す気はねぇだろ?」
「もちろんっすよ。」
「はい!まぁ…ちょっと不安なところもありますけど…それでも…後悔したくないので!」
「じゃあ…準備は良いな?」
「大丈夫っす。」
「…行きましょう!」
凄い…めっちゃ軋む音が聞こえ…
「…って眩しッ!!」
「くっそ…またかよ!『魔法』ってやつは全部こうなのか!?」
「とりあえず進むっすよ。」
「そうだな…どうせあの…メモの時みてぇに…」
「あ…れ…?」
意識…が…
「眠たく…なって…」
「くっそ…体から……力が…抜け……」
「星次…さん!」
「もう…無理っすね。」
「は…春喜さんも…」
あっ…ダメだ…
もう眠すぎて何も…
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う…うぅうん…
ここは…どこ…?
何か…薄暗いような…
それに…背中がふかふかだ…
布団も掛けられてる…
あったかいなぁ…
じゃなくって!
「皆さん!大丈夫で…」
「スーッ…スーッ…」
「う…んぁあぁ……くそ…どこだ?」
「グガガガガガガガッ……あれ……?」
良かったぁ…!
俺も皆もベッドで寝かされてたんだ!
って…ベッド?
てか寝かされてたってことは誰かが助けてくれたのかな?
「全員無事に目覚めたか…」
「へっ?」
あの椅子に…誰かが座ってる!
「まずは…私のメモを全て集め、悪夢と現実の狭間…『禁域』を生き延びた君達に賞賛を。そして…悪夢のような現実へようこそ。」
「あんたは……誰だ。」
「私は『禁域』にメモを残し…君達と同様に『禁域』から現実世界へ生還した者の1人。」
メモを…残した?
…って事は!
「私が『マーリン』だ。」
Ending「Black Swan」
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あとがき
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!
こちらの方でも最後まで投稿が終わったので嬉しいです!
ちなみに、こちらは第二部への続きがある終わりですが、もうひとつのエンディングは続きのない終わりです。
よろしければ、もうひとつのエンディングも読んでみてくださいね!
第二部からは少し書き方が変わりますが、第一部よりは読みやすいと思います!
そして第二部「破滅を照らす者:賢者との出会い」は、第二部を読み進める上で必要な設定の話が多めなので、こちらは一気に投稿するつもりです。
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!
第二部もぜひお楽しみに!
よろしければ感想・コメントも聞かせてくださいね!