第一部「夢現の狭間」Epilogue
Epilogue「開くべき扉は」
な……何だこれ…
『このメッセージを読んでいる者へ
このメッセージを読んでいるということは、君は私の書いたメモを全て集め、「銀の鍵」を手に入れたという事だろう。
その鍵を使えばどんな扉をも開き。
そして、君が望む場所へと帰ることが出来る。
だが待ってくれ。
どうか私に力を貸して欲しい。
この場所に訪れ、この奇妙な現象を見た後なら。
「魔法」というものの存在を信じてくれるはずだ。
今、世界は魔法と「悪夢の邪神」によって滅びようとしている。
私一人では到底止めることは出来ない。
だから今は1人でも協力者が欲しい。
もし協力してくれるのならば、私は君に対価を払う。
その鍵を使えば、私が創った「門」を開いて私の隠れ家へ移動することが出来る。
どうか頼む。
門を通って私に力を貸してくれ…7月7日の金曜日…この日に世界の終焉が近づいている。
真名は教えられないが私の教団内の呼び名を伝えておく。
私の呼び名は「マーリン」だ。
願わくば世界に邪神が解き放たれぬことを。』
完全には信じられないけど…
ここに書いてあることが本当だったら?
『その鍵を使えばどんな扉をも開き。
そして、君が望む場所へと帰ることが出来る。』
…ここに書いてある事が本当だったら俺達は家に帰れるし、ジョゼフィーヌさんを病院に連れて行けるかもしれない!
けど…
『今、世界は魔法と「悪夢の邪神」によって滅びようとしている。』
これも本当だったら?
もしここを出ても…世界が滅んじゃうって事?
『どうか頼む。
門を通って私に力を貸してくれ…世界の終焉が近づいている。』
いや…流石に……有り得ないよね?
でもここに書かれてることを見たら…完全に嘘だって思えないんだよなぁ…
『この場所に訪れ、この奇妙な現象を見た後なら。
「魔法」というものの存在を信じてくれるはずだ。』
でも…俺達にできることって……?
「読み終わったっす。」
「あっ…俺もです。」
「それで…これからどうする?」
「メッセージを信じて「マーリン」さんの所に行くか、家に帰るかって事…ですか?」
「…そうだ。」
「僕はまだよく分かってないんで意見聞きたいっす。」
「その…ちょっと…俺も内容が凄すぎて…」
「俺は…完全には信じきれてねぇが……この『マーリン』とかいう奴は敵じゃないんじゃねぇか…?」
「何でですか?」
「俺達のことを殺したいんだったら…このメモに『鍵』の能力のこと話さねぇだろ?俺達のことを騙したいんだったら…初めから『門』って奴の事だけ書けば良かったんじゃねぇか?」
「た…確かにそうですね…」
その方が…俺達が家に帰る可能性低くなるし…
俺達のことを…こ…殺すか捕まえるかしたいなら確実だし…
でも相手は全く知らない人だし…このメモの内容が全部嘘だったら?
そんなこと考えたらきりが無いけど…
ど…どうしたら良いんだろう…?
「う〜ん…」
「それと…これはただの予想でしか無いんだが…」
「話してくれませんか?」
「このメモはマーリンって奴が書いてるはずだよな?」
「多分…そうですよね。」
筆跡も似てるし…
「じゃあこのメモに使った『魔法』も…コイツがかけたはずだ。」
「つまり…?」
「敵意があるなら…この手紙にかけた『魔法』で俺達を殺しちまえば早かったんじゃねぇか?」
「言われてみれば…!あ…でも…」
「俺達を『魔法』で殺せない理由があるんじゃないか…って事だろ?」
「…はい。」
てか簡単に心読みすぎでしょ…
星次さんって本当は超能力でも使えるのか?
「それも確かにあるかも知れねぇが…だとしたらこの銃を置いていく理由もねぇよな?」
「た…確かに…!」
「どういう事っすか?」
「このメモの内1枚はこのリボルバーと置いてあった。つまり、このリボルバーも『マーリン』って奴が用意した事になる…って事は『マーリン』って奴が俺達を殺したいなら…生き残る確率を上げたり、自分にとって害になりそうな物を置いていくのはおかしいってことだ。」
「じゃあ僕達に生き残ってもらう為にそれを用意してるからマーリンさんは敵じゃないって事っすよね。」
「あぁ、そういう事だ。」
「じゃあ…マーリンさんは少なくとも俺達をすぐに殺そうとしないし…味方かもしれないって事ですよね?」
「完全には信用出来ないがな…」
「どうしたら良いんでしょうか…」
「僕は『マーリン』さんのとこに行くのもありだと思うっすよ。」
「何でそう思ったんだ?」
「今の話聞いてて思ったんすけど。『マーリン』さんが僕達の味方ならここに書いてある事も本当になるんで、ここから出ても世界が終わるって事になるんすよ。」
「だからマーリンを助けて世界の終わりを止めるって事か?」
「そうっすね。後は僕ここの部分が気になったんすよね。」
「あぁ、『もし協力してくれるのならば、私は君に対価を払う。』ってところか?」
「このマーリンって人は『魔法』使えるっぽいんで、その人から貰えるお礼はほぼ何でもありって事っすよね。」
「な…何でも?」
じゃ…じゃあ……『魔法』ならあれも…!
いやいやいや…確証は無いんだし…でも…
このチャンスを逃したら一生後悔するかもしれないし…
でも命あってこそだしなぁ…
「あんたは…そんなに欲しい物があんのか?」
「物っていうか記憶っすね。」
「…どういう事だ?」
「実は僕、昔の記憶が無いんすよね。なんで、『魔法』なら元に戻せるんじゃないかなって思ったんすよね。」
「えっ?記憶喪失なんですか?」
「なるほどな…」
「だから僕はマーリンさんのところ行きたいっすね。」
そ…そんな事があったんだ…
記憶喪失って本当にあったんだ…
「た…大変ですね…」
「お前は?」
「えっ?」
「お前はどうしたいかって聞いてんだよ。」
「あ…あの…星次さんの意見を先に聞いていいですか?」
「俺は……正直に言うとまだ決まってねぇ…」
「で…ですよねぇ…」
「家に帰ったところで地球が滅びるか滅びないか…『マーリン』って奴の所に行ってもそいつは本当に味方か…助けに言ったところで俺達に何が出来るか…」
「俺も同じこと考えてたんです!でも…」
俺は…
〖終幕の選択へ〗
この物語には2つのエンディングがあります。
『元いた場所へ帰る』というエンディング。
『門を開く』というエンディングの2つです。
皆様にこの物語の終幕を選んで頂こうと思います。
もちろんどちらを読んで頂いても問題ありません。
ただ、皆様ならどちらの終わりを先に選ぶのか…
それだけの事にすぎません。
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました。
皆様が物語の終わりをお楽しみ頂ければ幸いです。