第八話 使い方
「さあて、ここならいいだろお」
サリーアの町を出て少し歩いたところ、周りに何もない平原に俺はいた。
「ここでやるということでいいですか?」
俺はエルゴッタと対峙していた。
「おうよお。いつでもいいぜえ? 見せてくれよお。神様の加護ってやつをなあ」
エルゴッタは口では余裕をかましている。
しかし顔は笑ってはいなかった油断していないことが分かる。
俺とエルゴッタは構えをとった。
「なんだよお。その構えはど素人だぜえ。やっぱゴリ押しかあ? 戦い方も忘れたかあ?」
確かにそうだが、やはり少し頭に来てしまう。
「ええ忘れましたね。武闘家の戦い方というものをご教授お願いしますよ」
偉そうに少し嫌味ったらしく俺が言うとエルゴッタはハハハと笑った。
「なら俺が思い出させてあげねえとなあ? 先に殴ってきなあ」
エルゴッタは構えをとりながら俺に言った。
先制攻撃を許してくれるそうだ。
A級の魔物であるキングオークを一撃でぶっ飛ばすほどの威力がある拳だ。
力は抑えないといけない。
「いくぞ!」
俺は力をセーブしつつ地面を蹴ってエルゴッタの顔目掛けてパンチを放った。
「マジか! 予想以上に速いぜえ! だが!」
ヒュ!
「!?」
なんだ!?
世界が回った!?
いや違う!
俺が回っているのか!?
一瞬拳を突き出した腕に感触を覚えた瞬間に俺の目の前の景色はグルグルと回った。
俺は空中で身体が回転しながら地面に激突した。
「いてて……」
普通だったらこれで済むはずもないが、ステータスのおかげで大した痛みもない。
せいぜい軽く小突かれた程度だ。
「やっぱりなあ。ゴリ押しだあ。俺には通用しねえよ」
エルゴッタは首を鳴らしている。
だがそれでも俺から目を離していない。
「今何をしましたか?」
「さあなあ? もう一回確かめてみるかあ?」
クイクイと手招きして俺を挑発している。
「ならもう一度!」
俺は再び地面を蹴って拳を突き出す。
今度は先ほどよりも力を込めてだ。
トンッ
(これは!)
エルゴッタの手が俺の拳を逸らしたのを見た。
一瞬の動作だったが、俺は確かに捉えた。
力の方向をずらす。漫画でもよく見たやつだ。
(そういうことか!)
分かれば単純だな。
だが分かった所で……だ。
俺は再び地面に激突しながら、次の戦い方を考えた。
▼
「ヨ、ヨシキさん!」
観戦していたリーゼが声を上げた。
「へへん! どーだいリーゼちゃん! レベルが高えだけのゴリ押しなんざあ、俺の敵じゃねえんだぜえ?」
むんと腕の筋肉をリーゼに見せつけるエルゴッタであったが、当のリーゼは一瞬ジトッとしただけだった。
隣にいたクオルもやれやれといった様子であった。
だがすぐに観戦へと戻った。
「ふむ。あの直上的な素人パンチ……確かにヨシキさんは記憶喪失で戦い方を忘れているのかもしれない。だが、それでも彼はS+のステータスだ。仮に手加減したとしても並の兵士や冒険者では歯がたたない。あの一発のパンチでも避けられずに終わるだろう。その意味でいうなら贔屓目だがエルゴッタはそのパンチを捉えられるだけのステータスがある。それに無駄に“消耗“しないよう“調整”もしている。この決闘という形式ならエルゴッタにも勝ち筋があるかもしれない」
クオルは感心した様子で言った。
「いや、ヨシキさんは“攻撃力”を抑えているな」
「なんとそうなのですか? ベルさん」
「ああ、マームの森を脱出する時にヨシキさんの戦いを見ているからな。あの時の容赦ないパンチは本当に目で追えない」
「ではヨシキさんが殺すつもりでかかれば、エルゴッタは抵抗もできずにやられると?」
「ああ、だがステータス“全力”だったとしてもエルゴッタなら少しは抗えるかもしれない……スキルがあるからな」
「それを使うタイミング次第では勝てる可能性が万が一でもあるかもしれないわ」
モニカが会話に参加した。
「モニカ、彼はステータスの特性や性質について理解しているのか?」
クオルが妹であるモニカにステータスについて話を振った。
「……あ! そういえば、何も教えてなかったわ!」
しまったという顔でモニカが額に手を当てた。
「ということはヨシキさんは、今“全力”ということか?」
「“素早さ”はそうでしょうね」
「となると、もしかしたらこの決闘はエルゴッタが勝つかもしれない。あのレベル差を見た時はヒヤヒヤしたが、ヨシキさん記憶喪失というハンデが効いてくるかもしれんな」
「ヨシキさんが……負ける……のですか?」
リーゼも話に入った。
「エルゴッタさんの武闘家としての実力も分かっているです……。それでもきっと……使徒様は負けはしないはずです」
ほんの少し何かを孕んだ目でリーゼはヨシキを見た。
「使徒様って、リーゼ。ヨシキさんの前で言ってないでしょうね? 彼、そういうのは嫌だって言ってたし」
モニカがリーゼに向かって注意した。
「言っていないです。でもクリエト様が遣わした御方であることは事実なのです……」
リーゼがしゅんとした様子でそう言った。
「そう。でも気をつけなさいよ? あなた時々ヨシキさんを見る目が少し変な時があるから」
「そ、そうでしたか? そんなつもりはないのですが……す、すみませんです」
リーゼはペコリと頭を下げて謝罪した。
それを最後にみんな決闘観戦に戻った。
(私はやはり未熟です……ほんの少しヨシキさんがやられている姿を見ただけで心の奥底の何かがモヤモヤとするのです……)
地面に激突した姿を見て、なんと情けないことかと彼女の中の何かががなり立てていた。
(いけません! 私は……使徒様を導かねばならないのです! それがクリエト様に与えられた私の使命なのですから!)
リーゼは誰にもわからぬようにこっそりと拳を握り、真剣な表情でヨシキを見た。
(そう! これは使命なのです! 魔王と魔族を永遠に排し邪神が介入もしようがない素晴らしき世界への道標となるための!)
今、彼女はどんな目をしていたか。
みんな決闘を見ていたために誰も気付かず分からなかった。
◆
「ヨシキだっけなあ? 確かに早いし、パワーもすげえ。ステータス通りだろう。だが……活かしてねえ。なっちゃいねえ。この世はレベルが全てじゃねえ。レベルの差は覆るんだぜえ?」
「よく分かりました」
戦い方か……。
俺はこの世界に来て日が浅い。
喧嘩か……
この世界へ来る前は……まあ、どうでもいい。
だが、そう。あのブラッド種コングと戦った時、俺は不意を突かれた。
それでも勝てたのはステータスのゴリ押しと相手が同じく力で押すだけのやつだったからだ。
技を使ったモンスターには遭遇していない。
だが部下を使ったあのコングには一撃を喰らった。
ちょっとした戦法というやつだ。俺はあっさりと引っ掛かった。
もし奴が俺と同等かそれ以上のステータスを持っていたら、俺はあの時致命傷、運悪ければ死んでいた可能性もあった。
本当に分かったよ。遅いくらいだった。
俺もどこかで舐めてたぜ……。
レベル20近くの差があるからな。
目一杯手加減しとかなきゃって。
「エルゴッタさん」
「ああん?」
俺が名前を言うとエルゴッタ、いや、エルゴッタさんは怪訝な顔で答えた。
「私、本当は力を抑えていました。全力で行くとあなたを木っ端微塵にしかねないので」
「ほお? 言ってくれるじゃねえかあ? 舐めてるねえ俺をよお? それとも本気じゃねえから、無様に地面に激突したのは実力じゃないってかあ?」
「いいえ、私には実力と呼べるものは何一つありません。この力は神から頂いたものに過ぎませんので……」
俺がそう言うとエルゴッタさんは目を丸くする。
「何一つないってえ……それは流石に卑下し過ぎじゃねえかあ?」
「いえ、事実です。私は戦いの素人です。おそらく記憶を取り戻した所で格闘の実力はあなたに遠く及ばないでしょう」
格闘技なんて教わったことがないから当たり前なんだがな。
「ですのでエルゴッタさん……偉そうに言ってしまいますが、どうか私に武闘家としての戦いというものを教えていただけないでしょうか?」
「……ステータスはおめえが強えのに教えて欲しいとはなあ。調子が狂うぜえ、ったくよお」
エルゴッタさんは後頭部を掻きながら言うと、構えを取り直した。
「よおし、いいだろう。なら記憶喪失のおめえさんに武闘家の在り方ってのを思い出させてやろうかねえ?」
今度はエルゴッタさんから仕掛ける気だ。
「今度は俺から行かせてもらうぜえ? おめえさん防御力高えから遠慮しないでいいよなあ?」
「ええ、構いません。どうぞ来てください」
俺も身構えた。
「ならいくぜえ!」
今度はエルゴッタさんが地面を蹴って、俺に迫った。
速い! でも捉えられる!
神さん譲りのステータスのおかげで俺は彼の動きを目で追える。
しかしその速度はあのブラッド種のコングを超えている。
この世界に来てから一番速い攻撃だ。
「おらあ!」
エルゴッタさんはそのままの勢いで俺に向かって右拳を放った。
「ふ!」
俺は彼の拳を避けた。
避けるのにかなりの意識集中を要した。
油断していると直撃してしまうと俺は直感で思った。
ゴブリンなどの攻撃では棍棒が振り下ろされ始めていても、そこまで集中することもなく、気力を削るようなこともない。
だがエルゴッタさんの攻撃に対しては、精神力をかなり使っているように思えた。
「な、なんだ?」俺は思わず呟いた。
突如として小さな違和感が俺の中に生まれ始めていた。
「まだまだいくぜえ!」
エルゴッタさんが拳の連打を俺に打ち出した。
次々と来る拳も俺はどんどんと避けていく。
だがこうしている間にも違和感はどんどんと大きくなる。
何かおかしい。
だんだんと疲れていく、集中力も持続がキツくなっていた。
どういうことだ?
「はあはあ……」
「お? どうしたあ? 汗が出てるぜえ? ステータスの“使い方”も忘れちまったかあ?」
使い方? なんだそれ? ステータスに使い方も何もないだろ。
ああ、だめだ! すっげー疲れる! 100m走の全力疾走をずっとしているぐらいに体力と気力が削られるぜ!
気のせいかエルゴッタさんの拳も速くなっている気がする。
目で追うのが難しくなっていた。
「ぜえ……ぜえ……」
「鈍くなってるぜえ。動きがよお」
「うあ……」
やばっ! 一瞬フラってなっちまった!
「隙ありい!」
「ブッ!」
俺はエルゴッタさんの拳が右頬にあたり吹っ飛んでいった。
「ヨ、ヨシキさん!」
リーゼちゃんの悲痛な声が聞こえた。
「ぐふ!」
俺はまた吹っ飛び地面へと叩きつけられた。
さっきのパンチ、ほんの少しだが痛みが走った。
明確にこれはダメージだと認識できるぐらいには効いた感じがする。
わずかだがHPが減った感覚がするのだ。
あのブラッド種コングに殴られた時以上だ。
ま、あの時はガードしてたからというのもあるだろうけど。
「ステータスオープン」
俺はそれを確認するためにステータスを開いた。
ブオン!
============
ヨシキ・ハルマ
レベル:69
職業:武闘家
HP:9991/10000
MP:5000/5000
攻撃力:1424
防御力:1231
素早さ:1987
器用さ:1122
運:1000(最大値)
魔法適正:
火:S
水:S
風:S
土:S
光:S
闇:S
回復:S
強化:S
スキル:
神魔法
称号:
神の加護を受けし者
============
確かにHPは減っているけど、それでも一桁のダメージか。
とりあえず今のところHPが少なくなる心配はいらなそうだ。
でも……
「はあはあ」
とりあえず息を整えて体勢を立て直した。
おかげで少しは息苦しさもなくなり楽になった。
だがこの疲れは一体なんだ?
“使い方”っていうやつと関係があるのか?
うーん、分からん。
その辺、教えてもらってないしな。
まさか使い方があるなんて思わないじゃん……。
使うってどう使うんだよ……。
あとで聞かなきゃな。
「おいおい、俺の全力モロに喰らってそのダメージかよお。これが神の御加護で底上げされた強さってやつかあ? すげえなあ」
どうやらエルゴッタさんも俺のステータスの数字が見えたらしい。
自分が確認するためだけに開いた画面だからかなり小さいしその分字も小さい。
そこから俺とは5m以上離れているのに画面が見えるのか?
だとしたらかなり目がいいな。
「あーあ……神様ってのは不公平だよなあ? みーんなにその御加護を与えてやればよお……死なずに済んだやつだっているかもしれないのにさあ? えり好みとかしてよお? ほんと……けちんぼだよなあ」
エルゴッタさんが、神さんへの不満を吐いた。
神への不満を吐いたからか、ふと見るとリーゼちゃんがあの無表情の顔でエルゴッタさんのことを見ていた。
うーん、なるほど、この人、あまりデリカシーというものがなさそうだな。
TPOをわきまえるのは得意じゃなさそうだ。
クオルさんがエルゴッタさんの言ったことを謝っている様子が見てとれた。
うーん、ここはエルゴッタ。ここだけはさん付けは出来ないな。
武への姿勢はとても感心できるが…。
「ふう……」
「お! 息が整ったかあ。それじゃ再開と行くかあ」
どうやら俺が落ち着くまでエルゴッタさんは待っていてくれたようだ。
レベルとステータスでいうなら俺の方がかなり上だというのに、この様である。
単なる武の技量差だけではない。
この世界でのステータスというものの知識の差もあるだろう。
「まあでも、今回だけだ。次は疲れても容赦なく攻撃を加えるからなあ。じゃ、行かせてもうぜえ!」
再びエルゴッタさんが距離を詰めてきた。
少し休んだおかげか動きが目で追える。
「今度は蹴りで行ってみるぜえ!」
右足の鋭い蹴りが俺の顔目掛けて飛んできた。
目で追えるがやはり速い。
俺は顔を後ろに逸らしてかわした。
だが、やはりかわしただけで再び疲れがどっと溜まった感覚があった。
「く!」
「おお? やっぱりすげえ疲れてるじゃねえかよお。でも容赦しないぜえ? おまえさんHPたっぷりだからなあ? おらあ!」
「ぐう!」
迫り来るパンチの応酬にとうとう俺は両腕でガードすることしかできなくなっていた。
あの赤コングから受けたパンチにも似た衝撃を受けた。
だがなんとか吹き飛ばぬよう踏みとどまった。
「短時間でこんなに“消耗”しちまうとはなあ! なっちゃいねえぜえ! “使い方”がよお! “調節”も出来ねえのかあ。完璧に忘れちまってるようだなあ?」
「ぬう……くそ……」
「だが俺の拳の連打をここまで受けてなお、傷らしい傷がついてねえとはなあ。やっぱり“HP”と“防御力”は伊達じゃねえようだあ。さすがS+! だがそれもいつまで“持つ”かな?」
“消耗”、“使い方”……やはりステータスには何かがある。
レベルが高ければ万能になるというようなそんな簡単なものじゃないようだ。
くっそー。ネット小説だったら、そのままレベルが高けりゃ強いっていう感じで分かりやすかったのになー!
面倒だぜ……。
ガードしている腕もヒリヒリし始めた。
最初は特に何も感じなかったが、拳をガードしている箇所から痛みがじんわりと広がり始めた。
こうしてガードしているだけでも異常なまでに体力が削られていく。
これではフルマラソンの全力疾走だ。
「ふん!」
「のわ!」
さらに強く打ち込んできた拳により俺はガードを崩された。
「おっしゃあ!」
「がっ!」
俺は腹にモロにパンチを喰らってまた吹っ飛んだ。
な!? い、痛え!
俺は吹っ飛んだ先で倒れたままそのまま腹を抑えて悶えた。
「ヨ、ヨシキさあん!」
リーゼちゃんの叫び声が聞こえた。
「こ、これは……一体……」
「おいおい、まじかあ? 大丈夫かよお? こりゃマジで重症みてえだなあ……。記憶喪失と言ってもここまでとはなあ……」
エルゴッタさんが心配そうに俺に話しかけた。
「レベルはおまえさんが上だとしても、“使い方”を忘れちまってるんなら話になりゃしねえ。俺が言い出しっぺで悪いけど、決闘は止めだなあ。おーい、おっさんさあ……ちゃんと戦い方教えたのかあ?」
「いや、それは……」
「ああ、やっぱりかあ。どうせレベルゴリ押しの一撃で魔物倒せてたから、言うの忘れてたろお? S級は確実にあるブラッド種を倒せるくらいだから大丈夫だろうって思ったんだろ。ったく」
やれやれといった表情で後頭部を掻いているエルゴッタさん。
ガーレンさんは何も言えず、その場に俯いた。
「確かにこちらの落ち度だった。S+のステータスである以上、“使い方”も心得ているはずだと。だが彼は記憶喪失だ。“忘れてしまった”という可能性を失念していたよ……」
彼は額に手を当ててさらに俯いた。
「結果がこの“消耗”だぜえ? おまえさん、全部短期で決着つけられたから分からなかっただろうけど、長期に持ち込まれたらぜってえ負けるぜえ? 今のままだとなあ」
はあっとエルゴッタさんはため息を吐いた。
「期待したけど、これはねえぜえ……。やっぱりと言うべきだけどよお、いくらレベル差があっても“使い方”がなってねえと負けちまうってことだねえ。それに武闘家としての技もクソもねえ。“忘却”ってのは本当にひでえもんだねえ。まあとりあえず決闘は終わりだなあ。リーゼちゃんに回復魔法かけてもらいなよお」
期待外れだったという様子でエルゴッタさんは背を向けてみんないるところへ戻って行こうとした。
くそ!
まさかこうまで無様にやられるとは思わなかった。
腹の痛みがまだ響く、疲労もかなり蓄積されている。
でもよ……
「待ってください!」
「ああん?」
「ヒール!」
俺は立ち上がった。そして自分の身体にヒールをかけてHPと疲労を完全に回復させた。
「おお! 回復魔法使えたんかあ! そういやステータスに回復の適正がSって書いてあったなあ!」
「すみません、エルゴッタさん。もう少し付き合ってもらってもいいでしょうか?」
ここまで情けない姿晒して今更言う資格はないかもしれないけどさ。
「私は武闘家として相応しくないということが分かりました。単なる職業に書いてあるだけのものです。私はエルゴッタさんには及ばないです」
俺は事実を言った。
ふむ。と言った様子でエルゴッタさんが聞き入っている。
「ですのでここからは本当に勝手で申し訳ないですが、私が今持てるもので現状どこまで出来るのか? を確かめさせていただきたい。そのために引き続き相手になってくれますか?」
俺はエルゴッタさんに確認を取ると、彼は二つ返事で応答した。
「おお、いいぜえ! 確かにそうだあ! 今のおまえさんの持てる全てで来てくれえ! それに勝ってこその本当の勝利と言えるはずだあ」
歯を見せてはははと笑う。
「そういやスキルに神魔法ってのがあったなあ。それ使ったっていいぜえ? どんなのか気になるしなあ」
「すみません。それについては私もあまり良く分かってないのです」
「ええ、そうかい……」エルゴッタさんが少しガッカリした顔をした。
他の魔法はこの世界に来て少ししてから自然と頭にインプットされた感じで分かるんだけど、神魔法に関してはマジでインプットされた情報を探ってみても分からなかったんだよね。
これも神さん聞かなきゃいけないことの一つだな。
「よおし、それじゃあここからはいわゆるなんでもアリってことで決闘二回戦目と行こうかあ!」
「お願いします」
俺は再びエルゴッタさんと対峙して構えをとった。