第五十二話 森の中
「う、うーん」
あ、あれ? 俺、どうしてたんだっけ?
俺は確か……気を失っていたのか?
「うーん、ここは」
目を擦って意識をはっきりさせると目の前には森が広がっていた。
「ここは……」
俺は立ち上がり周りを見渡した。
森、森、森。
360度見渡す限り森しかない。
だがマームの森じゃない。
ここは俺が本当の本当に最初に降り立った大陸にある森だ。
「おいおい、こんな森のど真ん中であんたなにしてんだ?」
「え?」
振り返るとそこには冒険者然とした格好の男が立っていた。
「あんた丸腰じゃねえかよ。なんでこんな場所で武器の一つも持たずに無事なんだ?」
「えっと、あなたは?」
「俺か? 俺はな……」
彼は自分の名前を名乗ろうとする。
「ベルグ……さん?」
だが俺は自然と名前を口にした。
「へ?」
名前を呼ばれた男はぽかんとしていた。
「な? なんで俺の名前を知ってるんだ? 俺どこかでお前とあったか?」
「い、いえ。あなたはあの街の冒険者の中でも特に有名ですので……」
「お、そっかぁ! 俺ってばそんな有名人かぁ? いや照れるねえ!」
俺は自分の中にある古い記憶を掘り起こしながら、言った。
そうだ。ここは俺が初めて降り立った森であり、近くに初めて行く街があり、そして目の前のこの男こそ、俺がこの世界に降り立った時に出会った正真正銘初めての人間。
「っと、いけねえいけねえ! なんであんたがここにいるのか?聞いておかないとな!」
「申し訳ありません。私もなんで自分がここにいるのかよく分かってなくて」
「あん? まじかよ。とにかくこんな丸腰のままじゃ危険だ。俺についてきな」
「はい。ありがとうございます」
俺はベルグさんについていく。
「ところでお前、名前はなんていうんだ?」
ベルグさんは俺に名前を聞いてきた。
「私の名前は……」
「ヨシキと申します。冒険者となって楽しく暮らせたらなって思って、辺境の地からここまで来ました」
俺はベルグさんに自己紹介をした。
「おう、そうなのかよ。ま、もし冒険者になるなら俺が色々教えてやんなきゃな。少なくとも丸腰はいけねえからよ」
「はは、そうですね」
俺はベルグさんの後ろをついていきながら、これからのことに思いを馳せるのであった。




