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第五十一話 降臨



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 「な!? この声は!?」

 遥か空高く、グレイはかつてないほどの動揺を見せていた。

 「いくらなんでも早すぎる! 最高神ジジイのところからこんな辺鄙なところまでどれくらい距離があると思ってるんだ?!」

 声は空間全体に響き渡り一体どこから聞こえているかが分からない。

 グレイは冷や汗を流しながら必死に周りを見渡した。

 「くっ! どこにいやがる!」

 

 「こ こ だ」

 

 「!!」


 グレイが後ろを振り返るとそこにはとてつもなく巨大な屈強な肉体をした老人がいた。


 ◆


 「おい! なんだありゃ!?」

 「突然でかいのが現れやがった!」


 突然声が響き渡ったと思ったらその数秒後にパッと超巨大な老人が現れた。

 白い長髪にどこまでも伸びていると錯覚するほどの白髭に瞳のない真っ白な目。

 遥か空にいる豆粒ほどのグレイと比べてその大きさは空全体を覆うほどのものであった。

 しかもその肉体は屈強そのものであり、その極太な腕でグレイなどすぐに捻り潰せそうに思えるほどだ。


 「さ て グ レ イ よ」

 ここからでもはっきりと耳に響くような声で老人は喋り始めた。


 「貴 様 が 監 獄 か ら 逃 げ 出 し て か ら と い う も の 行 方 知 ら ず と な っ て お っ た が 、 よ も や も っ と も 端 に 位 置 す る こ の 辺 境 に 身 を 潜 め て い る と は な」

 老人の言葉がはっきりとしすぎているほどに耳に一文字ずつ響くが如く言葉が入り込んでくる。

 

 「神 の 役 割 を 果 た さ ず に 人 々 と 苦 し め 自 ら の 欲 望 の 道 具 と す る と は や は り 貴 様 は 神 失 格 の よ う だ」


 老人は手を上へと掲げた。

 その動作だけでブオンという音が聞こえる。


 「今 こ こ で 貴 様 を 処 刑 す る 。 さ ら ば だ」

 

 「よ、よせぇ!」


 微かではあるが、グレイの叫び声が聞こえてきた。

 ここからでも聞こえるほどに奴は相当大声で叫んだのだろう。


 グレイの周りに巨大な金色の光に包まれたかと思うと光はまるで質量を持ったかのようにグレイ自身を押しつぶすように小さくなり最終的にグレイと共に消滅してしまった。


 「ふ む 。 お わ っ た な 。 さ て」

 奴が完全に消えたことを確認するとこちらに顔を向けてきた。


 「お 主 ら 二 人 。 ご く ろ う で あ っ た 。 ノ ク ス を 寄 越 し た の は お 主 ら で あ る と 聞 い て い る」

 「い、いえそんな私たちはただ」

 「おい! おめえが最高神ってやつか?」

 「おいばか」


 俺の言葉を遮るようにナグルが老人に指を差しながら聞いた。

 

 「い か に も 余 こ そ が 最 高 神 で あ る」

 だがナグルの言葉も意に返さない様子で淡々と質問に答えてくれた。

 やはり最高神であったらしい。いかにもという感じだから疑いようがない。


 「何 が あ っ た か は ノ ク ス か ら 聞 い た 。 災 難 で あ っ た な 主 ら よ」

 むすっとした表情を崩さずに最高神は同情の意を示した。

 

 「そうだぜ! おかげで散々くだらねえ茶番に付き合わされちまったぜ!」

 ナグルは最高神だからと全く尻込みをしていない様子だ。


 「そ う で あ ろ う な 。 そ の 詫 び と し て だ が 、 元 の 世 界 の お 主 ら が 死 ぬ 前 の 時 間 軸 へ と 返 し て や ろ う と 考 え て い る」

 「なに?」

 ナグルは不満そうな表情でいった。

 「元 は と 言 え ば お 主 ら の 死 も グ レ イ に よ っ て 引 き 起 こ さ れ た も の で あ っ た こ と は す で に こ ち ら で 調 べ て 把 握 し て お る 。 神 の 面 汚 し が 人 の 死 に 介 入 す る と い う あ っ て は な ら ぬ 愚 行 を 犯 し た 以 上 は こ れ く ら い は 当 然 で あ ろ う」


 本当ならばこれは喜ばしいことだ。


 だが、


 「あの……」

 俺は最高神に口を開く。


 「な ん だ ?  春 馬 芳 樹 よ 。 地 球 へ 帰 り た い か ?」

 「いえ、帰りたいとは思いません」

 「ほ う ?」

 俺は最高神のお詫びの提案を受け入れなかった。


 「私は別にどうなろうとかまいません。その代わりに一つだけ、もし可能であるならお願いしたいことがあるのです」

 「な ん だ ?」

 最高神は腕を組みこちらの言葉を聞こうとしている。


 「グレイによってボロボロにされたこの世界を……殺された人々を元に戻す、もしくは私が初めてこの世界にやってくる前の時間軸に戻すことは可能なのでしょうか?」

 「おい、ヨシキ。それは……」


 「…… ふ む 。 そ れ は 可 能 だ 。 こ の 世 界 の 時 間 軸だ け を 元 に 戻 し 、 殺 さ れ た 魂 た ち を 戻 す こ と も 可 能 だ 。 幸 い 魂 た ち は こ の 世 界 の 外 側 に 無 造 作 に 漂 っ て い る か ら な 。 グ レ イ め 。 神 と し て の 管 理 も 何 も な っ て お ら な か っ た な」

 「で、では!」

 「だ が そ れ は お 主 を 知 る も の は こ の 世 界 で 誰 一 人 い な く な る と い う こ と で も あ る 。 そ し て 神 の 力 も な い 。 お 主 は そ れ で も 良 い の か ?」

 「構いません」

 俺は即答した。

 「な る ほ ど 。 し て …… 嵌 合 那 具 流 よ …… お 主 は ……」

 「おう! 俺の詫びはな……」

 「魂 の 審 判 を 受 け て も ら う 。 余 が お 主 を 連 れ て い こ う」

 「は? なんだと? どういうことだ?」

 ナグルはポカンとした顔で言った。

 「お 主 は 生 前 か ら か な り の 悪 行 を 働 い て い た よ う だ か ら な 。 詫 び の 前 に ま ず は 魂 の 審 判 を 受 け る 必 要 が あ る」

 「ちょっと待てよ。俺を前の時間軸に戻すっていったじゃねえか!」

 「そ れ  は 魂 の 審 判 を 無 事 に 終 え ら れ た ら の 話だ 。 審 判 の 結 果 に よ り 神 々 の 補 助 と 労 働 、 そ し て 今 後 の 教 育 を 百 年 単 位 で 受 け て も ら う 。 そ れ が 終 了 し た 暁 に は お 主 を 元 の 時 間 軸 に 戻 す と し よ う」

 「はあ? ふざけんなや! このっ」

 突然ナグルが光に包まれたかと思うとパッとそのまま消えてしまった。

 「な、ナグル!?」

 「案 ず る な 。 死 ん で  はお ら ぬ 。 で は 春 馬 芳 樹 よ 。 お 主 の 願 い を 叶 え て や ろ う」

 「い、いいのですか?」

 「よ い 。 で は 行 く ぞ」

 「そ、そのま……」

 その前にエルゴッタさんやリーゼさんや皆さんにお別れを、と言おうとしたが最高神は両腕を空中に掲げると世界が白色の光に包まれやがて目の前の景色が真っ白に包まれていった。


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