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第四十九話 灰色の神

 「な!?」

 ナグルは驚いた顔で言った。


 「……」

 『おや、驚いていませんねヨシキさん?』

 

 対して俺は沈黙。何も言わなかった。


 「そりゃ、こうなるだろうなとは思ったからな」

 『ほほう、それはそれは……』


 見下すかのような口調でクリエトは語る。


 「いいかげん、その鷹揚な口調は止めたらどうだ? 内心かなり焦っているだろ?」

 『……ちっ』

 俺が煽るように喋りかけると舌打ちの声が聞こえる。


 『この野郎……いつからだ?』

 「何がだよ」


 まるで寛容さのなくなったチンピラの声が俺に疑問を呈してくる。

 当然俺は何がと答える。

 目的語のない質問は唐突にするもんじゃない。


 『とぼけんな! いつ正気に戻りやがった!』

 クリエトは声を荒げた。もうそこに神としての威厳を取り繕うとする気は一切なかった。


 「さあな、教えてやらないね。それにしても何が神だって話だよ。種族的には一応神らしいけど、ただそれだけのチンピラじゃねえかよ」

 『はっ、言うねえ。たかだか俺の力でイキリ散らかしてたボンクラのくせに』


 俺の煽りに奴も煽り返した。


 『ま、お前のその減らず口もここまでだ。それじゃ、回収の時間だ』

 「ぐ……っ!?」


 直後、俺の身体から一気に力が抜けていくのを感じた。

 あまりの力の抜け具合から俺は思わず地面に膝をついてしまう。


 「いぃっ!?」

 

 それはナグルも同様のようでより苦しそうな様子で奴は蹲っていた。


 『あれま、デストロのやつも力を結構与えてたようだな。おかげでナグルくんの反動も酷いようだねえ』

 ケラケラと奴はナグルを笑った。


 「くそ、まじで力が……入らない……」

 『まだまだ抜けるからなぁ? 俺の力をお前の中で熟成させたんだ。俺の投資した力が何倍にもなって帰ってくる。本当ならブルハルト大陸の奴らも滅ぼした後に返してもらうつもりだったがな。その方がもっと倍数が膨れ上がったはずなのによ。たく、最後の最後で正気に戻りやがって』

 クリエトは吐き捨てるように言った。



 「……ぐっ、はぁはぁ……と、止まった?」

 先ほどの力が抜けていく感覚が止まった。

 俺はなんとかフラフラと立ち上がったが、さきほどまであった力は驚くほど感じない。

 地球にいた時の感覚に戻った。一般人としての感覚だ。


 『おお! こりゃすげえじゃねえか! まさかここまでの力になって帰ってくるなんて!』

 虚空から高笑いが響き渡る。

 クリエトとデストロ、二柱のチンピラが自分の増幅された力にこれ以上ない喜びを覚えているようだ。

 

 「これならもう実体化も十分できるな、おいデストロ」

 「わかってるっつーの! いくぜ!」


 突如白い光と赤黒い光が現れた。

 二つの光は玉の形状となり、徐々に大きくなっていく。

 そして二つの玉はお互いを取り込むように重なり倍の大きさとなった。

 そして光は灰色となった。


 「はーっはっはっはっは!」

 高笑いする二つの声がやがて重なるように一つの声になった。

 やがてそれは今度は人型の形状を取り始めた。


 「……ふー」

 完全に人型となり光が消え去った。

 

 「ようやく元に戻ったかよ」

 そこには灰色の肌と真っ白な髪、そして真っ黒な目をした男が立っていた。


 「お、お前は……」

 俺は思わず口にする。


 「おうよ。俺はグレイってんだ。一応灰色の神って呼ばれてたぜ」

 グレイと名乗った男は軽い調子で笑った。


 「んじゃ、俺もこうして一つに戻ったことだし。最高神じじいもこっちに来ちまうそうだから逃げるわ。じゃな!」

 

 奴は宙へふわりと浮くとそのまま空へと飛んで逃げようとした。


 ガシッ!


 「あ?」


 だがその直前に奴の足に黒い触手状のオーラが絡み付いた。


 「逃すわけねえだろ! この野郎!」


 ナグルが手のひらから黒いオーラを出し奴が逃げるのを阻止していた。


 「この野郎! あの臆病野郎の魔法なんか使いやがって!」

 グレイは舌打ちをしながら、灰色の炎を手のひらから発生させてナグルに向けてそれを放とうとする。


 「死ね!」


 「させるか!」

 

 奴の放った灰色の炎を俺は黒魔法のオーラを使いナグルを守るように壁状にして防いだ。


 「ちっ! お前らめんどくせーわ! まじで!」


 グレイはイライラしている様子だ。

  

 「お前らなんか俺が力を取り戻すための駒であって暇つぶしの茶番要員でしかねーのによ! 役目終えたら大人しくすっこんでろっての!」


 「うるせー! 散々俺様を利用しやがって! てめーをぶっ殺さなきゃ気が済まねえ!」

 ナグルはこれ以上ない怒りをあらわにした。


 「くそっ! 足に絡みつきやがって! 鬱陶しい!」

 グレイは振り解こうとするが、オーラは離れない。


 「へへ! この黒魔法っての意外と使えるかもしれねえな!」

 ナグルは調子良さそうに笑いながら、グレイを自分の方へと引っ張り込もうとした。


 「ちっ! カスどもが!」

 グレイは灰色の炎で足に絡みついたオーラを消し去ってしまった。


 「くっ! やっぱ消されちまうのか!」

 「てめら……気が変わった。逃げる前に速攻でお前らをぶちのめす!」

 グレイは空中浮遊をやめて地面に足をつけた。


 「おい、ヨシキ! やるぞ!」

 「お、おう!」


 まさかこいつと共闘する日になろうとはな。

 俺は目の前で青筋を立てている灰色の神と改めて対峙するのだった。


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