第四十六話 情報共有
『まずはヨシキさんがご無事であって本当に良かったです』
儀式の部屋、俺とプレクルミの皆とクオルで儀式による交信を行っていた。
クリエトの声が魔法陣内にいる俺たちに聞こえる。
『ええ、本当にそう。転移後にヨシキがいなくなっていたからびっくりしたもの』
『まさかこのタイミングでこのようなことが起こるとは思わなかったぞ』
『はいです! それに黒の神が生きていたことにも驚いたのです!』
プレクルミの皆がそれぞれの反応を示す。
『それについては私自身も驚きました。まさか生きていたとは思いませんでした』
クリエトが白々しい演技をする。
だが少なくとも何かしらの強硬手段に出ること自体は想定外であったろう。
「クリエト様」
俺は口を開いた。
「あの場で起こったことをまずはお話しします」
俺は事前に作っておいたシナリオを話した。
『なるほど、そういうことだったのですね』
「はい」
俺は話した内容を箇条書きにすると以下になる。
・森の中に俺一人だけ転移しており仲間は誰もいなかった。
・しかし謎の集団が俺を囲っていた。
・突如襲いかかってきたそいつらを返り討ちにした。
・その直後に黒いオーラを発した存在に襲われた。
・白の力を持ってしても苦戦してしまった。
・追い詰められているところに赤い人型の何かがやってきた。
・黒い存在と赤い人型が争い始めた。
・そこでクリエトがやってきてここまで転移してきた。
俺の話した内容を疑っている者はいない。
『あなたを襲った集団も皆倒した……ということでよろしいのですね?』
「はい。まさしくそうです。しかしその後に黒い存在……黒の神が現れ、奴の攻撃でそいつらは消し炭になってしまったのです」
『なるほど……』
クリエトの声色からは嬉しさが漏れ出ている。
邪魔者がいなくなったからだろう。
だが実際はそんなことはない。
ストアさんをはじめとした黒の精鋭たちは、とある場所に転移魔法により転移させた。
サイロさんが彼らのために黒魔法による転移の魔法をジーゼを通して教えてくれたのだ。
サイロさんのおかげで彼らは無事である。
「そしてあの赤いやつが現れました。クリエト様、あれは一体」
『あれは……デストロです』
「デストロ!?」
俺は分かっていたが驚く演技をする。
『一時的にですが肉体を構成しその力を直接振るえるようになる術です。私自身もできます。神の業としてそれが可能です』
そう言うと俺たちの上で白い光が現れた。
光は徐々に人型を作ると、俺が先ほど見た姿が目の前にあった。
「こ、これは!」
リーゼが驚愕した。
他の皆も驚いている様子だ。
『これは一時的な仮の肉体と言えばいいでしょうか。長くは保てませんが、このように神は人のように身体を作ることができるのです』
リーゼは目の前に現れたクリエトに平伏した。
『ふふ、リーゼ。頭を上げてください』
クリエトがそういうとリーゼは恐る恐る頭だけを上げる。
「クリエト様……」
リーゼの目は崇拝のそれである。
クリエト教徒であるのだから当然だ。
『肉体を創造すれば、直接的にあなた方の世界へと干渉することも可能です。しかし……』
クリエトは言い淀む。
『かつての戦いの影響で力の大半を失ってしまいました。私がこの姿でいられるのはごくわずかです。悔しいことですが、あなた方に世界の命運を託す他ないのです』
「おまかせください! クリエト様! 必ずや私たちがデストロの悪しき魔の手からこの世界を救って見せるのです!」
リーゼがふんすと鼻息を鳴らして言った。
『ヨシキさんもよろしくお願いしますね?』
クリエトが俺の顔をじっと見つめて忠誠心を確認するかのように尋ねた。
「もちろんです」
俺は端的に答えた。
『ふふ、頼もしい限りです』
クリエトは笑った。
『はっ! 少々お待ちください!』
突然クリエトは何かが聞こえたように顔を上に向けると、右手で右耳を塞いだ。
しばらくすると手を耳から離した。
『ヨシキさん……先ほど見た戦いですが、どうやらノクスは敗れ消失したようですね』
「なんと……デストロは?」
『デストロは生きています。今しがたノクスの力が消失したことを感じとりましたが、デストロの力は消えていません』
「ということはデストロは…」
「はい、どうやらノクスを消したようですね」
「そのまま共倒れでもすればよかったがな……」
ベルが残念そうに口にする。
「でもその戦いで弱っているなんてことはあるんじゃないかしら?」
モニカが希望を持って言った。
『それに関しては私の方でも分かりません。ですが言われた通り、全くの無傷であるということも考えにくいですね』
クリエトが考え込むような仕草をする。
『だからと言ってこちらから攻め込むにしても残念ながらその準備が足りていません。まだ時間がかかるのです』
クリエトが残念そうに言った。
「そうですか……やはりそのまま都合よくとは行かないですよね」
俺はさも残念そうに言う。
『ええ、ですがデストロが傷を負っていたとしても魔族が攻め入るのは時間の問題です』
「そうなったら私がクリエト様から授かったお力で魔王を倒して見せますよ」
俺は握り拳を作って言った。
殺すつもりはない。あくまで無力化したいがな。
『やはり頼もしいです。よろしくお願いしますね』
「はい、おまかせを」
俺は頭を下げる。
『ではお話しはこれで終わりにしましょう。ヨシキさん。今日は色々とあってお疲れでしょう。リーゼ、ヨシキさんに宿への案内をお願いします』
「はいです! クリエト様!」
『それでは』
そういうとクリエトの姿が消え、魔法陣の光も消えた。
「ではヨシキさん! 私たちが泊まる宿へとご案内するです!」
「ああ、頼む」
俺はリーゼたちに案内され、宿へと向かうのであった。




