第二話 冒険者ギルド
俺は3人の美女と一緒に森を出て、町にやってきた。
森を出る間に出てきた魔物は俺が全部一撃でやった。
その度に3人とも目を丸くしていた。
リーゼちゃんはその度に褒めてくれたりした。
神からもらった力とはいえ、褒められると気持ちいいぜ〜。
マジ神に感謝!
「ここがサリーアの町だ。さすがにこれくらいは分かるだろう?」
「いえ、すみません。全く分からないです」
ベルちゃんすみません! この世界へ来てから多分まだ2時間も経ってないくらいですから分かんないです!
「なんてことだ。こりゃ重症だな」
ああ、ベルちゃんが困った顔している。
でも美人だから映えるぜ! そんなに双丘に高さはないけどな!
「今なんか失礼なこと考えた?」
ベルちゃんの目が鋭く俺を見た。
「う!? なんでもないです!」
「そう。ならいいけど」
考えが顔に出てたか? あぶねー!
「まずは冒険者ギルドに行くわよ」
「そうですねえ。まずは報告をしないとです」
「ああ、その次に教会に行こう」
冒険者ギルドがやはりあったか!
ネット小説で幾度も見た冒険者ギルド!
こりゃ冒険者になるっきゃないでしょ!
俺は3人と一緒に冒険者ギルドへ行った。
「おお!」
思わず声を上げちまった。
だって仕方ないだろ。
イメージ通りの冒険者ギルドの光景が俺の目の前にあるんだからなあ!
「ここが冒険者ギルドかあ」
思わずつぶやいちまった。
屈強な戦士風のやつもいれば、魔法使いや盗賊風の格好のやつもいる!
あれは僧侶っぽいぞ!
おいおい! あのケモミミ! あれは獣人かあ!?
マジで異世界じゃねーか!
くう! この世界での楽しい暮らしが始まるんだなあ!
さっそく冒険者登録しなきゃ!
「まるでギルドを初めて見るような……」
「仕方ないわ。彼、記憶喪失なのでしょ」
「冒険者ギルドなんて身近な存在ですのに……やはり忘れてしまっているのですね。かわいそうです……」
なんか俺を見ながら3人が会話してたけどギルドを見渡すのに夢中すぎて聞き逃したな。
ま、いっか。
「あの……」
ベルちゃんが受付嬢に話しかけた。
おっとまずは3人の依頼の報告だった。
黙って見ていよう。邪魔しちゃいかんな。
「ああ、プレクルミの皆様! よくぞお戻りになられました!」
受付嬢が驚いたあとに嬉しそうに言った。
周りもざわざわし始めた。
「おい、プレクルミだ……」
「ああ、もう3日も戻ってなかったから、死んじまったと思ってたよ……」
「私は信じてました! 必ず戻ってくるって!」
みんなが各々言いたいことを言っているな。
あそこのレンジャー風の女の子とかは憧れの目で見ているな。
「みなさんご無事で! 本当によかったです!」
おお、受付嬢の笑顔が眩しい。
この人も綺麗だぜ!
リーゼちゃんほどじゃねえが実っているし!
「えっと、そのことなのですが……」
「おお、ベルくんたち! 無事だったか!」
ベルちゃんが口を開こうとしたその時に受付の方の奥から筋肉質な男性がやってきた。
髭面スキンヘッドのタンクトップだ。
さっきのオークほどじゃないけど、でっけえなあ。
地球ならレスリングとかの世界チャンピオンとか余裕で目指せるかもしれねえぜ。
「ギルド支部長……」
「ガーレンさん!」
「です!」
三人とも各々の反応を示す。
ふむ、なるほどギルド支部長のガーレンさんっていうのね。
覚えたぜ!
というか支部ということは当然本部もあるってことか。
そういうのは都市部にあるのかなあ?
ま、そのうち分かるか!
「君たちは一日で戻る予定であったが、もう3日も戻ってなかったからな。心配したんだ」
よかったよかったとガーレンさんは安堵していた。
というかベルちゃんたち三日間あの森にいたのか。
「そのことなのですが、ここですぐに終わる話ではないので」
「ふむ。そうだな。奥へ案内しよう。メルカくん、ここは私が引き継ごう」
「はい、支部長!」
メルカちゃんっていうのかあ、笑顔がかわいいぜ!
「さあ行こうか」
「あの……私たちとあともう一人もよろしいでしょうか?」
「む?」
「実はマームの森にて彼に助けられたのです」
お、みんな俺の方をみたぞ。
「ふむ、君はだれかな?」
怪訝そうな顔を浮かべてガーレンさんが俺を見た。
そりゃいきなり野郎が現れりゃ怪しむよな。
「はい、私の名前はヨシキと言います」
俺は頭を下げて自己紹介する。
森の時のように調子に乗らないようにな!
「……なるほど。ベルくんが言うのであれば……ヨシキくんだね? ついてきてくれ」
「はい、分かりました」
俺はガーレンさんとプレクルミのみんなと一緒にギルドの奥の方にある部屋へと入っていった。
「さて座ってくれ」
ここは支部長室らしい。
なんか高級そうなソファに三人は座った。
俺は別の一人用ソファに座る。
三人に対面するようにガーレンさんが座る。
「まずは君たちが無事で本当に良かった。ほんの少しの調査ならと行かせた私の責任だ。申しわけなかった」
「そんな! 悪いのはあたしたちです! 頭を上げてください!」
「そうです! 待てなかった私が悪いのです!」
「本当にごめんなさい」
四人とも頭を下げあっている。
「……いや、分かった。ずっとこのまま頭を下げあっていると日が暮れてしまうな。話を進めよう。君たちが帰ってこれたのは彼、ヨシキくんが……」
「はい。あたし達がキングオークらに襲われていたところを彼に助けていただいたのです」
「なんと! あのキングオークから……」
ガーレンさんは目を丸くして驚いて俺を見た。
なんとあれはキングオークだったのか!
名前からしてオークの上位種ってやつだな!
「ヨシキくん。三人を助けてもらい感謝の言葉もない。本当にありがとう」
ガーレンさんが俺に頭を下げた。
「そんな、頭を上げてください!」
助けるのは当然だからな!
「しかし……キングオークか……」
ガーレンさんが深刻そうに呟いた。
「他にもブラックウルフの群れやジャイアントコングとも遭遇いたしました」
「それにオーガもいたです!」
「遭遇した魔物は100からもう数えてなかったわ……」
「そんなにか……等級B以上の魔物がそれほどにいるとは信じられぬ……やはりマームの森か。いくらA級冒険者の君たちとはいえ、それだけ数の魔物と戦い続けていれば……」
「最初は大丈夫だったのです! でも調査をやめて戻ろうとした時に、突然魔物たちに襲われたのです!」
リーゼちゃんが必死に伝えていた。
おお、山が! 双丘が!
「まるで突然その場に現れたかのように襲ってきたのです!」
「連戦に次ぐ連戦で私たちは体力も魔力もアイテムも尽きてしまい、どうしようもなくなり殺されるのは時間の問題になってしまいました」
モニカちゃんがそう言った。
「3日も戦い続けていたということなのですか?」
俺は気になって質問した。
「ええ、そうよ。なかなか休む時間もなかったわ」
「なんとか戻ろうとしても魔物がその度に襲ってきてな」
「夜は魔物に警戒して見張りを交代しながら眠ったのよ。生きた心地はしなかったわ」
「2日目は信じられないほど大量にレッドゴブリンの群れが襲ってきて明け方までずっと戦っていたな……」
「そしてあげくに等級Aのキングオーク二匹です! あの時私はもう終わりだと思いましたです!」
そうだったのか。
俺が転移しなかったらマジで殺されてたってことなんだな!
マジで良かったぜ!
「ヨシキさん、すごいのです! あのキングオークを一撃で倒してしまったのです!」
リーゼちゃんが俺を見てすごいすごい言ってくれる。
いやあ、こんな美人にすごいって言ってくれるのはいい気分だぜえ〜。
まあ、俺じゃなくて力をくれた神さんがすごいんだけどな。
神に感謝だぜ!
「なんと、一撃で!?」
ガーレンさんが信じられないという目で俺を見た。
俺は神のおかげで無双できる力を持ってるからな!
「すまないが、ヨシキくん。ステータスを見せてくれないかな?」
「ステータス?」
もしかしてこの世界ではステータスが普通なのかな。
俺特有というわけではないと。
「ああ、ごめんなさい。ステータスオープンと言えば、あなたのステータスが表示されるのよ。言ってみて?」
ベルちゃんが、そう言えば記憶喪失だったという顔で俺に説明した。
まあ、ここきた最初に神さんに説明されたから知ってるけど。
どうやらこの世界じゃ普通のことらしいな。
「は、はい。ステータスオープン」
ブオン!
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ヨシキ・ハルマ
レベル:69
職業:武闘家
HP:10000/10000
MP:4950/5000
攻撃力:1424
防御力:1231
素早さ:1987
器用さ:1122
運:1000(最大値)
魔法適正:
火:S
水:S
風:S
土:S
光:S
闇:S
回復:S
強化:S
スキル:
神魔法
称号:
神の加護を受けし者
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「な!?」
「「「え!?」」」
俺のステータスを見て四人が驚いた。
しばらく固まっており沈黙が部屋を支配していた。
俺も黙るしかなかったぜ……。
「あ、あの」
なんとか俺が口を開こうとすると
「え、S+だと!? 信じられん!」
「あのキングオークを一撃で屠ったからSだとは思ったが……」
「S+って大戦争の時の勇者級じゃない!?」
「す、すごいです……!。あっ……それに……神の加護……ですか……」
四人が各々反応を示した。
なんかリーゼちゃん、神の加護を見たあたりで少し暗くなってるような……気のせいか?
「しかも称号持ち……神の加護だと!? ヨシキくん君は一体何者なのだ!?」
ガーレンさんがステータスにある称号の部分を見た後に、俺の肩を掴んで迫真な顔をした。
ぬお! 顔近いぜガーレンさんよお!
「あ、あの実は記憶がなくて……」
俺は答えた。
「記憶がない? どういうことかな?」
ガーレンさんが頭にハテナを浮かべる。
「それについても報告させてください」
そうベルちゃんが言った。
その後にベルちゃんが俺との出会いを説明してくれた。
俺が記憶喪失であるということも。
本当は記憶あるけどな。
異世界転移とか言うと色々面倒なことになりそうだし。
嘘も方便だぜ!
「なるほど……本当に記憶がないのだな……」
「はい……すみませんが何も覚えてないのです……」
俺は申し訳なさそうに言った。ま、嘘だがな!
「……いや、いい。しかし神の加護か……。君が只者ではないことは確かだろう。教会にはもう連れていったかな?」
ガーレンさんがベルちゃんに話しかけた。
「いえ、ここで報告をしてから連れていこうと思っていました」
「そうか。ならこのあとすぐに教会へ行くといい。そこの司祭にあって彼を調べてもらおう」
調べる? え、もしかして俺の記憶喪失が嘘とか見破られないよな?
嘘発見器的なものがあったら終わりだぜ?
もしそうだったらそれは勘弁してほしいかなあって……。
「あの、教会というのは……」
「それについては私が説明するです!」
リーゼちゃんが手をビシッと上げた。
「教会はこの世界を作った神様であるクリエト様を信仰するクリエト教の教会です! どの町にも都市にも必ず教会は存在するのです!」
リーゼちゃんが元気よく説明する。
「そして教会の司祭様にはクリエト様との交信が許されるのです! 神様の御言葉を賜ったり、神様の御意志やその真意について、こちらから問うことも出来るのです!」
「そのようなことが可能なのですか?」
俺は思わず聞いた。
だってつまりその気になれば日常的にすぐに会話できる神ってことだろ?
随分と人と距離が近い神だぜ。
「いつでも可能というわけではありませんが、こちらが望んで交信の儀式を行えば、可能なときは神様の御声が聞こえるのです!」
「へえ、すごいですね」
いや、マジでね。
地球でそれができたらそれ関連の戦争なんてなかったかもしれないなあ。
まあ、そんな単純じゃないかもしれないけどな。
俺の浅学ぶりじゃあ、それくらいの想像が限界だぜ……。
「そうです! すごいのです! 私もいつかクリエト様の御言葉を賜れる司祭になるのです!」
「え? リーゼさんは冒険者ですよね?」
「そうです! 冒険者であり聖女です!」
「聖女ですか?」
お、リーゼちゃんは白魔法的なやつを使えるのかな?
「はい! 神様に仕える魔法使いのようなものだと思っていただければです!」
「なるほど、それはすごいのでしょうね」
「いえ、私などまだまだです。世界には大聖女とも呼ばれるお方もいらっしゃいますので、私にとっての憧れです!」
リーゼちゃんは手を組んでキラキラした目で上を見た。
おそらく視線の先にはリーゼちゃんにしか見えない憧れの大聖女がいるのだろう。
「リーゼさんならきっとなれます。応援してますよ」
「はい! ありがとうございますです!」
リーゼちゃんが嬉しそうだ。
う〜ん、この子を見てると癒されるぜー!
その後はベルちゃんがガーレンさんにマームの森の調査報告を詳細に話した。
ガーレンさんはふむふむと頷きながら聞いていた。
「ふむ。なるほどな……。これ以上の詳しい調査は応援を待つしかないか……」
ガーレンさんが真剣な表情で言った。
「最奥部まで行くとなると等級Aの魔物が跋扈していると考えていいかもしれません」
ベルちゃんもだ。
「確かにね……。これ以上は応援を待つしかないわ」
「そうですね……」
他の二人もであった。
「ともかく3人とも無事に戻ってきて良かった。だが申し訳ないがまた調査へ赴くことになりそうだ。応援が来るまでそれまで休んでほしい」
「はい。ありがとうございます」
3人とも頭を下げた。
俺も一緒に頭を下げた。
「ヨシキくん。3人を助けてくれてありがとう。あらためて感謝する」
「そんな当然のことをしただけです」
俺はそう言った。
「ではこれから教会へ行ってくるといい。ヨシキくんのことが何か分かるかもしれないからね」
「はい。そうしますです」
リーゼちゃんがそう答えた。
「ではまたな」
「はい。失礼します」
俺はガーレンさんに別れの挨拶をして3人と一緒に冒険者ギルドを後にした。
「あ、あの! ヨシキさん!」
ギルドを出た直後にリーゼちゃんが話しかけてきた。
「ヨ、ヨシキさんは神の加護をお持ちですが、どう思われますか?」
え? どう思うかって?
ええっと、なんか抽象的な質問だなあ。
神の加護を持っていることについてどう思ってるかってことだよな?
そのまんまのことだよな?
うーん、そーだなー。
「私が神様から力をいただいたのはほんの偶然だと思っています。なのでそれを持ってしてこれは自分の力であるとは言えないですよ。むしろこのような力を頂いたことには感謝の念しかありません。そのおかげであなた方も助けることができましたしね」
実際偶然手違いで死んだしな!
だからこれは単なるお詫び。
俺の力だけど、俺だけ(・・)の力じゃない。
そこについては感謝しとかないとな!
まあ、向こうは俺を殺すっていう大失態やらかしてるから必要以上に崇拝する気はないけどな!
いや、やっぱりくそみたいな日常から解放してくれたから、この場合はやはり感謝しかないか?
うーん、分からん。ま、いいか。
「そうですか! 分かりましたです! 神様からのお力は感謝感謝ですよね!」
「え、ええ。その通りです。感謝感謝です」
おお、なんかリーゼちゃんが、すごいほっとしたというような顔をしているな。
神の加護に何か思うとところがあったのかな?
さっきも暗い顔をしてたし。
「では教会へ行きましょうです! ヨシキさん!」
「は、はい」
俺はテンションが上がったリーゼちゃんに連れられて教会へ向かった。