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第一話 森の中

 「う、うーん」

 あれ? 俺、どうしてたんだっけ?

 俺は確か仕事帰りだったはずだが……いつの間に寝てたんだ?

 「うーん? え!?」

 目を擦って意識をはっきりさせると目の前には森が広がっていた。

 「え、森!? なんで!?」

 俺は立ち上がって周りを見渡した。

 森、森、森。

 360度見渡す限り森しかない。

 俺は森の中で寝てたのか。

 でもなんで?

 くそ! 記憶がない!

 一体何があったんだ?

 俺は駅から自宅までの道を歩いていたはず、だがその道中でぶつ切りのように記憶がなくなっている。

 その後に何があった?


 『春馬芳樹(はるまよしき)よ……』

 「な!? 誰だ!」

 誰かが俺の名前を言っている。

 だが声の主は探してもどこにもいない。

 「誰だ! どこにいる!」

 『私は神です……』

 神だと? 一体どういうことだ?

 『春馬芳樹、あなたは死にました』

 「は?」

 突然意味のわからないことを言い始めた。

 『あなたは電柱の切れた電線に触れてしまい、そのショックで命を落としてしまったのです』

 「電線?」

 『はい。電線が切れてしまい、その切れた線が帰宅途中のあなたの首にあたったのです』

 「それで死んだと?」

 『はい。ですがあなたはそこで死ぬ運命ではありませんでした』

 運命ではなかった?

 『実は電線が切れたのは私の手違いでした。私は世界のすべての運命を見守り、定めに従いその者へ死の運命を与えるのです』

 「与える?」

 『はい。死すべき時が来れば、私はその者に死の運命を与えます。定めとは生まれた瞬間に決まるもの。神たる私はその定め通りにすべての生命に死を与えるのです』

 「なんだそりゃ」

 『すべては最高神が決められたこと、その事に従うまでだったのですが……』

 神は言いづらそうに咳払いした。

 『本来与えるべき死の運命を間違ってあなたに与えてしまったのです。本当に申し訳ありませんでした』

 神は俺に謝罪した。

 「なるほど、俺は手違いで死んだってわけだ。んでこの状況は一体何だってんだよ?」

 『はい、そのお詫びとしてあなたを別の世界で蘇生することになりました』

 「え、てことはここ異世界?」

 『その通りです。ここはブルハルト大陸にあるカイコン国の領土にあるマームの森という場所です』

 「へえ、俺マジで異世界にきたって事かあ」

 まさかこんな展開になるとはなあ。俺にとっては僥倖だぜ!

 あんなクソみたいな会社で家との行ったり来たりのつまんない生活をもうしなくていいんだからなあ!

 それにネット小説で読んでいたようなことが今マジで起きてる!

 これはすげえぜ!

 てことはだ

 「もしかしてだけど、なんか俺、特別な力とか持ってたりする」

 『はい、お詫びとして膨大な魔力とすべての魔法適正をSランクとさせていただきました』

 「まじか! すげえ!」

 『ステータスオープンと言えば、あなたのステータスを見ることができますよ』

 「よおし早速」


 「ステータスオープン!!」


 ブオン!


 ============

 ヨシキ・ハルマ

 レベル:69

 職業:武闘家

 HP:10000/10000

 MP:5000/5000

 攻撃力:1424

 防御力:1231

 素早さ:1987

 器用さ:1122

 運:1000(最大値)


 魔法適正:

 火:S

 水:S

 風:S

 土:S

 光:S

 闇:S

 回復:S

 強化:S


 スキル:

 神魔法

 

 称号:

 神の加護を受けし者

 ============ 


 「おお! マジで来た! なんか色々すげえじゃん!」

 『はい。蘇生にあたり、私の加護を付与しました。そのことであなたのステータスも上昇したのです』

 「こりゃすげえ! 神さん! ありがとな!」

 『例には及びません。死なせてしまったのは私ですから』

 それでもお礼を言いたくなるってものよ!

 『それでは私はこれで失礼します。あなたのこの世界での暮らしにどうか幸在らんことを』

 そう言って神の声が消えた。

 『ああ! そういえば言い忘れました。森から出るには太陽とは逆の方向にお進みください。そして森から出ると町が見えると思います。そこへまずは向かうといいでしょう』

 今度こそ神の声は消えた。

 「なるほど、それじゃあ行ってみるかあ」


 グオアア!


 「ん?」


 後ろを振り返ると、なんかすげえでかい豚ヅラのモンスターが現れた。

 「オークってやつだなこりゃ!」

 ふふん、さっそく俺のステータスの強さってやつを試してやろうかな!


 ガアアア!


 オークが持っていた巨大棍棒を振り下ろしてきた。

 「おお、止まって見えるぜ!」

 振り下ろす棍棒は非常にゆっくりに俺は見えた。

 「あくびがでちまうよ!」

 俺はひょいっと避けると、オークの脇腹にパンチをお見舞いした。


 「てい!」


 アギャアアア!


 パンチが当たるとオークの上半身が吹っ飛んだ。

 一撃必殺だぜ!

 「ひゅう! こりゃいい! これからが楽しみだぜ!」

 これなら冒険者になったとしてもSランク確実かもなあ!

 俺は太陽の逆を進んで森を歩き始めた。

 はやく町に行きてーなあ。

 

 「きゃああ!」


 「お?」


 なんか向こうから悲鳴が聞こえたぞ。

 しかも女性の声! こりゃ助けないといかんぞー!

 

 声の方向をする方へ行くと、三人の女性が二匹のオークに襲われていた。

 うわ、三人ともめっちゃ美人!

 一人は剣士、一人は魔法使い、最後の一人はレンジャーっていったところか。

 あくまで格好と持ってる武器での予想だけど。

 「くっ! ここでA級の魔物が2体だなんて!」

 「もう……これ以上は……限界ですう……」

 「諦めないで! あたしたちがここで倒れたら町のみんなが……!」

 三人は戦いながら口論していた。

 だがもう持たなそうだ。

 よし! 助けよう!

 「うおおお!」

 俺は飛び出してオークに向かってパンチを繰り出した。


 グギョオオア!


 さっきのようにオークは吹っ飛んだ。

 よっしゃこの調子でもう一匹も食らえ!


 ギャオオ!


 オークは抵抗虚しく、俺に一撃で沈められた。

 はっはっは! 俺様の力を思い知ったか!

 

 三人の美女たちはぺたんとその場に座り込んだ。

 「た、助かったあ!」

 「うわーん! 死んだと思いましたですう!」

 「あ、あたし、生きてる……」

 みんな自分が生きていることを実感しているようだな。

 うむ! 人助けは気持ちいぜ!


 「大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」

 俺は三人に手を差し伸べた。

 三人の美女は俺に気づいて、涙目のまま俺を見た。

 「う、うわああん! 怖かったですう!」

 「お!」

 三人の中でいちばん泣いていた人が俺に抱きついてきた。

 うお! 柔らかい! それにいい香り!

 さらにめっちゃでかい二つのたわわが!

 感触が伝わって! 服越しでもたまらん!

 「こ、こら! リーゼ! やめなさい!」

 「あ! す、すみませんです!」

 リーゼと呼ばれた女性は、ハッとして俺から離れた。

 うーむ、二つの山の感触が惜しいぞ……。

 「あ、あの。あたしたちを助けてくれてありがとう。あたしはベル。でこっちは」

 「モニカよ」

 「り、リーゼですう!」

 三人が自己紹介してくれた。

 俺も答えないとな!

 「俺の名前はヨシキだ! 三人とも無事でよかったぜ!」

 俺は自慢の白い歯をきらりと見せてアピールをした。

 「は、はいぃ……ですぅ……」

 リーゼちゃんが顔を恥ずかしそうに逸らした。

 やべ、滑ったかも。

 勢いのまま調子にのっちまった。

 他の二人も恥ずかしそうに目線をそらした。

 は、恥ずいぜえ!

 そういやリーゼちゃん、ちょっと頬が赤いな?

 調子が悪いのかな。

 「あ、そうだ! みんな怪我してますよね? ヒール!」

 俺はみんなに回復魔法をかけた。

 実は歩いている最中に俺が使える魔法なんなのかが全部頭の中に入っていることに気づいたのだ。

 おかげで初めて使った魔法でもうまくいったようだな。

 

 「うそ! 怪我が完全に治ってる!」

 「それに疲れも全くと言っていいほどない!」

 「なんて回復力のヒール……す、すごすぎますう!」

 みんな驚いている。

 特にリーゼちゃんは興奮して腕を元気よく動かした。それに釣られて彼女の山がぶるんと揺れた!

 うおう! やっぱすげえ!

 おっといかんいかん!

 「どうですか? 怪我は治りましたか?」

 「治ったも何も……全快だ」

 「しかも寝起きスッキリした日のような清々しさもある」

 「こ、こんな回復魔法聞いたことないですう!」

 リーゼちゃんが俺の方をキラキラした目で見ている。

 

 「ところで……あなたたちはなぜこの森に?」

 「あたしたちはA級冒険者チーム、プレクルミとしてギルドの依頼を受けてこのマームの森にやってきたんだ」

 ベルちゃんが説明を始めた。

 冒険者! やはりあったか! 燃えるぜ!

 「依頼は調査。このマームの森は恐ろしい魔物が跋扈していていまだに全容がわかっていない。だが魔物たちは1度もこの森からでてきたという事例はなかったから、町のみんなも放っておいていたんだ」

 「ですけど……」

 リーゼちゃんがしゅんとした顔になった。

 「1週間前、このマームの森から魔物が現れたのです! そしてその原因の調査の依頼がギルドにきたのです!」

 リーゼちゃんが必死になって説明した。

 「依頼条件がA級以上の冒険者になっててね」

 モニカちゃんがそう言った。

 「S級の冒険者は都市とかに集中しててこんな田舎にはいないからな」

 「それで私たちが調査の依頼を引き受けたってわけ」

 「だから本当は都市部からの他の冒険者の応援を待つはずだったんだけど……」

 「わ、私がどうしても待てなくて、せめて先行して少しだけ調査できればいいなと思ってしまいましてぇ……」

 リーゼちゃんがまたしゅんとした。

 なんというか小動物のような印象を受けるな。

 双丘はでかいけどな!

 「あたしたちも、A級冒険者だからってどこか慢心してたところがあって、リーゼに同意して応援を待たずに調査に来て……」

 ベルちゃんが後悔しているといった顔をした。

 「その結果がこれってことなの」

 モニカちゃんもそれに続いた。

 「そうだったのですね」

 俺はちょうどよくそのタイミングで助けに入れたわけだ。

 本当に良かったぜ!

 「それであなたはなぜこのマームの森に一人で?」

 やべ! どう説明しよう!

 「ええと、実は記憶がないんです。ここで意識を失ってて、一体なんでここにいたのか分からなくて」

 とりあえず記憶喪失ってことにしちまえ!

 そのほうがいろいろ面倒ごととかないだろ!

 「記憶喪失か………」

 ベルちゃんが深刻な顔をしていった。

 「それは大変ですう! 早く町へ行った方がいいですよお!」

 うお! リーゼちゃんが俺の腕を手に取ったぞ!

 やわらかあ!

 「そうだな! ずっとここにいてもアレだし、ひとまず町に戻ろう」

 「そうねそうしましょう。ヨシキさんだっけ? 一緒にくる?」

 「はい、そうします」

 俺は3人と一緒に町へ向かい始めた。


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