始まりの世界。-3
翌朝
アウスは村の人達が起きる前に一度村の外に出ていた。翻訳の魔道具は夜だけでは厳しかったようなのでまだ村の一角に隠しておいてあるが。そして今回村の外に出たのは魔物の強さを測るためである。まだ日が昇り切っていない間は強い魔物も残っている。それらと戦いに鞘に入れた剣を持って村付近にある森へと進む。
多少の魔物との戦闘ののちさほど苦労せずに森との境目に辿り着いた。アウスは念入りに装備を確認して中へと進んでいく。少しずつ強い魔物に遭遇するようになったが、最低限研究用の素材に適する魔物が狩れる位の実力はあるのでまだ何とかなる。
(ん、何か人の声がしたような?)
アウスの考えは間違っていなかったようでその後少し進むと、
「lhmniJt feda!」
(助けを求めてる?)
アウスは無視することもできた。別に自分の知らない人であるしこの世界を去れば会うこともないだろう。でも、動くほうが早かった。その方向へと駆け出すアウス。途中でつけている腕時計のつまみを回す。たどり着いたところには大きな二足歩行する熊のような魔物とそれに槍で立ち向かう少女が傷を負っていながらも立っている。
アウスは声を掛けようかとも思ったがまだ翻訳の魔法は使えない。しかし行動は素早い。少女が若干の警戒の念を持ってアウスの方を見る。
「【魔法実行:最上位回復、全能力強化、魔力超回復】」
選んだのは使える魔法の中で最も効果の大きい補助・回復魔法を掛けることで少女の信頼を得ようという考え。
「tniuhglua ksEDncendg!」
結果はうまくいったようで少女は再び魔物の方を向く。アウスも剣を鞘から抜いて構える。
少女が仕掛ける。熊のような魔物の腕の付け根を狙って槍を振る。アウスも続いて仕掛ける。
「【amakhuhtuoaBsu】!」
何かを少女が唱えると同時に魔物の腕が派手に吹き飛んだ。
続くアウスは魔物の足めがけて右から左へ横なぎを見舞う。振った瞬間から剣が燃え上がりその足を焼き切る。アウスは今回何も詠唱していないが、付与魔法の【プログラム操作】によってアウスの腕時計の動きに対応して魔法が【魔力遮断】を打ち消して自動で発動したのである。魔物は大きな音を立てて前に転ぶが残っている片手片足をじたばたと動かし抵抗する。
(!)
気づいた時には遅かったが、足の指から爪を飛ばしてきた。アウスが初めて見る魔物だったのもあり対応できずに攻撃を受けてしまう。しかし気にせずに攻撃を続行する。
少女が助走をつけて魔物に向かっていく。
「【hkyuauohCuoma】!」
少女が高く飛び上がる。そのままの勢いで落下すると同時に槍を魔物の胸に深々と突き刺した。すると魔物は息絶えたのか全く動かなくなった。
戦闘が終わり安堵の表情で少女がアウスの居たほうを振り返る。しかしそこにはもうアウスの姿はなかった。少女は辺りを見回すがアウスの姿はない。
(流石に言葉のわからない状態で意思疎通をするのは厳しいかもな。)
「姿がない」だけでアウスは確かにそこには居るのだが幾重にも掛けられた隠蔽魔法を看破するのは無理だったようだ。この辺りに他に人が住んでいるようなところは無かったことから村に住んでいるか滞在しているのだろう。自力で村までは戻れそうなのを確認したアウスは少女よりも先に転移魔法で村へと戻るのだった。
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