プロローグ-3
7/13 23:25 段落分けがなく読みづらいので追加。
研究所にて
アウスは工房のときと同じように結界を張り、魔法を付与する。
(魔力の状態、安定。魔力量、充分。)
さっきよりも精密な付与が求められるためかなり気合を入れて付与に挑む。
「【魔法削除:すべての付与魔法】」
まず付与できる魔法は一つのものにつき一つの魔法陣だけなのでもともとの魔法を一旦消去する。なおあの時に魔導性強化をしたのは周囲の魔力との差で剣が劣化するのを防ぐのを防ぐためである。
「【魔法付与:シャープネス、魔法式破壊、魔力集積、劣化防止、重力操作、プログラム操作、魔導性強化、魔力遮断】」
(...やっぱり付与には集中力がいるな。)
複雑な魔法陣の付与が終わった剣はミスリルの剣身が透き通るような美しい青緑色をしていて、その内側に細い純金の芯が見え、先端にその一部が飛び出ている。
(最後の仕上げだ。)
取り出したのは町で買っておいた大きめの魔石。取り出した丸い魔石を剣先で「刺し」た。
(切れ味も充分。後は成型するだけだ。)
「【魔法実行:成形、接合、研磨】」
あっという間に形が整えられ、剣の先端に紫色の魔石がついた剣ができた。魔石はその魔石が触れている物質の付与の影響を受けるので魔石に魔法を付与する必要はない。
(この剣は...最高の出来だな。)
そしてアウスはこれからの冒険に期待を込めて「その魔法」を使うための準備を始めた。
まず研究所の物を片っ端から収納魔法が付与されたザックに入れていく。どれだけ入れてもその入れたもの分だけ新しく空間が作られていくため中身のものが衝突するのを気にする必要はない。ただ収納魔法の付与でできた空間は非常に魔力が不安定なため魔法的に繊細な物や生物の保管には不向きなので魔法的でないものだけを入れる。
(普通の旅に必要なものはこれで大丈夫かな。)
次に取り出したのは魔法的な物を入れられない欠点を解決するために用意した専用の布袋をいくつか。外側に魔力が遮断するように付与がされているが、中の魔力の流れは普通の空間と変わらないという代物だ。これに魔法薬の類や、魔石、研究用品などを分けてこちらは丁寧に入れていく。魔力的に安定しているだけでこの袋自体には収納魔法の付与はされていない。そしてそれらを最初のザックに詰める。これだけでこの小さめの見た目に反して普通の人には持てないような重さの中身が入っているがそこはアウス。重力操作で簡単に背負えるようにした。
(やり残したことはないだろうか...一応やっておくかな。)
アウスは魔石を取り出して、付与魔法を行う。
「【魔法プログラム:魔力吸収】」
「【魔法実行:結界展開】」
そしてその魔石を部屋の中央に置く。付与魔法によって空気中の魔力を吸収し、その魔力で結界を維持する寸法だ。もし空気中の魔力が足りなくなっても魔石は魔力の結晶であるから少しづつ自壊しながらも結界を維持してくれるだろう。
(そして一番大事なのはこれだな。)
持ち出したのは多くの魔石がはめ込まれたアウスの背丈半分ほどの柱のようなもの。
それを部屋の真ん中に置き、頂点に触れることで起動した。
(?何か風が吹いたような...気のせいかな。)
アウスは魔法陣の作成を始める。これまでで一番難しい魔法だが、実験通りにやることで実際に使うという緊張の中何とか成功させた。
(ついに来たんだな、別の世界へと行く時が。)
アウスは魔法陣に魔力を流し込んだ。光り輝く魔法陣。そこに向かって足を踏み入れる。
(頼むから、失敗していないでくれ!)
その思いとともに、アウスはこの研究室、いやこの世界から姿を消した。
毎週木曜・日曜投稿予定。そのほかの曜日もやる気があるときは投稿します。
他作品と似ている設定、名前、展開などがありましたらコメントにて教えていただけると修正するときに助かります。また、こんな設定入れてほしい、こういう世界に行ってほしいなどの要望も可能な限り答えさせていただきます。