プロローグ-1
「...よし。成功かな。」
青年は研究室の中で、白銀に輝く魔法陣を前に一人心の内で喜んだ。
後日、王城にて。
「このような魔法の実験に成功したため、実行する許可をいただけないでしょうか。」
目の前の玉座に座る王に話す青年。普通の人間ならばここまで速く王に謁見する手続きなどできないし、そもそも玉座の王を実際に見る人などほんの一握りである。でもここまで彼が速く謁見できているのは彼がその国では有名な魔法発明家であるからに他ならない。
「もちろんだ。そなたはこの国の魔法技術の発展に大きく寄与しておる。むしろ止める理由がない。」
王は明るい口調で青年に話す。普段あまり笑顔を表には出さない類の人間ではあったが、彼が新しい発明をするのには興味があるようで多くの援助金を出すなどしていた。それだけ彼の発明する魔法は素晴らしいものばかりで、国内だけでなく世界全体でも有数の発明家であった。
「...本当にいいのですか。私がこの魔法を使ってしまえばもうここには戻ってこられないかもしれません。自分の力を自慢するようで申し訳ありませんがこれは国、世界にとって大きな損失になるはずです。」
「もちろん、正直に言うとかなり惜しい人材だと思っている。そなたは新しいものを常に求めておる。そしてその魔法はこれまでのものとは大きく違うものだ。故に使わないよりも使うほうが得られる知識も多いと考えればこの国にとどまることを捨て、その魔法を使うのだろう。」
青年は申し訳なく思いはした。今まで数々の支援を受け、そのおかげで新しい発明をしてこられたからだ。しかし国王のいう通り、新しいものに対する欲求はそれを上回っていた。
「この行為が国益に背くことは重ね重ねお詫びします。ですが国王様のおしゃる通りです。私は止められてもこの魔法を使うでしょう。」
王が青年の話に割り込むようにして語気を強めて言った。
「もうよい。ここで話しても時間の無駄であろう。これまで本当に様々な発明をしてくれた。これだけで十分だ。」
青年は黙った。しばらくの後、
「...国王様のご協力に感謝します。では最後に何か私にできることがあれば申しつけください。」
「では...必ず帰ってきて、旅路での出来事や新しい発見などを我に教えてくれ。」
青年はこの国に生まれたこととこの人が国王でよかったと考えた。そして最大限の感謝を込めて、
「はい、必ず。」
と答えるのであった。
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