幕開け
葵とロゼは所定の時間にロンドン塔前に立っていると徐々に周囲に霧が出てくる。
「何この凄い霧」
「魔法の霧ですわ。招待状の所持者だけが魔法の影響を受けますわ」
「段々と濃くなっていってる」
「すぐに晴れますわ」
ロゼの言う通りものの数秒後には霧は晴れていた。
「というかここ何処?」
先ほどまでの景色は一変しそこは石造りの橋の上。
6月ごろのイタリアの日没時間はだいたい午後8時くらい。
故に先ほどまでは普通に明るかったのだが空は満点の星空と大きな月の明かりが覆っている。
石橋には一定間隔で街灯が設置されており、その横幅はざっと10メートルくらい。
車二台が余裕ですれ違える幅はありそうに感じる。
そして橋の先、正面には巨大な西洋風の建物が重々しくそびえたつ。
はたや後ろを振り向けばそこまでも続いていそうな石橋。
「この石橋の奥、つまり目の前の建物が私たちが目指すオークション会場ですわ。この場所は魔力的空間。いわゆる詠唱魔法においての結界詠唱と似ている空間。といわれております」
「???」
「あぁ、難しくは考えなくて大丈夫ですわよ。さ、いきましょ」
「そうだね」
建物内に入ると巨大なシャンデリアが吊るされた豪勢なエントランスが待ち構えていた。
そして正面には受付らしきカウンターがある。
ロゼに付いて葵はカウンターへ足を運ぶ。
「ようこそ。招待状をこちらに」
受付に言われた通りに招待状を差し出す。
一通りのチェックを終え招待状が返される。
「赤城 葵様とロゼ・オルレアン・アルシア・ローズ様ですね」
「はい」
「そうですわ」
「では右手の扉から中へお入りください。ワープゲートとなっており招待状とリンクした個室へ移動します」
いわれた通りに扉を入ると6畳ほどの個室へとつながっていた。
部屋は正方形で扉を開けて正面の壁は巨大なガラス張りとなっている。
そしてそのガラス張りの方を向くように豪勢な椅子が二脚おかれている。
椅子のそれぞれ右側には小さなテーブルとタブレットが置かれている。
右手側の壁には冷蔵庫とドリンクサーバーに菓子類が陳列された棚。
「思ってたのと大分違う」
「あら?そうですの?」
「なんかこうもっとコンサート会場みたいなのを想像してたから」
「そんなの危ないですの」
「まぁ確かに」
「さて時期に始まりますわ」
ガラス張りの向こうには巨大なホールとなっており真ん中の円形ステージに人が立っている。
「他のお客さんは?」
「不可視の魔法で視認できませんわ。それにこのガラスは魔法で別の空間とつなげているだけ。いうならば巨大なスクリーンですの。なのでガラスを割ったらただの壁ですわ」
「この部屋に来る迄受付のお姉さん以外に誰にも会わなかったし、徹底して客同士を合わせないようにしてるのね」
「そうですわね。っとほら始まりますわよ」
ステージ中央の仮面をつけた男がマイクを手に取る。
『レディース&ジェントルマン。今宵もこのショーにお集まりいただき、我ら一同感謝する。長らくお待たせいたしました。これよりオークションの開始を宣言する!』
To be continued.