グレア・オルカ枢機卿
葵はルーとわかれて教会へと急ぐ。
たった今ってことは走ればまだ間に合う距離だと思われる。
ルーが言っていた特別クラス二学年の女子生徒はたった一人しかいない。
エヴァ・スターク。
「多分あの人強そう大丈夫だと思うけど。でも勘違いの可能性の段階で攻撃始めるのは止めないと!」
葵が教会の眼前にたどり着いた時、教会の扉を突き破ってエヴァが現れる。
見たところ何かすごい力に突き飛ばされたという感じだ。
そして大穴が開いた教会の扉より白い祭服を着た男が現れる。
男は自身の身長より大きな十字架を片手で担ぎエヴァを見下ろす。
「今の一撃をノーダメージで防ぐか。存外やるな」
「そういうあんたこそ神父の癖に私の攻撃ノーダメージじゃない」
恐らくエヴァが何も聞かないで男に殴りかかったということは察しがついた葵はすぐに間に割って入る。
「ちょっとまったー!」
「一年。邪魔」
「次から次へと」
「あの!貴方は誰ですか!」
葵はとりあえずエヴァは後回しにして男へと問いかける。
「私はグレア・オルカだ。役職は枢機卿」
「え?ちょっとどういうこと?神父じゃないの?」
エヴァが眉間にしわを寄せて戦闘態勢を解除する。
「枢機卿ってことは教会で三番目に偉いんですよね」
「よく知ってるな」
「友達が院生で」
「カーラ院生だな。お前名前は?」
「赤城です。赤城葵」
「葵?どこかで聞いたな。確かPSAに」
「はい。多分その葵であっていると思います。PSA第十三部隊所属」
「京都の奴だな。そっちのいきなり殴りかかってきた方はPSAの奴か?」
「違うわ。私はただ魔術の才がある一般人。それであんたはここで何をしてたの?どちらにせよ見慣れない顔の教会関係者でしょう」
「私はある物品の回収だ。教会の宝物庫より盗難された聖遺物」
「何を盗まれたんですか?」
「・・・。まぁこれは言ってもいいか。進化の鏃という物だ。これで傷つけられたものを喰種に変える。これが世に出たら大惨事だ。そして最もその容疑者の可能性が高い人間がクリスチャン・ベール司祭」
「スキンヘッドの・・・!」
「その男をみたのか?!」
「先日あいさつした程度で、それっきり見てはいないんですけど。ある学生の証言だとその司祭が爆破の現場にいたということで。丁度その司祭を探すために私はここに来たんです」
「成程な。とても有意義な情報だ。話の途中で済まないが今急ぎで職員室に向かわないといけない。喧嘩を吹っ掛けられたので少々時間を食ってしまったが・・・。では失礼する」
グレア・オルカは十字架を背中に担いで速足で本棟に向かっていく。
そして気が付けばエヴァはその場にいなかったので一人葵はその場に残されてしまった。
To be continued.