葬式
葵が葛城庄司の殉職を聞いたのは厄災消滅の翌朝。
「葛城先生が・・・」
葵の脳裏に過去の事件、公安時代の事件が蘇る。
ショックで崩れ落ちる葵に氷室が一枚の紙を手渡す。
「葵。君宛への推薦状だ。書いたのは庄司」
葵は渡された紙を受け取る。
そこには葵を魔法大学へ入学させるという旨が書かれていた。
「本来1年の期間を経て希望者がこの大学へ入学する。だが今回の事件で葵の功績は役員の連中も高く評価をしている。異例にも有給という形で1年間大学で学べとさ。そこでヤクモとの繋がりを強固にし魔力操作を学んでくるといい。そして再度立ち上がれ。くじけてもくじかれても、決して完全に折れるな。アナザーアースが予測した人類史の終止符。今回の厄災顕現の一件もあってより確実なものになりつつある。一年後、君があの矢を放った時の顔に戻っていることを期待している」
氷室が葵の背中を軽くたたきドアの方へと歩いていく。
「私は柊の捕まえたヤカミの人間に事情聴取をしにいく」
ドアを開けて外にでた氷室は葵の方へ振り返る。
「庄司の葬儀は明日だ。出席するかどうかはまかせる」
今度こそ氷室は部屋から出ていった。
葵は先刻の戦いで無理をしてヤクモを4番まで解放。
それによる負荷に重ねて最大威力での神殺しの一射。
魔力の器を酷使したことによる器の損傷。
魔力量がCまで減少している。
十二部隊の技術師の見立てでは器の回復には半年から1年かかるといわれている。
恐らくそれも相まっての一年の休暇。
翌日3月10日。
葛城庄司大隊長の葬儀が執り行われた。
日本におけるPSAは表向きに警察組織の一部として扱われている。
故に葬儀に参列するPSAの人間には偽造の身分証を貸し出される。
葬儀の雰囲気とは裏腹に空は晴れて少し温かみのある気候だった。
葵が喪服を着て葬儀に参列している姿を氷室が見てすこし安どの顔を浮かべる。
葵は安らかに眠る葛城の顔を見て涙一つでない自分を最低だなと思った。
To be continued.