呪怨玉
「赤城さん。君憑りつかれているよね」
葵の脳裏にヤクモのことがよぎり一瞬ひやりとしたが平然を装う。
「いえ?そうでしょうか?あまり実感はないですね」
「そんなことないはずです」
割って入ったのは蒼を連れてきた山田。
「私、実は憑りつかれている人かどうか、見ただけでわかっちゃうんです。私の予想だとかなりヤバいのに憑りつかれていると思うんですけどね」
「まぁまぁ。山田さん。霊感がないとあまり感じない場合もありますし。これで実際にとって上げてみると憑りつかれていた時との違いを肌で実感できるのでは?」
高木がそう言って取り出したのはテニスボールほどの透明な球体。
葵はその球体を知っている。ここに来る前に祁答院に見せられた球体、呪怨玉だ。
「これは悪い霊なんかを封じ込めることができる特別な玉だ。その名も呪怨玉。これで君に憑りついている悪霊を封じ込めてあげるよ」
その球体を高木が葵に近づけた瞬間に呪怨玉が真っ二つに割れて呪怨玉は高木の手から滑り落ち地面に落ちる。
「ばかな!」
声を荒げたのは高木の隣に座る小川雄二。
「あんた。本当にただの入信希望者?」
葵をぎろりと睨みつけ本部大輔が口を開く。
「まぁまぁ。小川さんも本部さんも落ち着いて。これは厄介ですね。倉庫に行きましょうか」
高木の合図で全員が部屋から出ていく。
「赤城さん。ついてきて下さい」
山田に手を取られて葵も一緒に外に出る。
外に止められている一台のハイエースに乗り組む。
数時間程車に揺られていただろうか。
倉庫がたくさんある海岸に到着すると5Cと書かれた倉庫内に車が入りそこで止まる。
倉庫内は大量のコンテナで埋め尽くされていた。
ハイエースから降りた心神振興会の人たちは倉庫内に止められている別のハイエースに乗り換える。
「赤城さん君は乗らなくていいよ」
そして倉庫の外へとハイエースは出ていってしまった。
結局残ったのは葵と高木、小川、本部の四人。ほか五人はどこかへ行ってしまった。
「さて、赤城さん。君さ何者かな?呪怨玉を破壊するほどの存在と契約している。憑りつかれているのではない。憑りつかれていたのなら呪怨玉が変色もせずに割れるなんて明らかにおかしい」
葵はゴクリと唾を飲み込む。
「当てよう。君の正体」
高木が人差し指で額を軽く数度叩く。
「超常対策秘匿機関の人間だな」
To be continued.