禁忌解放
インフィニティが孵化してまもなく。
千原口交差点付近にて。
ヤクモと蘆屋の先頭は激しさを増していった。
「ついに、孵化したか。だが、完全な孵化じゃないな」
「よそ見をしている暇はないぞ。〈ドリルランス〉」
空のインフィニティを見上げる蘆屋をヤクモが土の弾丸を放つ。
ライフルの弾丸の様に回転しながら土の塊は蘆屋の腹部を貫くが、鎧の力で瞬時に回復する。
「戦闘魔法ごときで私のこの装甲に太刀打ちできると思うなんて、いい度胸だね」
ヤクモは泥の沼を駆け抜け蘆屋に急接近する。
「お前の魔力が切れるまで攻撃すれば別だろ?〈アイアンナックル〉」
「その腕切り落とす」
蘆屋の振り下ろす刀をぎりぎりでかわして魔法によって鋼鉄に強化された拳を蘆屋へと叩き込む。
まるでダンプにでも突っ込まれたような衝撃を受けて吹き飛ばされる蘆屋。
「っつ!吹き飛ばされる刹那に軽く切ったな」
ヤクモは右腕に付けられた切り傷をみる。
「軽傷もいいとこだな」
ヤクモは殴られた場所を抑えながら立ち上がる蘆屋に向かって歩き出す。
「今、軽傷っていったかい?」
「?」
「残念だな。この刀で切った傷は認知した時重傷化する」
噴水の如くヤクモの右腕から大量の血があふれ出る。
「フハ、フハハハハハハハハハ。何を言い出すかと思えば。まぁそうだな。これ以上無駄に魔力を使われるのは不愉快だ。〈我求めるものなり。呼び声に応えその門を開きたまえ。パラレルゲート〉」
・・・。
「召喚魔法が発動しない?あぁ厄災の影響だな。なら」
ヤクモが自身の服をはぎ取るとその体には複雑な魔法陣が描かれていた。
「〈禁忌解放〉」
ヤクモが魔法陣に魔力を流した途端、魔法陣が消失し右腕の傷も修復される。
「なにかしたな」
「人間。速攻で殺してやる」
「速攻だって?私に傷の一つでもつけてから言ってほしいものだね」
「残存時間はざっくり1分か。なら〈血刀〉」
ヤクモの右腕にこびりついた血が意思をもったかのように、うねりそしてその形を変化させる。
たちまちそれは深紅の刀へと変貌した。
「血の刀?」
「出し惜しみはしない〈ディカプルアクセル〉」
ヤクモの体が加速することによってノイズのようにブレだす。
To be continued.