妖刀・阿修羅童子
空が暗く染まったころ。鴨川にて。
「カスみたいな魔力量の分際でこの俺を追い込むか。いや厄介なのはその隣の化け狐」
川に叩きつけられて全身ずぶぬれの男が立ち上がって三城と八千代を睨む。
「化け狐とは乙女に対してひどいことをいいますこと。それじゃあもてませんわよ」
「いちいち反応しなくていいから」
「あまりなめるなよ。〈大樹侵食〉」
男が両手を川に突っ込むと川のいたるところから木の根っこが出現する。
「所詮は三流。同じことの繰り返しなんて、みっともないですわね」
木の根はたちまち周囲を侵食し竹田橋をへし折り近くの配管を折って更に成長をする。
「同じことの繰り返しだと?本丸はこっちだ!〈炎之木偶〉!」
成長し続ける木の根の海から木で出来た巨人が出現する。
その巨人には顔はなく、その胴体は鳥籠のようになっている。
「存外、それを出せるとはね。修也、こっちも切り札で行こう」
「え?このタイミングでか?まぁ出し惜しむよりは速攻だな。〈一億電圧・炎雷大神〉」
修也の全身を空気が振動するほどの雷が包み込む。
木の巨人の胴体部分が開きその中より修也と八千代めがけてツタが伸びていく。
修也は腰に身に付けた日本刀を抜刀する。
抜刀された日本刀の刃は刃こぼれが酷く、誰が見てもなまくらとしか言えない見た目をしている。
「そんなガラクタで何をするきだ。炎之木偶!あいつらを捕まえて焼き殺せ!」
「普通に使えば豆腐すらきれいに切れねえガラクタだが、てかこれは妖刀だ」
修也が纏っていた雷が徐々に日本刀の刀身へと移っていく。
「妖刀、阿修羅童子。オドを纏うことで岩盤すら切り裂く。てか俺と相性最高ってわけ」
修也は妖刀を構え一歩前へと踏み込む。
「〈雷鳴斬〉」
激しい落雷音と共にうねる雷の斬撃が炎之木偶を真っ二つに切り裂き、その真下にいた男も焼き切った。
斬撃が放たれた鴨川は真黒く焦げて地形が大きく変わってしまった。
修也は妖刀を収めその場に座り込む。
「っつぁ。てかアホほど疲れるよこれ。てか運動不足関係なしに全身筋肉痛とかこれ労災降りないかな」
「あまりぼやいている暇はなさそうですよ修也。どうやらあの男、自身の死をトリガーに妖怪やそういう類を呼び寄せやがりましたわ」
「いや、勘弁。無理」
「仕方ないですわね。こっからは選手交代。申し訳ないですが2番の呪縛も解除してくださいね」
「わかったよ。てかしばらく休みたい」
To be continued.




