百鬼夜行
「私の名は蘆屋恭介だ」
「え?」
「丸山なんていうのは偽名だよ。それじゃあ予定通り百鬼夜行を始めさせてもらうよ。〈死泥雲海〉」
蘆屋の体から黒い泥が一気にあふれ出す。
「まずい!すまないマスター」
ヤクモはくるりと葵の方を向きひょいと肩に担ぎあげる。
「えっちょ」
そして素早く電柱の上へと飛び乗る。
葵が下を向くと蘆屋からあふれでた黒い泥が一気に交差点にあふれ出て、それに触れた人は一気に燃え上がり泥に沈んでいく。車はそれもろとも沈み、家々も徐々に沈んでいく。
体を焼かれた人たちの叫び声がまるで耳元で聞こえるようだ。
「なかなかどうして、勘が鋭い。だが、その様子だと。魔法を使えない、いや。封印で使うことが制限されているな」
二人を見上げ蘆屋は愉快そうに笑う。
「そうなの?」
「その通りだ。まさか祁答院からなにも聞いてないのか?いや、あれは説明を放棄するからな。私がマスターにしっかり伝えなかったのが悪かった。今まさしく袈裟が言った通りに5番解除でできることは蹴る殴るくらいだ。更に解除しないといけない」
「じゃあ、解除を」
「その前に一つだけ伝えておく。5番と4番は大きく違う。5番はマスターの魔力を媒介に私の疑似実態を作り上げそこに私の意識を一時的に定着させているだけだ。だが4番は私のマナをマスターの肉体を通してこの疑似実態に供給させるバルブを開ける。術式をつないで数日でこれをやると最悪死ぬリスクがある。故に使うならもっと術式に体を慣らしてからの方がいい」
「でも、そうも言ってられないよ」
「もうすでに何をしようと手遅れだ。この状況。そう、人類最強の男を阿形吽形に釘付けにして呪怨玉を破壊するほどの怪異を手中に収められるこの状況ッ!今ここに百鬼夜行を決行する。〈怨霊回帰〉」
今もなお無限に広がっていく黒泥の中より大量の魑魅魍魎たちが這い上がってくる。
「これらは全て呪怨玉もろとも私の式神として取り込んだ怪異などなど。そしてこの泥は1時間で京都全土を焼き尽くす」
「ヤクモ」
「あぁ。オーダーを」
「早急に撤退して祁答院さんと合流を!」
「オーケーだ」
ヤクモは葵を小脇に抱えて電柱の上を飛び移って蘆屋から一気に離れる。
「逃がすと思うのか?追え、邪竜」
蘆屋の合図で黒泥から巨大な黒い竜が舞い上がり葵たち向かって一直線に突っ込んでいく。
「後ろ!」
葵が叫ぶと同時にヤクモは高く飛び上がり邪竜の突進をかわす。
高く飛んだ時遠くの様子が葵の目に入ってくる。
「うそ・・・」
葛城がいるとみられる場所は白い靄がかかって何も見えない。遠くには巨大な大木がうねっていたり、また別の場所では大量の金魚が口から赤い液体を垂らしながら空を泳いでいたり、山の方は地形がえぐれていたりと。たった数分で京都が地獄へと化していた。
To be continued.




