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アカギ戦記  作者: 饅頭
序章【東京事変】
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仕事

 超常対策秘匿機関:Paranormal Secrecy Agency通称をPSA

 1875年、日本の山奥に魔女狩りから逃れた魔法使いの子孫、アイザック・ヴィレッチが完成させた疑似惑星アナザーアースにより縦時空と横時空が観測されてしまった。それにより150年後の2025年に人類史の終わりを観測してしまう。アナザーアースによって観た事象は確定事象となり、世界は終焉へと向かっていく。

 アナザーアースは1660年ごろの三度目の魔女狩りが始まった時期にアイザック・ヴィレッチの先祖であるレイモンド・ヴィレッチにより考案された。残された記録によるとレイモンド・ヴィレッチは疑似惑星アナザーアースによって縦時空と横時空を観測することにより、人類の発展と争いの根絶を願たとされている。

 レイモンドには二人の息子がいた。一人はバン・ヴィレッチ。彼には魔法学校の創設を託した。もう一人の息子であるカルロ・ヴィレッチにはアナザーアースの完成を託した。

 レイモンドはその後1680年ごろに最後の魔法使いとして火あぶりで命を落としたとされている。

 アイザック・ヴィレッチは訪れる終末に備えて仲間を募りだす。

(中略)

 以上が機関の起源である。

 現在はキング・ヴィレッチが最高責任者となっている。


 資料に目を通しながら葵は砂糖を多めに入れた紅茶をすする。

 ここは超常対策秘匿機関の日本拠点。通称をアトランティス。

 「勉強熱心だな。それはとても勤勉なこったな」

 そんな葵に話しかけてくるのは両腕を拘束され目隠しをしている囚人服の長髪長身の男。

 男の名をヤクモという。ヤクモは人であらず、吸血鬼であるという。

 彼は今いるこの地下より出ることは出来ない。

 「勉強って程でもないですけど。公安退職から今日まで忙しすぎて、正直この組織の概要みたいなのも全然わかってないから」

 「そうか」

 ヤクモが少し顔を上げた。

 「仕事だ。彼が来る」

 「え?」

 不意に部屋の扉が開けられる。

 部屋に入ってきたのは白髪のサングラスをかけた男だった。

 「失礼する。ヤクモ、葵。仕事だ」

 「祁答院さん、こんにちは。仕事って?」

 「とりあえず葵、ついてきてくれ」

 祁答院の後を追って葵が部屋を出ていきエレベーターに乗り込む。

 「どうだ?昨日の配属から食事と睡眠以外の時間をヤクモと過ごしてみて」

 「そうですね。最初は少し怖さがありましたけど。今はなんというか、クラスの席替えであまり話したことがなかった人が隣になったけど、話してみたら案外話せるじゃんってなった感じですかね」

 「ははは、それはまた面白い言い回しをするな」

 「あの、仕事って何をすれば?」

 「それを説明する前に一つやっておくことがある。こっちだ」

 エレベーターが止まりドアが開くと祁答院がエレベーターから降りる。それに続くように葵も降りる。

 二人が向かったのは少し広めの部屋。部屋の入り口には第二シュミレーションルームと書かれている。

 「よし。君の両手に刻んだヤクモの顕現術式の練習でもしておこうか」

 「えっと、双者封印術式そうじゃふういんじゅつしきでしたっけ?」

 「そうだ。両手を胸の前で合掌させて限定解除5番と唱えれば術が発動する」

 「わかりました」

 葵は言われた通りに胸の前で両手を合わせて合掌の形をとる。

 「〈限定解除げんていかいじょ5番〉」

 葵は自分の体が少し浮くような感覚を覚える。その瞬間、目の前に直径1メートルほどの円が出現するとそこに突如としてヤクモが現れた。

 両腕の拘束具は解けてはいるがそれ以外はさっき見たヤクモのままだった。

 「ああ、擬体での顕現か。本体の間隔が近い、アトランティス内だな」

 ヤクモが瞬時に状況を把握する。

 「上出来だ。流石俺の遠縁だな。とりあえず今は5番に収めておくといい。今の葵が扱えるのは恐らく4番までだろうけど。それはいざって時のとっておきにするといい」

 「あの、これ戻すときってどうすれば?」 

 「なんだ。もう用は済んだのか?」

 「それを戻すときは同じ手順で封印術式執行でいいよ」

 「〈封印術式執行ふういんじゅつしきしっこう〉」

 すぐに葵が唱えるとヤクモはスーッとその場から消える。

 「うん。大分いいな。それじゃあ早速仕事の話だ」

 「はい」

 「新宿で最近活動している宗教団体の調査をお願いしたい」

 「宗教団体ですか?」

 「そうだ。俺は別件で本部に戻るからその代わりに。困ったらヤクモを顕現させればどうにかなる」

 「わかりました。それで具体的にどうすれば?」

 「もしその団体がこれをもっていたら回収してほしいんだ」

 祁答院が出したものはテニスボール程の透明な玉。

 「これは呪怨玉じゅおんだま。呪いや怨霊を封じ込めることができる玉。陰陽師なんかが自分の手に余る悪霊なんかを玉に封じ込めることで祓う事のできる代物だ。といっても問題の先延ばしにしかならない。この玉便利だが、使い方を誤るととんでもない事態を引き起こす。葵、君が公安をやめるきっかけになった事件もこれがらみだ。君は一応断ることもできる。どうする?」

 「・・・。やります。やらせてください」


To be continued.

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