無機質な世界
同日、12時50分。
五条天神川の交差点付近。
「まいったな。これじゃあ赤城君の応援なんていけないぞ」
葛城庄司の担当場所は世界から切り離されていた。
約5分前。
「はじめまして。超常対策秘匿機関の人」
突如として葛城庄司の前に現れた女性は懐から砂時計見た目を模したガラス細工を取り出して地面に叩きつけた。
ガラス細工が砕けた瞬間その地点を中心に魔力の渦が広がり、葛城が気が付いた時にはそれに飲み込まれていた。
「これは、結界詠唱による結界内と似たようなもの。いや、それよりもっと精巧なそして複雑な」
京都の町並みは一変して真っ白で無機質な街並みへと変貌した。
「えっと、残念。私の目当ての相手ではありませんね」
「お目当ての相手ね。それはある意味嬉しいな」
「はぁ?」
「それはつまり君をここで足止めすることに意味があるということだな」
「足止め?無駄死にするの間違いでしょうに」
「言ってくれる」
葛城は懐から真っ黒な手袋を取り出すと両の手にそれをはめる。
「黒縄紋。竜術の竜装程度の強度はあるぞ」
「そう。苦痛なく死になさい。〈テラフレア〉」
彼女が手を上げると一瞬にして2トントラックをも包み込めそうなほど巨大な火球が構築される。
「いきなりそんな大技かよ!」
「灰すら残さない」
容赦なく放たれた火球は葛城向かって真っすぐに飛んでくる。
「〈ハイフライ〉」
葛城の体が少し浮き上がる。
「〈ハイテレポート〉」
火球がぶつかる寸前に葛城は上空30メートルほど上へと瞬間移動をし更に上へと飛行魔法で移動する。
火球は何もない地面にぶつかると大爆発を起こして地面を焼き上げる。
焼きあがった地面に葛城はゆっくりと下降していき、地に足をつける。
「テラ魔法、A+++以上の魔力あるとか少ししんどいな」
「そういう貴方はハイの魔法が使えるってことは魔力量はD以上ね。グレーターテレポートを使わずにハイフライと併用して距離をとったところを見ると、B以下、つまりD+++~B++の何処かの位置ね」
「いやはや、大方その通りだ。雑に見えて案外しっかり見てやがるじゃないか。是非うちにほしいね」
「残念おあいにく、私は魔法至上主義の世界を望むわ。だから現世界を尊重する貴方たちの考え方はナッシングだわ」
「そうか、ならせめて名前だけでも聞いておきたいね」
「戦う相手の名前なんて不要じゃない?」
「いいや必要だね。私は葛城、葛城庄司だ。君を戦闘不能にして国家転覆罪で逮捕する男の名だ」
「ふーん。まぁいいわ。聞きなさい、九条由美。これで満足?それじゃあ次こそさようなら。〈メテオ〉」
空が暁に染まり凄まじい熱気を放ちながら巨大な隕石が落ちてきた。
「まいったな。これじゃ赤城君の応援なんていけないぞ」
To be continued.