強欲の魔王
『それでは早速契約です。手を』
葵はマモンの差し出した手を取り握手する。
その途端つないだ右手を通してマモンと自身の肉体を魔力が流れるのを感じる。
二人の周囲だけオドの濃度が急激に上昇し本来目に見えない魔力の粒子が肉眼ではっきりわかるほどに光を放つ。
つないだ二人の手にはそれを覆うように光の鎖が巻き付き一瞬まばゆい光を放って消える。
『契約成立です。それでは早速上へとまいりましょうか。と行きたいところなのですが呼び方を決めておかないとしまらないではないですか』
「好きに読んでくれて構わないわよ」
『それはそれは。では敬意をもって我が君と』
「あ、ごめん。ちょっとむず痒いから却下で。というか普通に葵でいいんだけどな」
『それでは示しがつきませんでしょう。主従の関係とは大事なものですよ』
「うっわデジャブ感。えーとじゃあマスターで」
『ふむ。いいでしょう。ではマスター早速上へまいりましょうか』
「上へって飛行魔法とかで?結構な距離あるけど。それに浮上したところを狙い落されるかもだし」
『心配ありません。初仕事、完璧にこなして見せましょう』
マモンは杖を一振りして地面をたたく。
するとたたかれた地面を中心に紫色に光る魔法陣が大きく展開されていく。
「召喚魔法?」
『そのとおりです我がマスター。私の杖が行う召喚魔法はちと特殊です』
「特殊?」
『えぇ。その名も冥界召喚。といっても対象は魔獣のみで通常の召喚魔法では絶対に召喚ができない魔獣です』
「それがその杖の力なんだ」
『いいえ。この杖にはまだまだ能力がありますとも。冥界召喚はその一端。いでよ〈夢幻の聖樹〉』
「ヴぃー・・・?え?」
『ヴィーチェ・ユグドラシル。簡単に言えば植物型の魔獣ですよ』
魔法陣がまばゆい光を放ち大量のツタが伸びていき。それらは折り重なって巨大な木の根へとなり遥か空の一点の光へと伸びていく。
『本当は厄災をひねりつぶすほどの魔獣を召喚したいのですが。それをしたら都市が滅ぶので自重しておきました』
「いや・・・。こんな速さで成長する木とか。それだけで都市もっていけそうなんですけど」
『この大樹で浮上時の奇襲はふせげますね。では私たちの浮上手段を用意しましょう』
マモンは杖を大きく振るう。
すると空間が大きくゆがみ、ゆがんだ先より一隻の巨大な帆船が出現する。
「海賊船!?」
『いかにも。かの船こそが有名な幽霊船。フライング・ダッチマン号ですぞ。操縦は幻影にお任せあれ』
マモンが船へと飛び乗って大きく杖を振るう。
すると船の物陰から顔のない乗組員が大量に現れて仕事をしだす。
『ではマスター。上までエスコートいたします』
マモンの手を取って葵が船に乗り込むと船はバサリと帆を張って一気に上へと飛翔する。
To be continued.




