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アカギ戦記  作者: 饅頭
四章【深淵都市ベルリン】
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奈落の中で

 ロゼがマスオペレーション・オーバードライブを使用する少し前。

 ロゼ同様に大穴に落ちた葵はどこまでも下へ落ちていき。

 気が付けば冷たい石の上に倒れていた。

 周囲を見渡すといたるところに青白く光る水晶石が見える。

 上を見上げればはるか空に一点の光が見える。

 そして葵が立っているその場所は最下層ではない。

 更に下へ続く穴がすぐ目の前に広がっていた。

 明らかにその深度は異常であるのがわかる。

 『おやおやおや?こんな辺鄙な場所にお客様とは珍しいですね』

 機械音声のような不気味な声色を出しながら暗闇の奥より高身長の男が現れる。

 宝石のようにきらびやかに光る金髪に、真っ白なスーツを身にまとうその男の両目は赤く金色に瞳孔が光っていた。

 両目の下から頬にかけて涙の後の様に黒いラインが入っている。

 そしてその口元は少しにったりと笑っているように口角が吊り上がっている。

 男は右手に持つ黒い宝石を携えたステッキをくるくると回しながらゆっくりと葵に歩み寄ってくる。

 葵はその男にヤクモを初めて見た時と似たような印象を受ける。

 この世のものではない。

 人でなしの化け物。

 「こんなところにいる貴方はだれなんですか?」

 『いやはや私を存じ上げないとは・・・。それ程までに現世うつしよは時間が過ぎてしまっているのですね。嘆かわしいかな』

 「???」

 『っと私が誰か?それが気になるのでしょう。そう!この私こそが悪魔、魔界における魔王種の人柱。強欲の大罪を冠する魔王、マモンです。以後お見知りおきを』

 自身を魔王マモンと名乗った男はその場で紳士の様に深いお辞儀をする。

 『して、貴方様のお名前は?』

 「えっ」

 予想の斜め上すぎる返答に葵は一瞬きょとんとするがすぐに返す。

 「はじめまして。私は赤城葵です」

 『葵というのですね。この出会いに感謝を。さて何故貴方様はこの辺鄙な場所に来られたのでしょうか?』

 「いや、私も来たくて来たわけじゃないんですけど。おっこちちゃって・・・」

 『落っこちた!?ハハハハハ!これはまた面白いことを。この深淵はどこまでも落ちる大穴はあれど、空には穴すら・・・・』

 葵の返答に笑っていたマモンは空を見上げたら光の点、穴の入り口が見えて言葉を失う。

 『これは失礼。この深淵に穴が開いたのですね。つまり、あぁなるほど。とするならば・・・』

 「あの・・・」

 『葵といいましたね。私から一つ提案があるのですが、なに貴方にもうれしい話です。聞きます?』

 「え?提案?」

 『はい。私と契約を交わしてほしいのですよ』

 「契約?それって悪魔との契約ってことだよね。いやなんですけど」

 『まぁそうですね。悪魔との契約なんて断るのが常識で必然です。では条件、契約内容を聞いたうえで判断してくれませんか?』

 「まぁ、聞くだけなら」 

 『まず聞いてほしいのが私の魔力量は貴方様よりも少ないのです。本来魔王種の悪魔は人間でいう魔力量がSはあるんですが、私の場合は訳あってFだ。つまり魔力なしってことだ』

 「じゃあ、私と契約して魔力が欲しいってこと?」

 『そういうことです』

 「でもなんで魔力がないの?」

 『肉体がないのですよ。いまは霊体とでもいうべきですかね。この体、この状態は。まぁなんで?でうして?なんて話はまたにしましょう。ギブの要求は魔力としてテイクするのは私の力です。魅力的な話じゃありませんか?』

 「話が、うますぎて承諾しかねるんだけど」

 『そうですね。私も早くこんな奈落から脱出したいのですよ。大穴の底の底。深淵の奥に落ちた怪物が這い上がる前に。魔力のない私は何もできない。だからこそその指輪を持つ貴方様に力添えをいただきたい』

 そういってマモンが葵の指をさすと、その指に金色の指輪が具現化する。

 以前にアーサーによって指にはめられた黄金の指輪。魔炉の指輪。

 「確かにこの指輪なら魔力を渡し続けられる」

 『そうでございましょう。なんせその指輪、いえその指輪たちは王の指輪。少し話が脱線しましたね。貴方様は要は私の目的が知りたいのでしょう。契約をかわすのです。教えましょう。私の目的はいたって単純。己の肉体に戻ること、そして私をこんな目に合わせたやつを奈落に叩き落すことですよ』

 そういったマモンの顔は今までのにやけづらと違って怒りが混じった笑みだった。

 『ひとつ。約束しましょう。貴方様だけは裏切らぬと』

 「それを信じられる根拠は?」

 『私は己の強欲のためになら嘘はつかない』

 「・・・。わかった。契約をします」


To be continued.

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