赫き彗星
空母に降り立った怪物は一声うなりをあげて空高く飛び上がる。
その怪物アナザー・ワンが飛行する音はまるで戦闘機のエンジン音のごとく。
飛行する獣は一気に高度を落とし海面ギリギリをすべるように飛行し空母めがけて突進する。
「まっすぐ突っ込むとは、なめられたものだな」
キング・ヴィレッチは自身の持つサーベルを抜いて構える。
そして一気に駆け出して飛躍する。
海上を脚力で蹴り進み人間離れした速さでアナザー・ワンへと迫る。
「〈聖剣斬撃〉」
キング・ヴィレッチがサーベルを振りかざす。
だがその一撃はアナザー・ワンの強靭な鱗によって防がれてしまう。
波しぶきをあげてアナザー・ワンが直角に浮上する。
キング・ヴィレッチは風圧で体制を崩して海に落ちる。
すぐに海面へと顔を出すとアナザー・ワンが円状に旋回しているのが見える。
「馬鹿みたいに固い鱗だな。祝福儀礼を施していなければサーベルが粉砕されていた。といっても全力で振れるのは後3回くらいか」
アナザー・ワンは旋回しながら海面に浮かぶキング・ヴィレッチに狙いを定めると、一気に加速して彗星の如くキング・ヴィレッチへ迫る。
「桜花とでもいうつもりか」
アナザー・ワンが特攻機の如くキング・ヴィレッチへと突っ込み大爆発を起こす。
爆発によって海面の一部が干上がり球場の蒸気が上がる。
その蒸気の中より赤い軌跡を描きアナザー・ワンが飛び出すと両翼を大きく広げ海面をにらむ。
アナザー・ワンは高き知能をもって思考する。
その圧倒的な力を持てって慢心はせず、獲物の確実な死をその目に焼き付けるまで。
やがて荒れた海は静まり波は穏やかになる。
だがいくら海面をにらんでいてもキング・ヴィレッチの死体は浮上しない。
「〈偽名開放龍聖剣〉」
既にはるか上空へと移動していたキング・ヴィレッチがアナザー・ワンの首めがけてサーベルを振り下ろす。
アナザー・ワンの首を落とすまでいかないもののその強靭な鱗をはいでダメージを与える。
だが同時にサーベルも真っ二つに折れてしまう。
キング・ヴィレッチはそのまま海賊船の甲板へと着地する。
「ダイレクトの寸前に合わせて上空へテレポートさせてもらった。厄災、こっちは戦いの年季が違う」
アナザー・ワンは高らかに咆哮をあげてキング・ヴィレッチをにらみつける。
その目はこの俺によくも傷をつけてくれたなと、怒りの炎を宿していた。
あの男の同じ一撃を後幾度か同じ場所に受けたら俺の首は飛ぶ、だが男の剣は折れている、ゆえにこれで仕留めてやる。そう息巻いてアナザー・ワンは助走なしのトップスピードで加速して急降下する。
先ほど海面へとぶつかった時と同じように、すべてを灰燼に帰す突撃。
〈赫き彗星〉
赤い軌跡を空へ刻み、流星の如く美しく、だが無慈悲に。
キング・ヴィレッチは刃折れの剣を構える。
「剣が折れているから油断しただろ?私の固有能力、粛清剣は棒状のものを聖剣として扱うことができる。故に刃が折れようが関係はない。とくと受けよ〈聖剣斬撃〉」
キング・ヴィレッチの放った斬撃とアナザー・ワンが衝突をしまばゆいほどの光を放つ大爆発が起こる。
爆発の影響で付近の海賊艦隊の大多数が消滅していく。
キング・ヴィレッチは間一髪爆発から逃れて再び空母の上へと舞い戻る。
アナザー・ワンも同様に爆発から逃れて再度空を制す。
キング・ヴィレッチが刃折れの剣を構えと同時に空母全体にアラートが鳴り響く。
甲板の一部が円状に開き、開いた穴よりバスター・アルムンドと一振りの剣が登場する。
To be continued.




