氷炎
ゼロは腰の太刀に手をかけてゆっくりと葵に近づいてくる。
「ちょっと待ってもらえませんか!あまりにも身に覚えがないのですけど」
「だから、君の意見を僕が効く義務も義理もないから。あまり抵抗しないでね。面倒だから」
「っ!エレンの逃げろってこういう・・・なら」
「ねぇ何その構え」
葵は魔法の弓を構えて臨戦態勢をとる。
「全力の抵抗です」
「じゃあ軽く痛めつけるとしようかな」
「〈無限乱射〉!」
葵の放った矢は無数に枝分かれしていきゼロへと向かっていく。
だがゼロはなんの抵抗もすることなく歩き続ける。
瞬く間にゼロへと葵の放った矢の雨が降り注ぐ。
「え?」
無抵抗に歩いてきたゼロは確かに葵の矢を全て受けた。
だがその体、服に至るまで傷や汚れ一つついていない。
「なら〈追従の一射〉」
穿たれた一射はまっすぐとゼロへと向かって飛んでいく。
そしてその矢がゼロの胸部を貫く。
「うっそ」
貫かれた胸部は青い炎に包まれてその傷を修復していく。
「次は僕の番かな。〈獄鳥〉」
ゼロの胸部の炎が収縮し、巨大な炎の鳥と化して葵へと放たれる。
葵は瞬時に横に飛んで回避する。
だが炎の鳥は急旋回して再度葵を狙う。
「〈タイムオペレーション・ディセラレート〉」
今にも葵に直撃しそうな炎の鳥は一気にその速度を落とし亀のような速度になる。
「ロゼ!」
「間に合いましたわね。〈エリアオペレーション・アンチスキル〉」
続けてロゼが使用した固有魔法により炎の鳥はその場から消え去る。
「君、誰だい?僕の仕事の邪魔をしないでもらえるかな?」
「私はヴィレッチ国立魔法大学院が特別クラスの三年生。ロゼ・オルレアン・アルシア・ローズですわ」
「オルレアンだって?アルシアっていうことは黄金卿か」
「黄金卿?一体貴方何の話をしていますの」
「そうか名だけ残ってるのか。ところでこれは君の能力かい?僕の固有能力【氷炎】が全くもって使えないんだけど」
「そうですわ。私の家系の能力ですわ」
「じゃあこっちでやるとするか」
ゼロは腰の太刀を抜刀して構える。
「君の力は恐らく能力の無効化だろ。だけど【覇道】はそういうのに対してのカウンターとして開発されてるんだよ。〈八艘飛び〉」
パン!という破裂音が8度、重なるようになる。
同時にゼロは葵たちの眼前にまで迫りくる。
「はy」
気が付いた時にはもう遅かった。
葵は思いっきり蹴り飛ばされ宙を舞い、ロゼは刀の峰で切り飛ばされる。
訳が分からないままに葵は地面を転げまわる。
「能力の無効化、そんなもので僕は止められないよ」
「なんて馬鹿力ですの」
「流石は部隊長ってことね」
「無駄ない抵抗はやめなよ。こっちも無駄に疲れたくないんだよね」
「では帰ってもいいのですわよ」
「そうだな。これだと無傷での連行は無理だね」
「ロゼ無理だよ。状況が厳しすぎる」
「葵。私が貴方をこの場から離脱させますわ」
「ロゼは?」
「私を誰だと思っていますの?学園最強ですわよ」
「まぁなんでもいいけど僕から逃げれると思わないでほしいな」
「〈タイムオペレーション・アクセラレート〉」
ロゼは自身に加速の固有魔法を掛ける。
一呼吸でロゼはゼロの間合いに入り込み胸部へと拳を叩きこむ。
が、一瞬ゼロが早くその拳を左手で受ける。
「〈ベクトルオペレーション・バリスタインパクト〉」
まるで磁石が反発するかの如く、ゼロはロゼにはじかれて真後ろへと吹っ飛んでいく。
「葵!手を上に!」
「え?」
訳も分からず葵が両手を上げる。
すると何かにつかまりそのまま地面と足がおさらばする。
「市ヶ谷さん!?」
腕をつかんだのは武装した市ヶ谷蓮。
「さっきぶり」
『久しぶりだな』
「でた喋る右手」
『出たとは心外だな。相棒、このままどこまで行くんだ?』
「とりあえず。国外だな」
『了解、それなら人型より竜だな』
「わかった。〈ゼノンドラゴモード〉」
『Transfom.Dragon King』
市ヶ谷蓮の体を深紅の光が多いみるみるうちにその姿形を変えていく。
人の姿は見る影もなく、その姿は鋼鉄の竜である。
葵は竜となった市ヶ谷の背に乗って戦線を離脱していく。
ロゼの一撃により軽く数百メートル吹き飛ばされたゼロは立ち上がり刀を納刀させる。
「逃がさないって言ってるのに」
ゼロの足元に白い蒸気がはびこり、その背に青い炎の翼が灯り一気に空へと舞い上がる。
そして彗星の如く一気に加速する。
「逃がしませんわ〈フライ〉〈タイムオペレーション・アクセラレート〉」
ロゼはゼロの後を追うように空へと一気に飛び上がる。
To be continued.