「第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
犯人は……量子力学
犯人は……量子力学
事件現場に遺された謎のメッセージ。
「ダイイングメッセージでしょうか?」
「何とも言えないな。とりあえず量子力学の権威をリストアップしてくれ」
「その必要はないよ」
現れたのは警視庁きっての天才といわれる男。
「斉木警視、どういうことですか、まさかすでにメッセージの謎が?」
「ああ、少なくとも動機はわかった。おそらくは三角関係の痴情のもつれによる殺人だな。関係者に量子、力、学が居ないか洗ってくれ」
「はっ、すぐ確認します」
斉木警視、天才となんとかは紙一重というけれど……いくらなんでもそれはない。所詮は噂か、時間の無駄だな。
「斉木警視、容疑者の中に、羽生田量子、虎井力、小路学がいます。三人は大学の同級生で同じクラブに所属していたようです」
……いたんかい。嘘やろ?
「で、ですが斉木警視、被害者は別人ですよ? 三角関係ならその中の誰かが殺されているはずでは?」
「ふふ、そんなことか。その謎もすでに解けている」
な、なんだって!?
「三人の名字を並べてごらん?」
「羽生田、虎井、小路……たしかにやや珍しい名字ですが……」
駄目だ……まったく意味がわからない。
「はにゅーだ・とらい・おじ、つまり……バミューダ・トライ・アングルとなる」
ちょっと待て、はにゅーだ、とらいは百歩譲ってまだ良いとして、おじは何で英語入ってんの!?
万歩譲ってバミューダ・トライ・アングルでもいいけど、だから何?
「おそらく被害者は、知らずに三人が形成するバミューダ・トライ・アングルに足を踏み入れた結果、トラックに轢かれて異世界へ旅立ったのだろう」
「ち、ちょっと待ってください、犯人はサバイバルナイフで殺されているんですよ? トラックはどこから出てきたんですか!?」
「……ほう? なぜ君はまだ鑑定結果が出ていない段階で被害者がサバイバルナイフで殺されたことを知っているんだね?」
「……し、しまった!?」
「確保しろ」
両手に手錠がかけられる。
なんてこった……まさか最初から全て掌の上だったとでもいうのか?
「出来心刑事、何故こんなことを?」
「……出来心です」
「だろうな。わかっていたよ」
「あの……なぜ俺が犯人だと分かったんですか?」
「名字」
そんなわけあるかーい!!
◇バミューダトライアングル
バミューダトライアングルは、フロリダ半島の先端と、大西洋にあるプエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形の海域。古くより船や飛行機、もしくは、その乗務員のみが跡かたなく消える事故が多発。科学的に解明できないことで、オカルト、超常現象ネタとして扱われることが多かった。/ウィキペディアより引用




