3.僕の家族
中学3年生の5月、前野湊の通う中学校に転校生がやってくる。龍崎空という、小柄で可愛らしい女の子だ。雨の日、傘を忘れた空に、湊が小さな折り畳み傘を差し出したところから、2人の距離は近づいていく。
お互いに悩みを抱えながらも、お互いを大切に思い、そして「小さな嘘」をつく。
第一章では、湊の目線から物語が進み、第二章では、空の目線から物語が回収されていく。
中学生という、大人でも子供でもない、そんな2人に起こる、心温まる奇跡の物語。
僕には、ごく普通の家族がいる。
父さんは、サラリーマン、小さな会社の、さらに小さな支店で、支店長を任されている。出張や休日出勤もあるため、たぶん母さんは、僕たちが小さい時は苦労したんだと思う。
そんな忙しい父さんだったけど、年に何度かは旅行に連れてってくれるし、休日には一緒にゲームもしてくれた。
いい父さんだと思うけど、基本的に家の事は出来きず、
「言わないと出来ない、言わないとやらない」
といったところが、たまに母さんをイライラさせている。
母さんは、とにかく愛情深い人だ。
僕たちを愛してくれているのが伝わってくる。
料理もまあまあ美味いと思う。自家製のお菓子を作ったりもしている。
思春期に入った僕の扱いには、多少戸惑っているようだが、まだまだ手のかかる妹達には、全力で愛情を注いでいる。
そんな母さんだが、大抵夕方になるとイライラしてくる。妹達が帰宅後、宿題タイム、お風呂、ご飯と…
そんな中、僕が帰宅するものだから、僕はなるべく気に触らないように、慎重に行動する。
下の妹が小学生になったため、パートを探しているが、なかなか思い通りにいかないらしい。
そして、僕には妹が2人いる。
2人とも、僕のことを湊と名前で呼ぶ。
別に、お兄ちゃんって呼ばれたい訳じゃないけど、なんだか少し兄の威厳みたいなものがない感じがするし、少し生意気に感じてしまう。
1人目は、小学4年生の彩芽。
とにかくマイペースな奴で、本を読んだり作文を書くのが得意。夏休みの課題か何かで、作文で賞をもらうこともしばしば。
運動は、まるでダメ。ボールを真っ直ぐ投げる事ができず、走るのも遅いが、何故か家の周りをぐるぐる回る鬼ごっこが好きで、休日になると、父さんを誘って家のまわりをキャーキャー言いながら走り回っている。
2人目は、小学1年生の夏芽。
クラスで1番身長が高く、よく食べ良く育ってる。姉の彩芽に追いつくぐらい、すでに体重が重いらしいが、愛嬌があって可愛い奴だ。
1年生になってすぐ、アスレチックの遊具から転落し、足の甲を骨折したが、上手に松葉杖を使いこなし、今ではもうサポーターのみになっている。
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