2.僕の学校
中学3年生の5月、前野湊の通う中学校に転校生がやってくる。龍崎空という、小柄で可愛らしい女の子だ。雨の日、傘を忘れた空に、湊が小さな折り畳み傘を差し出したところから、2人の距離は近づいていく。
お互いに悩みを抱えながらも、お互いを大切に思い、そして「小さな嘘」をつく。
第一章では、湊の目線から物語が進み、第二章では、空の目線から物語が回収されていく。
中学生という、大人でも子供でもない、そんな2人に起こる、心温まる奇跡の物語。
僕の通っている学校は、全校生徒180名ほどの小さな田舎の中学校だ。田舎と行っても、バスで少し行けば電車も通っているし、バス通学の生徒も多かった。
バス停は学校から徒歩7〜8分の所に位置し、雪でバスか遅れたりすると、バス停から猛もうダッシュで学校に向かう生徒が、少し滑稽に見えていた。
僕は1年生の時から、自転車通学だ。
1年の冬までは、雨でもカッパを着て自転車で通学していたが、初めての冬で挫折してしまった。
今では、晴れの日は自転車通学。
雨や雪、ごくたまに寝坊した時なんかも、バスを利用している。
バスの近くには、古びた商店がある。
表には、たばこの文字が残っているが、現在は販売もしていないらしく、バス待ちや部活終わりの学生が、お菓子やパンを買っては食べている。
店のおばあちゃんは、レジ前に座り、僕たちを見てにこやかな表情を浮かべているが、冬には、奥のこたつに入っているため、
「おばちゃーん、お願いしまーす」
と、声をかけて購入するのが、決まりのようになっていた。
うちの学校には、学校の七不思議というものが存在する。よくある話だ。
大抵の学校には、この手の噂はよくあるし、特段気にも止めてはいなかった。
「真夜中に音楽室からピアノの音が聞こえる」とか「トイレの花子さん」「廊下を徘徊する人体模型」など。
その中に、他校には存在しないであろう、うちの学校ならではのものも存在する。
「秘密の扉を2人で同時に開けると、お互いに必要なものが見える」
というものだ。
「秘密の扉」とは、旧校舎2階の、理科準備室の扉のことらしい。
僕が入学前までは、選択科目授業などで旧校舎の教室を利用していたが、今はもっぱら物置きのような扱いになっている。
そう、この「秘密の扉」が、
ごく普通の僕を、ごく普通の日常を、
小さな奇跡へと導く事になるのだった。
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