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それって、駄目な選択のほうです  作者: 蔵前
蛇足1 伯爵は婚約したのにまだしていなかった、から
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結婚には苦難の道が続くようだ

 俺は自分の後援会長の妻に微笑んだ。


「ライラ。君がリディアの親族だったとは嬉しい限りだよ。私はこれまで以上に、優しいあなたと家族付き合いが出来ると言う事ですね。」


 俺は喋りながら、貴族院など辞めようかな、と不意に思った。

 自分が考えても思ってもいないことを、自分の口が社交辞令として勝手に吐くようになったのだ。

 小さな子供を抱える父親が、こんな信用の出来ない人間となっては駄目だろう。


「まあ、おほほ。アレン坊やはいつも通りの正直すぎる嘘吐き坊やね。簡単に嘘だってバレちゃうことしか言えないなんて!こ~んな人がリディアをどうやって誘惑できたのかしらね。」


 ライラ、俺だって傷つく心があるんだよ?

 俺が薄情な恩人を見下ろしていると、俺の胸は内蔵していた酸素をすべて吐き出すしかない衝撃を受けた。


「ぐふ。」


「もう!わたくしには挨拶も何もないのですの?」


 俺の胸を叩いて見せた黄色の綿菓子が、俺に謝るどころか怒って見せたのである。

 見返してよく見れば、その黄色の綿菓子だけはカツラではなく地毛であった。

 アイロンでこれでもかと縮れさせた髪の毛は、彼女が歳を重ねたがために色味を少し失って、金髪ではなく黄色味を帯びたクリーム色に見える。

 そしてその人の怒り顔には、俺の美しすぎる婚約者の面影があった。


「あなたに跪いて挨拶をせねばならないところ、このような案山子同然でしか挨拶できずにすいません。ネリーとライラの杖に私はされてしまいましたから。」


 リディアの母はふんと鼻を鳴らした。


「信じがたいわ!」

「信じ、あの?」


 リディアの母、デライヤ・カーネリアンは貴族にしては一目でわかるほどの怒った顔を俺に見せたが、その両目には涙らしきものが滲んでいた。


「わたくしが、実の娘の婚約を、あのへーディルカに教えてもらうことになるなんて!」


「え?」


 誰?そのへーディルカさん。

 俺はご意見番のピンクに視線を動かしたが、彼女は俺に呆れ顔を見せるだけだった。


「へーディルカをご存じないの?」

「まさか!ご存じないなんて!」


 水色まで同調してきやがった。

 俺は、彼女達に申し訳ありませんと頭を垂れると、リディアの母が教えてくれた。

 というか、叫んでくれた。


「あの憎たらしい、へーディルカ・ロザンナ伯爵夫人に後れを取るなんて!それも!我が娘のことで!」


 俺も心の中で畜生!だ。

 リディアの親父を探しに馬市場に出掛けて、ロザンナ伯爵にリディアの親父の居所を聞いてしまったばっかりに!

 ロザンナ伯爵も競走馬の産出で有名な家だったと、今さらに思い出した。

 家同士がライバルだったのか!

 道理で奴がリディアの親父の居場所を教えてくれなかった訳だ!

 馬の繁殖のために仲良くしておけよ!


「本日はこの可哀想なデライヤを慰める会ですのよ?」


 俺の右わきのピンクが貴婦人らしい物言いで俺を眇め見た。

 俺の左腕を胸に挟んでいる水色は、貴婦人らしくない物言いで直に俺を詰って来た。


「この鈍感坊やが!」

「ど、鈍感、ですって?」


「その通りよ!自分の娘の事を知らないと人前で揶揄われるなんて、母親としてこれ以上ない侮辱だと申しておるのです。ああ、可哀想なデライヤ。」


 それでは俺の腕から離れて、デライヤを慰めたらどうだ?

 俺はどうして伯爵なんだろうと思いながら、口には出せない台詞を飲み込むしかなかった。


 そして、俺は伯爵様だからこそ、伯爵らしく振舞った。

 胃に穴が開きそうだ、と思いながら。


 まずはライラの頬に口づけて微笑み、次にネリーの頬に口づけて微笑んだ。

 彼女達は貴婦人らしく、きゃあと嬌声を上げて自分の頬に両手を当てる動作に移ったので、俺の腕から剥がれてくれた。


 俺はそこですぐに跪き、傷心となったらしいリディアの母親に右手を差しだしたのである。


「あなたには私自身が、ちょくせつに、伝えねばと思い、こうして本日参りました。あなた様に報告が遅くなってしまった事、本当に申し訳ありません。」


 俺の手にデライヤの柔らかい指先がそっと乗った。

 泣き顔だった彼女は微笑んでおり、その笑顔は俺のリディアを彷彿とさせた。


「嬉しいわ。本日のパーティはあなたが主役ね。」

「え?」


 俺の両脇に再びピンクと水色がしがみ付き、呆然としている俺を無理矢理に立たせたのである。

 黄色の魔女は俺に悪辣な笑みを見せ、俺に対して高らかに声を上げた。


「ようこそいらっしゃいました!わたくしのお友達とのお茶会に!」


 彼女の真後ろ、エントランスホールから直接いけるダンスホールの両扉が開き、俺が社交界のパーティから足が遠のいた面々がそこに立っていた。


「おともだち……五十人はいますね?」


「へーディルカは呼んでおりませんから安心なさって。」


 間が悪い俺は、どうやら仮装アフタヌーンパーティ開催中に突撃してしまったがゆえに、このマッドパーティに強制参加させられるらしい。

 結婚、止めようかな?


思いついたので書いてしまいました。

本当に蛇足ですが、ヘタレなギャスケル伯爵がヘタレな所が大好きです。

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