そして二人で選択をした
私は自分の真下で転がる男をじっと見つめた。
私達が自由にできるは、私が女伯爵になるまで、なのだ。
「忘れていないからこそ、君に時間を、だ。家にも夫にも縛られない娘である自由な時間は、若い君には必要なのではないかな。」
私を見返す緑色の瞳は真剣だ。
私は私以上に私を思いやる男の鼻の頭にキスをした。
「でもあなた、大事な事をお忘れでいらっしゃいます。」
「何かな。」
「わたくしはいつだって自分の好きに生きますわよ?ってきゃあ!」
アレンが私の背中に両腕をまわし、私をぐしゃっと潰れるぐらいにして仰向けの自分に押し付けたのだ。
「確かに!ああそうだった。この憎たらしい女の子め!」
アレンは私を抱き締めて笑っているが、私達がべったりと全身をくっつけ合っている事に気が付いているのかしら。
薄い布一枚しか隔たりのない私達は、肌を合わせていると同じじゃないの!
私だけがほんの少し恥ずかしいと身をよじり、そのせいで私の股の間にアレンの膨らみを感じてしまった。
だが、そこで私は温かなそれに恥ずかしいと感じはしたが、嫌悪感を抱かなかった事に気が付いた。
恐怖心だって。
それどころか彼の体というベッドが、自分の為に作られたもののようにしか思えないほどに、心地よさと安心感を与えてくるのである。
もしかしたら、アレンとだったら私が屈辱と考える様な行為にならないのかも?
数多い既婚の小母が私に言った台詞何だったかしら。
侯爵夫人も侯爵も無い、生の二人になれる二人のベッドは素晴らしいものよ。
「ねえ、アレン!結婚すると夫と妻は同じベッドで寝る事になると聞いております。わたくしは毎日あなたをこうやって下敷きにしていいのかしら。」
「全く君は!いつだって俺を好きにしていいよ。愛のある結婚とはそういうものだ。だが、俺はもしかして、誰にも潰されないで眠れるという最後の自由の時間が欲しいかもしれないよ?」
「わかりましたわ。では、式は一年後にしましょう。わたくしはそういえばあの学園の教科書をとっても気に入っていたのですもの。勉強をして卒業はしたいわ。これでよろしくて?でも、卒業まで一年よ。あなたと離れ離れね。」
「そこは心配しなくて良い。俺もあの学園で教鞭を取るのは気に入っているんだ。意地悪な女学生にやり込められるたびに泣いてはいるんだが、どうも一日一度は彼女にやり込められないと落ち着かなくなってしまったようだ。」
私は憎たらしい講師に戻ったアレンを睨みつけ、それから彼を彼が望むようにやり込めてあげるために彼の唇に唇を重ねた。
彼が私に教え込んだ、舌を入れるキスという猛攻だ。
アレンは私の口の中で参ったと軽く笑い、ほんの少し唇が離れたその時、私を完全に参らせる言葉を呟いた。
「君に会えて良かった。」
彼が私に向ける緑色の瞳はあの日と変わらないぐらい透明で美しく、だが、あの日と違って事態が分からないという風に呆けてはいない。
全てを制していると自信に溢れた瞳をしていた。
「わたくしも、よ。」
今となってはあの時の顔も可愛いと思い出すから、あの日のようにあなたを蹴っ飛ばしてしまいたい気持ちにもなっちゃいましたけれども。
でも、本当にあなたに会えて良かった。
長々とお読みいただきありがとうございました。
なんだか劇的なハッピーエンドではなく、だらだらハッピーエンドとなってしまいました。
甘々って難しいですね。
2021/8/25 19:40
お読みいただいただけでなく、誤字脱字報告までして頂き、ありがとうございます。
誤字脱字どころか、文法的な、ここに単語を動かすと、というご指摘、感動しました。
読みにくい一文が、あら不思議、すんなりした文章になりました!
本当にお恥ずかしい事です。
ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございました。




