君に全てを捧げよう
朝のティールームでのキスは無理矢理だった。
今回だって私からなのだから攻勢的のはずなのに、キスは一人だけでは出来ないものだと唇が重なった時に気が付いた。
アレンは顔を傾け、体まで少し動かして、私達の唇が調度いい具合に重なるように仕向けてくれたのだ。
そして重なった唇は柔らかかった。
シュウより柔らかくもないが、シュウよりもずっと大きな唇はシュウよりも悪戯なものであった。
私の下唇をかるく吸った。
ジン、と私は背骨が痺れ、私はアレンの両手を掴んでいた。
その時に私の唇も少しだけ開いたから、ほんの少しだけ彼に唇を舐められた。
背骨は再びジンと痺れ、その痺れが尾てい骨の上ぐらいで弾けた感触だ。
私はどうしてアレンのキスに震えるのだろう。
私はまじまじとアレンを見つめ、すると、私にうっとりとした顔を見せていた彼はほんの少し寂しそうな表情に変えた。
「いや?」
私は彼の両手から手を離すと彼の顔を両手で挟み、もう一度彼に口づけて、そして、彼がしたようにして彼の唇をそっと舐めた。
馬は自分がして欲しい事を相手にしてくるものなのだ。
アレンはくすくすと笑い、わあ、私から腕を解いたと思ったら私を横抱きになるように私の向きを変え、また再び私の唇に口づけて来た!
左腕は私を支えているが、彼の右手は私のあごにそっと添えられている。
彼の唇を受けた唇は再び背骨に痺れを伝えたが、顎から首筋にそって添えられている彼の手の感触が違う震えを私に与えた。
ほうっと唇が開いた。
まあ!彼の舌が私に侵入してきた。
私は彼を撥ね退けるべき?
私の手はどこに行ったの?
彼の顔を挟んでいた手はどこに行ったの?
左手は柔らかな彼の髪を弄んでいた。
右手は?
彼の背中をまさぐっていた。
なんて躍動感のある筋肉が背中を飾っているのだろう。
私の口の中で笑い出したアレンは、私から唇を剥がした。
「君は本当に!いいよ、足も触っていいよ?どこもかしこも、君が触りたいところを触っていい。俺は君のものだ。そうだろう?」
そ、それは私も彼のもので、私も彼に全部をさらけ出すべき?
彼は再び唇を重ねたが、それは子供にするようなチュっというものだった。
「お、お終い?わたくしが同じようにいいと言わなかったから。」
まあ!アレンはなんと嬉しそうに笑うのだろう。
くすくす笑い出した彼は、そのうちの大笑いをし始め、どうしようとおろおろし始めた私を掬い上げると、私の体勢を再び変えた。
彼は地面に横になり、自分の上に私を乗せたのだ。
私は馬に乗るようにして彼の腰の上を跨いでおり、仰向けになった彼は私に笑顔だけを向けている。
「アレン?」
「好きに触って。俺は君に何もしない。」
「まあ!あなたは私に触らせるだけ、なの?」
彼の右手が上がり、その手は私の頭を撫で、頬を撫で、首筋に手を動かして、私の左肩から左腕を撫でおろしてから床に戻った。
「いやって言われなくて良かった。もっと色々君に触れたいけれど、それは君が俺を信頼してくれたら許してもらえる場所だと思う。だからさ、俺に触って俺を知って欲しい。俺を君に知って貰って信用して欲しいんだ。」
私は既に信頼していると彼に言うべきだったかもしれないが、アレンの体を好きに触る、というチャンスを堪能することを選んでしまった。
なんて自分勝手で自分本位。
それでも、彼の体を指先でなぞっている私に、彼は嫌がるどころか完全になすがままになってくれるではないか。
アレンはなんて自己犠牲精神のある、心の広い人なのだろう!




