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えろいせかい  作者: 優華
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異世界への誘い

 またやってしまった。


 俺の今の希望はこいつらだけだ。部屋の大きな本棚に雑然と置かれたエロ本。(汗牛充棟という言葉をここで使うのは先人たちを冒瀆しているのと同義だ)こいつらだけが俺をこの世に繋ぎとめる唯一の鎖なのだ。最近はエロ本も無用の長物となってきている。俺の理想に合致するものが見当たらない。こんな俺の心を満たすものは自らが作り出した幻想だけだ。


 惨めな命だ。何度自死を考えただろうか。何度踏みとどまっただろうか。一瞬の勇気が出ず、何度自嘲しただろうか。結局、唯一好きなエロというものに細やかな希望を感じることを脳に命令し、生きることへの活路を見出したことにしたのだ。


 やはり世界に必要なのはエロスだ。最近は禁欲や規制と性を抑える方向に世界はシフトしている。それは間違ってはいないだろうか。性欲は三大欲求の一つであり、これがないと我々人類はここまで繁栄しなかっただろう。これを禁ずるということは発展を諦めたのも同然であり、先人たちの営みを否定することになる。我々はエロスとともに歩んできた。人類の歴史はエロスの歴史なのである。


 しかし、俺が満足するには一つ大きな障壁があった。それが法である。

 古の時代続く人の歴史において社会的秩序を維持するために作り上げられてきたこいつは俺が満たされることを潔しとしない。すなわち、俺はこの世界では軽蔑されるべき人間なのだ。


 幼少の頃から性への欲望が溢れていた俺は常に同級生に恋をしてきた。そして同級生を歪んだ眼で見てきた。しかし、幸か不幸か俺には手を出す勇気がなかった。そして、欲求が満たされることなく大人になった。一段階ずつ進む学校教育、空白のままの記憶。それを埋めるために俺は虚構を好んだ。なぜなら実世界は法が許さないから。

 その歪んだ嗜好は様々な書物に触れ、さらに歪みねじれることとなる。


 要するに俺は超ドレッドノート級に歪んだ変態なのだ。


 御託はここまで。もう午前二時だ。夜も遅い。ぐだぐだせずに寝るとする。

 俺は部屋の隅に放置された万年床に横になり、肩まで布団を被る。俺は足先から肩まで掛布団に覆われていないと寝むれない性質なのだ。どうだ可愛いだろう、萌えただろう。夏は暑くて仕方ないのでどうにか治したいのだが、まあいい、今は秋だ。涼しくなってきて丁度よい。


 目を瞑り三十秒。目が冴えていることに気が付く。おかしい。すると眠たくなるはずなのだが、今日は駄目なようだ。酒は金輪際飲まないと決めた。眠剤はよくない。依存すると厄介だ。ならどうする?もう一回だ。俺は体を起き上がらせた。


 俺は己だけの空間を作り出す。絶対領域。一人暮らしで誰もいない部屋の静寂の中で、仮想空間を創りあげる。今日はどうしようか。うーむ。悩み。そうだ妖狐にしよう。この部屋に化けて出る。それがいい。


 今宵は満月。六畳間の窓は開け放たれ、カーテンは端で少し冷たい夜風に揺れている。月明かりが部屋中を無機質に照らす。まるで時が静止したかのよう。何もかもが動かない。動くのは自分だけ。部屋の真中で俺は座って窓の外を眺めている。ドッと風が吹き、止まった時を揺らす。部屋に一枚の葉が入ってくる。俺はその葉が顔に当りそうになり反射的に目を瞑る。


 目を開けた途端、見知らぬ少女がいた。年齢は12歳くらい。それもプールの着替えの時のように一枚の大きな布を纏った姿で。本当にいた。嘘じゃない。こちらを見て微笑を浮かべている。


「こんばんは」


 少女が話しかけてくる。困惑しながらも俺は挨拶を返す。物心ついた時から仕込まれてきたフローチャートはこんな時でも有効だ。


「いきなりですが、あなたに提案があります。」


 はぁ、本当にいきなりだな。


「やっぱり、いきなり過ぎましたか。ならば自己紹介と行きましょう。」


 鮮やかな流れから察するに、ここまではいつもの流れなんだろう。


「私は仲介者です。まあ真名は別にあるんですけどね。」


 極度の電波さんか、それとも中二病か。そもそも彼女はどこから現れた。瞬きほどの時間で目の前に現れたのだぞ。音もなかった。考え始めたらいろいろと不思議なことだらけだった。


 質問する。「君は何なんだ。」


 彼女は怒って「だから仲介者って言ってるじゃないですか。物わかりの悪い人ですね。名前とかどうだっていいんですよ。大声出しますよ。」


 自分勝手な奴め。いきなり部屋に入ってきたと思ったら、ピーチクパーチク喋りやがって。ちとはこっちの身になれっての。

 だが、通報はまずい。深夜の男の部屋に少女。それも布一枚の。布一枚?よく見たらとんでもなく際どい恰好をしてるじゃないか。童貞の俺には刺激が強すぎる。夢にまで見た少女の柔肌が眼前に!

 意識しはじめた体は素直だった。心臓は狂喜乱舞し、脳はイケない物質と信号を出し続けていた。体が沸き上がる。

 俺の変化に気づいたのか、彼女は挑発的な笑みで言う。


「顔が赤いですよ。大丈夫ですか。」


 俺は平常を取り繕い。


「俺は寝たい。さっさとしてくれ。」


「だからいきなり本題から入ろうとしたんですよ。自己矛盾に気づきました?」


 彼女はケラケラと嗤う。


「まあ、どうだっていいです。続きをしましょう。あなたに提案があります。」



「異世界に行ってみませんか?」

人に何かを伝えるのが下手なので、伝える練習です。内容はだいぶ巫山戯るつもりです。

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