織姫と彦星は出会えない
主人公の幼馴染は苦労している様です。
私は夏が大好き。人も動物も虫達もみんな生き生きしているから。
暑いのは苦手だけどそんな中で食べるアイスはすっごい美味しい!!だから夏が好き。
さて今は夏休み。学生達の生命力が桁違いに上がると予想されてたけど実際は長期の休みに飽きて暇なのでいつもと変わりません。
ですが私は違います!今日は幼馴染へサプライズを計画しているので今はそのための買い出し中です。
まずはロープ、これは定番ですね!!次に包丁、うちにあるやつはあまり綺麗じゃないので一応買っておきます!うーん、あとはトンカチ!!女の子のわたしには硬いものを拳で砕くなんてことは出来ません!!
さて、こんなもんかな。
「やあ、何してるの?」
この声、まずい。やっぱり、私の幼馴染だ。
なんか喋ってるけど焦りすぎて全然頭に入ってこない、やばいやばいサプライズがバレるわけにはいかない。
「そっか、じゃあ邪魔しちゃったね。じゃあねまた学校で。研究結果楽しみにしてるよ。」
はぁ...去っていった。何とか乗り切った、変なこと言ってなかったかな?この服変じゃなかったかな?ああーもうこんな事ならもっとオシャレしてくればよかった。私服見られることなんてもう来ないかもしれないのに...
ふぅ...結構出来てきた。時間は...まだ間に合うかな。
サプライズ、喜んでくれるかな?急に呼ばれたら嫌がるかな?用事があったりしないかな?
んふっもしかしたら飛び跳ねて喜ぶかも!!もぅしょーがないなー、そんなに嬉しいなら気合を入れて準備してあげましょう!!
.....よしっ、彼の家まで来たけど...
玄関から入るとおばさん達に見つかっちゃうかもしれないから避けたほうがいいよね。
うーんだったら...そうだ!窓から入っちゃえばいいや。彼の部屋二階だから私でも行けるし。
コンコンとノックの音が響いた、想像してたより大きい音なのでびっくりしたけど反応が無かったからセーフ!
....?て言うか彼起きてこないな。いつもなら寝てても起きてくれて出てきてくれるのに。熟睡してんのかな?まずいな。
....?あれっ?空いてる?開けてくれたのかな?
「...おーい、いるー?」
返事がない、しょうがないこうなったら直接起こそう。
「入るよー?」
カーテンを退かして部屋の中を見た。そこには椅子を倒し、焦った様な顔をしている幼馴染がいた。
「....そっか....間に合わなかったんだ」
私は昔自分の手で人生を終えようとしたことがある。しようとしたというか考えてた時期があった。
別にいじめられてたとか、親から虐待されたとかじゃない。
ただの思春期特有の物事を重く考えすぎてしまう時期だ。私はその時期に耐えられなかった。
高校生の思春期の女子が親に相談出来るはずもなく友達にも病んでいると思われたくないから話せずにいた。今思えば下らない理由だけど。
私は迷惑をかけまいと森の奥に歩いていった。暗い森。でも鈴虫が沢山いてみんな歌ってる、そして私たちの上には沢山の星達が踊っている。
だから寂しさはない。そして何よりその鈴虫達の中に紛れて静かに上を見上げながら座っている彼、私の幼馴染がいた。
「何してるの?」
彼はびっくりした様子でこちらに振り向いた。
「っ!?はぁ、びっくりしたー!」
「ごめんごめん。で、何してるの?」
「星を見てるんだよ」
「星...?あぁ綺麗だもんね。いつもここにいるの?」
「いつも?いいや、たまにだよ。考え事したく無い時とかにここに来て何も考えない様にしてるんだ」
意外だ彼は頭も良いし友達も多いから悩みなんて無いと思ってた。
「意外だね、君頭いいからなんでも解決できると思ってた」
「あはは、何それ?無理無理。少年名探偵じゃ無いんだからそんなことできないよ」
「あはは...。ねぇ...実は私消えようと思うんだ」
「...分かってたかも」
「なんで分かったの?」
「こんな夜中にしかも森の奥に来る人なんて迷子の人か自殺しに行く人ぐらいだよ」
「じゃあ君はどっち?」
「僕は...ずるいかもだけど、どっちでも無いよ。ただ星を見にきてるだけの変態さ。」
「....私も星を見てたら悩み消えるかな?」
「そうだね....だったら星を見ながら僕と将来について話そう。それで悩みが消えるかは分からないけど気分を紛らわせるにはちょうど良いんじゃ無いかな。」
私は彼の提案に乗った。それから私たちは夜な夜な会って話をした。
最初は将来の不安について話した、いくら言っても言い足りないくらいの悩みを話したけど彼は嫌な顔せずに聴いてくれた。
彼はずっと私の話をいっぱい聞いてくれる、しばらくしたらもう話せるほどの悩みもなくなった。それを彼に話したら...
「だったら、次は将来楽しみにしてることを聞かせてよ。その次は今までの楽しかったことを話そう」
と言った。対して面白くも無い、ただ感じたことを話しているだけなのに彼は楽しそうに聞いてくれる。それが嬉しくなった。
その時間が楽しみになった。次は何を話そうかと考える様になった。
いずれまた楽しかった話も無くなってしまう、そうなったら彼と話す時間も無くなってしまう。そんなのは嫌だから必死に楽しいことを探した、ずっと、毎日探していた。
そしてだんだん小さなことが楽しくなってきた、宿題をしてる時間や友達と喧嘩した時間でさえも楽しく感じた。
彼のおかげで私の人生は楽しくなった。彼のおかげで私は死なずに済んだ。だからこの恩を返そうと思った。彼にも幸せになってほしいから。
彼が思い悩まない様に苦労することがない様に。彼の人生も楽しいものになって欲しい。だから私は色々考えた。
彼の両親が原因ならその両親を殺そうと思ったけどそうじゃ無いみたい。だったら彼の友達が原因なら1人残さず殺そうと思ったけどそうでも無いみたい。
「うーん、難しいなぁー。彼を悩ませるものってなんだろう?」
そうやって考えていくうちになんとなく分かってきた。彼は頭がいいだから先を考えすぎてしまうのだろう。
だから彼を悩ませているのは彼の未来だ。なーんだそうなれば後は簡単だ....彼を殺せばいいんだ...。
簡単な話だった彼が彼自身の未来に苦しまされているのなら私が彼の未来を潰す。そうしたら彼は苦しまずに済む。
だったら準備しないと、彼を助ける為なら何でも出来るけど殺すときに苦しそうな顔は見たく無いからね。準備は大切です!!
決行日は....そうだなぁ、あっ彼の誕生日にしよう!!サプライズ風に殺せば彼も楽しく死ねるかも!
......そっか、あの準備も全部無駄だったんだ。そうだよね君は頭がいいから私よりも先に気づいたのかな?
.....そっか....。いや、だめだよねこんなんじゃ。君は私に人生の楽しさを気付かせてくれた、君からもらったこの幸せを壊しちゃ悪いよね。
........よし!君は星が好きだったよね。だから私が星になって貴方に好きになってもらおう!そうしよう!
「はぁぁ楽しみー」
数日後、町の住人の中で明るい男子高校生と女子高校生の2人が行方不明になったと言う話題で持ちきりになったという。
ラストで何とかハッピーエンドへ展開出来ないかなと苦労してたけど結局無理だったよ(^ー^)