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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幼なじみザマァが流行っていると聞きましたけれど

作者: 空静



「ねえ、悠斗。絶縁しない?」


朝一、私は幼なじみの悠斗にこう言った。

理由は単純、こいつの相手をするのに疲れたから。


朝早くから起きて忙しいおじさんおばさんの代わりにお弁当を作ってあげ、休日だって家に行き悠斗の部屋の掃除をし、お昼ご飯を作ってやり。まるで家政婦。疲れた。


悠斗は超高スペックだ。基本(・・)優しいし運動神経もいいし顔もいい。そこそこの人数の女子はこいつに惚れているのではなかろうか。


けれど、私を雑に扱っていい理由にはなりませんよね…?という不満もあるわけで。常日頃いろいろやってあげても感謝は一切なし。

こいつは他人には優しいのに私にはそれが適用されない。


かつて抱いていた恋心は綺麗さっぱり消えて無くなった。おじさんとおばさんには申し訳ないけどもう面倒見切れない。


「実は俺もお前と縁切りたかったんだ。最近彼女面してきて面倒だったし。じゃあな」


…彼女面って。


そうして私たちは絶縁した。




***




「おはよう明菜。あれ、今日は田辺くん一緒じゃないの?」


教室に入るとクラスのイケメン女子、かおるが話しかけてきた。

この反応からもわかるように基本私たちはニコイチで見られている感がある。付き合ってもいないのに(告白してないからね)毎日一緒に登校しているわけだし。


「おはよー、かおる。悠斗とは絶縁した」

「…どっちから?」

「あっちから」

「…田辺くん生きていける?」

「無理だと思う」


だって悠斗は阿呆だから。私のありがたさをわかっていない。




***




「明菜、昼ごはん…っと、絶縁したんだった」


4時間目が終わった昼休み。俺はいつものように明菜にお弁当をもらいに行こうとしたけれど朝の出来事を思い出す。

最近明菜は鬱陶しいんだ。付き合ってもいないのに彼女面してあれこれやろうとする。拘束してきて重いから思い切って今朝絶縁した。

昼飯は別に弁当である必要はないんだ。と財布を持って購買に向かう。


「あれ?悠斗先輩今日こっちなんですか?」

「うん、明菜とは絶縁したしね」

「えっ…?明菜先輩と…」


名前と知らない後輩の女子が話しかけてきたから笑顔で答えてやるとものすごくびっくりした顔をしていた。


「だから今フリーなんだ、彼女募集中ってね」

「へ、へぇ…そうなんですね…」


じゃあ失礼します、とそそくさと去っていった。

なんでだろう…?と不思議がっているとクラスメイトが話しかけてきた。


「お前、こんな時間に何しにきたわけ?」

「こんな時間ってまだ昼休み始まって10分も経ってないじゃないか。見てわかるだろ、昼飯買いに来たんだよ」

「は…?売り切れてるに決まってるだろ。うちの学校の購買部って言ったらまさしく奪い合い、廊下ダッシュしても間に合わないレベルだぞ」


あ、俺のはやらねぇから。ドンマイ今日は昼抜きだなと笑っているクラスメイトに腹が立った。


「くそっ」


明菜だって、そうなら早く言えよ。ふざけるな。

俺は怒りに震えた。





そんな日が何日も続いた。

1週間経った頃。明菜が俺の席をちらちら見ているのに気がついた。

なんだ、明菜も俺と縁を戻したがっているのか。

けれど自分から絶縁したいと言ったから元に戻そうなんて言いづらいと。


しかたない、俺の方から言ってやろう。


放課後、言ってやることにした。



***




「明菜…絶縁はなしにしないか?お互い不幸になるだけだ、前みたいに一緒にいてやるから、らな?」


教室で待ち人を待っていると、突然悠斗が話しかけてきた。

1週間、私なしで暮らしてみて大変だってことに気が付いたらしい。

もしここで「わかった、いいよ」だなんて言ったら元の悠斗の家政婦生活に逆戻りだ。

ていうか、絶縁なんじゃないのか。絶縁したから他人なんじゃないのか。馴れ馴れしくないか、とイライラしてきた。


「田辺さん、話しかけないでもらってもいいですか…?私たちは他人(・・)なんですし突然馴れ馴れしく話されても困ります」

「はあ…?何言ってんだ?お前」


きょとんとされた。何言ってんのはこっちのセリフだ。

イライラゲージがどんどん高まっていく。

あーもう、我慢できないと爆発寸前の時、待ち人はようやく現れた。


「明菜!ごめん、お待たせ。帰ろ」

「かおる!大丈夫、ちょっとめんどくさい人に絡まれてただけだから」

「え…?ああ、田辺くんか。うちの彼女に手を出さないでもらってもいいですか…?」

「彼女…?どういうことだよ、かおるさんって女じゃないか!」

「だから何…?性別とか関係なくない?付き合ってもいないのに尽くしてあげてたのに感謝も何もない誰かと違ってかおるは私のことを大切にしてくれるし」

「ちょっと恥ずかしいんだけど…」


そう、私はかおると付き合い始めていた。

絶縁宣言したあの日、告白されたのだ。「ずっと前から好きだったけど明菜は悠斗と付き合っているものだと思っていたからね」と言われて必死に否定したものだ。


「じゃあね、悠斗」


その後、二度と悠斗と話すことはなかった。


明菜は悠斗がモテてると思っていましたが、観賞用としか思われていませんでした。明菜が酷使されていたとは知らなかったけれど明菜を雑に扱っているのは有名だったので「あいつ、顔はいいけど性格クズだよね」と思われていました。

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