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セピアからカラフルへかわるとき~ある転生者の独白~

作者: まえらんど

 私の名は、ゼン=ホウ。転生者だ。旧姓、幸島善邦という。

 この世界に勇者召喚されたが、私には他の二人のように剣や魔法の才能もチート能力もなかった。一般人として召喚されたのだ。

 とりあえず、剣の訓練を受けたが、さして上達することなく勇者としてではなく一般の兵士として軍隊で生活した。

 二人の勇者は、魔王軍討伐に向け実績を重ねていた。私は、他の兵士と同様に魔獣から町や村を守る一般兵として過ごした。

 二人の勇者が魔王軍を撃退しとりあえず王国に平和が訪れた。

 私にも特別恩賞金が支払われた為、田舎の村に土地を買い農業を始めた。

 私一人が生活出来るだけのこじんまりとした農場だったが、気のよい村人に囲まれ穏やかな日々をおくっている。

 二人の勇者は、貴族並みの生活をしているが、まあこんなもんだろ。



「やっぱ、異世界転移っていったら、ハーレムだよな」


 髪をかきあげ熱く語る魔法使いの勇者。


彼は魔王討伐後、3人の嫁をめとった。1人は貴族の娘らしい。羨ましい限りだ。


「せっかく特別な力を与えられたのだから、成り上がりてえな」


 拳で胸を叩き気合いを入れる剣の勇者。


 彼は、軍事部門最高の永世大将軍までのぼりつめた。武技で彼に勝るものはいないらしい。大したもんだ。


 私はこんなだが、同郷のものが活躍するのは喜ばしいものだ。


 私の一日は、教会での御祈りで始まる。


 教会と呼ぶにはいささかこじんまりとしている。牧師様は在中しておらず、週に一度近くの街から派遣されてくる。

 庭をホウキで掃くのが毎日の日課だ。

 なんの取り柄もなく異世界からきた私が、こうやって生きてられるのも女神様のおかげだと感謝している。

 せめてものお返しに教会をきれいにしておきたい。

 まあ、一日気持ちよく過ごせるという、ご利益があるからかもしれないが。

  

 産みたての鶏の卵と、畑からレタスを一つとってくる。

 卵を半熟に焼きレタスの上にのせドレッシングをかける。

 作りおきのパンに火を通して、朝食が完成する。

 たまに、牛肉の塩漬けとかが加わるが基本はこんな感じだ。

 朝食を、終えたら牧場の仕事が始まる。

 掃除、餌やり、牛の乳絞り。

 

 私の収入源は牛の乳だ。

 出来がいいと評判で、多少高い値がついている。

 特にこれといった秘訣はないので、女神様のご利益だったのだろう。


牛の世話をして、畑を耕す。毎日同じことの繰り返したが、穏やかな毎日を過ごせて満足している。


 唯一の娯楽は、店にひとつしかない雑貨屋で村人たちと飲むコーヒーだ。隠し味に牛の乳を混ぜて飲むと更に味が良くなると評判だ。

 自分が誉められたような幸せな気分になったものだ。

 週に一度届く情報紙を読みながら、コーヒーをすする。

この村で一番の贅沢だ。

 店は、私より少し年上の女性が一人で店を切り盛りしていた。

 彼女は、美人と言うわけではないが、いつも笑っている素敵な女性だった。華奢な身体なのにいつも忙しく働いていた。

 彼女の旦那は元私の上司だった。私がここに住み着いたのも、彼の遺品を届る為に訪れたのが縁であった。

 死に際に、家族を頼むと言われたが何をしてよいかわからなかったので、とりあえず同じ村に住んで見守る事にした。よくしてくれた上司に何か恩返しをしたいという気持ちもあったからだ。

 彼女は3歳になる息子と二人で暮らしていた。

 なかなか愛嬌のある奴で、無口な私にもなついていた。

 生まれてすぐ、父親と別れたせいか寂しがってはいない。むしろ、自分が母親を守らなくちゃいけないんだと子供心に思っているらしい。大したもんだ。


 この村の一番の収入源は葡萄酒で、秋になると、村総出で葡萄の収穫をした。


 雑貨屋の女店主と同じ班になり、そのあとの収穫祭も一緒に過ごした。


 食事を作ってくれたり、町へ買い出しに行ったり同じ時間を共有するようになった。一緒に過ごすのが普通になり、いつの間にか同じ家で暮らすようになった。


 セピア色だった私の世界が色づいていた。

 やっと、自分の居場所を見つけたのだ。



 しばらくして、雑貨屋のメニューに『ミルクコーヒー』が加わったのは言うまでもない。





 今日も、素晴らしい一日になりますように。

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