表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
410/496

12-03 新装備開発

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 『水の妖精(ナーイアス)』のクレーネーに助言をもらったハカセは、工房に籠もって何かを作り始めた。

 アーレン・ブルーは『(ドレイク)の骨の粉』を添加した素材を使い、『魔力庫(マギタンク)』『魔力充填装置(マギチャージャー)』『魔力変換機(マギコンバーター)』『外魔素取得機(マナインポーター)』を作っている。


「まずは『ALOUETTE(アルエット)』、次は『レイブン改』に搭載しましょう」


 そうすれば、稼働可能時間が延びるだけでなく、パワーもアップするはず、というわけだ。

 ハカセの『霧の中での視界確保』と合わせれば、より多くの『(ドレイク)の骨』を持ち帰れるだろう。


*   *   *


 途中で2回ほど、食事をさせるためハカセを強引に食堂へ引っ張っていったが、1日ほどでハカセの魔導具は完成した。

 その半日前にアーレンの『魔力庫(マギタンク)』『魔力充填装置(マギチャージャー)』『魔力変換機(マギコンバーター)』『外魔素取得機(マナインポーター)』も完成し、現在『ALOUETTE(アルエット)』への換装を終えている。


「いやあ、難しかったよ」


 と言いながらも嬉しそうなハカセである。

 形状はまさかの『暗視ゴーグル』風である。


「試してみたいけど、霧が出ていないと無理だねえ」

「じゃあ風呂場を使えばいいんじゃないですか?」

「ああ、その手があったね。ゴロー、ありがとうよ」


 寒い風呂場にお湯を撒けば湯気でもうもうとなる。

 その湯気をものともせずに見通せれば成功というわけだ。

 準備は5分で整い、実験結果は……。


「成功だよ!」

「よく見えますね」

「これはすごいなあ」


 代わる代わる『霧の中ゴーグル』を付けてみて、その効果に驚くゴローたちであった。


*   *   *


 さてティルダは、工房で作業をしていた。

 『(ドレイク)の骨』でカメオ……厚い貝殻、大理石、瑪瑙などに浮き彫りをほどこした工芸品である。

 象牙も使われるので、『(ドレイク)の骨』が使われてもおかしくはない。


 『加工結界機(クラフトゾーンナー)』を作動させておき、鋼鉄のタガネやヤスリで彫刻し、形を整えていく。


 そんな時、背後から声がした。


「ほうほう、熱心なお嬢さんじゃ」

「え!?」


 ティルダが振り向くと、赤い三角帽子を被った、小柄な老人が立っていた。

 身長は15セル(cm)くらい、白くて長い顎髭あごひげを生やしている。

 その姿はまるで……。


「あ、あ、あの、おじいさんは……グ、『地の精(グノメ)』なのです!?」

「おお、正解じゃ。賢い、賢い」


 『地の精(グノメ)』はほっほっほと笑った。

 そしてぴょんと作業台に飛び乗る。


「ここはいい場所じゃ。大地の力も潤沢じゃしな」


 と、真面目な顔になり、告げた。


「『火の精(サラマンドラ)』の奴が火床に『分体(わけみ)』を置いていったので、わしもちょっとだけ手をかそうと思ってのう」

「え……!」

「お嬢ちゃんはドワーフ族じゃから、儂らや火の連中と相性がいい」


 火の連中、というのは『火の精(サラマンドラ)』のことかな、とティルダは思いながら、『地の精(グノメ)』の話に耳を傾ける。


「ということで、わしからお嬢ちゃんへの贈り物じゃ」

「え? え?」

「ちょっと頭をお出し」

「は……はいなのです」


 ティルダはかがんで頭を差し出した。


いとし子に、大地の祝福を。……では、の」

「あ……」


 『地の精(グノメ)』は作業台からぴょんと飛び降りた。

 そして、


「儂らも、大地がある限りどこにでもおる」


 と告げると、床に溶けるようにして姿を消したのである。


「あ、あわわわ……」


 今のが夢ではないかと頬をつねってみるティルダ。


「痛いのです……夢じゃないのです……」


 とりあえず、ハカセやゴローたちに報告しようと工房を出るティルダであった。


*   *   *


 ちょうど夕食の時間だったので、その席で説明を行ったティルダ。


「ええ? 『地の精(グノメ)』に会った!?」

「はいなのです」


 食堂で皆に話すと、全員がびっくりした。


「はあ……会ってみたかったねえ……」

「ハカセ、大地がある限りどこにでもいらっしゃるそうですから……」

「うん、次の機会に期待しようかね。……で、もらった加護ってどんなものなんだい?」

「ええと……まだよくわからないのですが、『石の声』っていうのです」

「石の声?」

「はいです。ええと、鉱石の種類や加工法、鉱脈のがわかるようになる……らしいのです」

「ほほう……それは、重宝しそうな加護だねえ……」


 鉱石の種類や加工法がわかるというのは、特に職人であるティルダは重宝するだろう。

 そして鉱脈のがわかるというのも、間接的にではあるが非常にありがたい。


「あの、それで、ちょっと試してみたら、ここの地下に『金剛石』が少しですがあるみたいなのです」

「へえ……いろいろな鉱石が採れるけど、『金剛石』はないと思っていたんだよねえ。ティルダ、ありがとうよ」

「はいなのです」


 こうして、また1つ、新たな力が増えた、と言えよう。


*   *   *


「それじゃあ明日、もう一度『ALOUETTE(アルエット)』で『(ドレイク)の骨』を集めに行く、でいいね?」

「はい、ハカセ」

「行くのはゴローとサナ、フランクに頼むよ」


 人数を減らしたのは、積載量を増やすためと、『二酸化炭素』の心配があるからだ。

 前回、『(ドレイク)の骨』があった場所は、二酸化炭素濃度が非常に高かったのである。

 その点、人間ではないゴローとサナ、フランクなら大丈夫というわけだ。

 ちなみに『霧の中ゴーグル』は3人分が完成しているので、ちょうどよかった。


「わかりました」

「ゴローさん、『ALOUETTE(アルエット)』の性能は1.5倍くらいになっていますから、そのつもりで」

「ああ、そうだな。わかったよ」


 天候が安定しているうちに、ということで、夜のうちに出発することにした。


「行ってきます」

「気を付けて行っておいで。無理だけはするんじゃないよ」

「はい、ハカセ」


 そしてゴローとサナ、フランクを乗せた『ALOUETTE(アルエット)』は夜空へと飛び立ったのである。


*   *   *


 『カイラス山』の方角はフランクが正確に記憶してくれているので、道中に苦労はなかった。

 性能アップした『ALOUETTE(アルエット)』で昼夜兼行で飛んだ結果、翌日の午後の早い時間には『カイラス山』に到着できたのである。


「相変わらず雲に覆われているなあ」

「うん」

「じゃあここから『霧の中ゴーグル』を付けて雲の中へ入ろう。……フランク、念のためゆっくり突入してくれ」

「了解」


 3人は『霧の中ゴーグル』を装着した。


「おお、よく見える」


 ここの雲の中でも遠くを見通すことができた。


「さすが、ハカセ」

「うん」

「山頂まで見えますね」

「お、フランクには見えているのか。なら、頼む」

「はい」


 『カイラス山』山頂の端にある爆裂火口、その底に『ドレイクの墓場』がある。

 霧を見通すことができる今、『ALOUETTE(アルエット)』ならひとっ飛びであった。


「あそこだ」

「うん、間違いない」

「……そういえば、瀕死ひんし(ドレイク)がいたはずだが、どうしたろう?」

「ゴロー、あれじゃない?」

「うん? ……ああ、あれかも」


 『ドレイクの墓場』の隅に、巨大なモノが横たわっていた。


「もう動いていないな」

「うん。でも、油断は禁物」

「そうだな。……骨を集めるなら、できるだけ離れた場所のものを集めよう」


 そういうことになった。


*   *   *


 『ALOUETTE(アルエット)』は、『(ドレイク)の遺骸(?)』からできるだけ離れた場所に待機。

 フランクが残り、いつでも発進できるようにしておく。

 ゴローとサナは集められる限りの『(ドレイク)の骨』を集める。

 十分に集め終わったらすみやかに帰還。


 という計画である。

 『(ドレイク)の骨』は、それこそ『山のように』あるので、集めるのに苦労はしない。

 おそらく何百頭という『(ドレイク)』がここで骨になっていったのだろう。


「『ALOUETTE(アルエット)』に積めるだけ積んでいこう」

「うん」


 ゴローとサナはせっせと骨を拾い集めていく。

 大きすぎる骨はゴローのナイフで切り分け、小さいものは束ねて。


 30分ほどで、前回の4倍くらいの量が集まった。


「この辺が限界だな」

「うん」


 それでも『(ドレイク)の骨』は減ったように見えない。

 前回と今回で集めた分は、総量の100分の1にもなっていないようである。

 それはそうだろう、1頭分の骨は1トム(トン)くらいもあり、それが数百頭分たまっているのだ。

 ゴローたちが1トム(トン)分を回収したとしても、1パーセントにも達していないということになる。


「さっそく来ましたね、ゴロー」

「うわっ! ……『火の精(サラマンドラ)』さん……」

「ふふ、そんなに驚かなくてもいいのですよ」


 そうは言っても、気配も感じさせず、いきなり後ろから声を掛けられたら、ゴローでなくても驚くと思うわけで。


「え、ええと、また骨をいただきにきました」

「いいのですよ。好きなだけお持ちなさいな。……それにしても、あなたのお仲間は有能ですね」


 この霧の中を見通す魔導具の開発をしたことを、『火の精(サラマンドラ)』は称賛した。


「物質に依存している生命体だからこその手段なんでしょうね」

「あの、また集めに来ても、いい、ですか……?」

「構いませんよ。あなた方が有益に使ってあげてください。そのための最低限のすべはもう持っているようですしね」

「あ、はい。……ティルダが『分体(わけみ)』をありがたがってました」

「ふふ、知ってますよ。あれもまた『私』の一部なんですから」

「そうでしたね」

「それに『地の精(グノメ)』もその子を気に入ったようですし」

「ええ、そうなんですよ」

「そのうち『風の精(シルフ)』や『水の精(ウンディーネ)』も会いに行くかもしれませんね」

「だったら嬉しいですね」

「うふふ、ゴロー、サナ、あなたたちはそのまま、変わらないでいてくださいね。では、またね」


 『火の精(サラマンドラ)』は消えた。


「……ゴロー、帰ろう」

「ああ、そうだな」


 ゴローとサナは『ALOUETTE(アルエット)』に乗り込み、研究所へと戻っていったのだった。

 お読みいただきありがとうございます。


 次回更新は1月18日(木)14:00の予定です。


 20240111 修正

(誤)そうは言っても、気配も感じせず、いきなり後ろから声を掛けられたら

(正)そうは言っても、気配も感じさせず、いきなり後ろから声を掛けられたら


 20240112 修正

(誤)『カイラス山』の方角はフランクが正確に記憶していくれているので、道中に苦労はなかった。

(正)『カイラス山』の方角はフランクが正確に記憶してくれているので、道中に苦労はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >アーレン・ブルーは『竜(ドレイク)の骨の粉』を添加した素材を使い、『魔力庫(マギタンク)』『魔力充填装置(マギチャージャー)』『魔力変換機(マギコンバーター)』『外魔素取得機(マナインポー…
[一言] ゴロー達、今年も宜しくお願いしますね。 世話になっている火の精に何かささやかなお礼をしてあげて下さい。
[一言] > アーレン・ブルーは『竜ドレイクの骨の粉』を添加した素材を使い、『魔力庫マギタンク』『魔力充填装置マギチャージャー』『魔力変換機マギコンバーター』『外魔素取得機マナインポーター』を作ってい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ