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タロットカードの導き~愚者は死神と共に世界を目指す~  作者: 蒼井茜


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トラブル

「なぁ……レムレスとドストは同盟国だよな」


「あぁ、ここ100年互いに牽制すらしない程の友好国だ」


「ならこれはなんだ」


 国境線を超えて数日の事だった。

 ナルたち一行の前に突如として軍隊が立ちふさがったのである。


「我々はドスト帝国軍混成部隊! 貴様らをレムレス皇国の間者と認定して捕殺するよう命令が下されている! 」


 何があったのか尋ねようとした矢先の出来事、リオネット達は口を開けて何を言うべきかと考えながらも並行するしかなかった。

 捕縛、というのであれば何かしらの事情を抱えているのではないかと考える事もできた。

 しかし相手が口にしたのは捕殺、殺しても構わないという内容どころか、積極的に殺せという命令だというのだ。

 当然のことながらナルもリオネットも、このような状況に追い込まれるようなことをした覚えはない。


「グリム、おまえこの国に何かした? 」


「……覚え、ない」


「だよなぁ……じゃあどういう事なんだろうな」


 馬車から降りたナルとグリム、そしていざという時は逃げられるようにと嘶く馬をなだめるリオネットは軍隊を前に呆然とするしかなかった。


「くそっ」


 その隙をつかれたという訳ではない。

 宣言が完了した以上問答は無用と雨のように降り注ぐ矢の対処に迫られたのだ。

 リオネットは早々に屋の範囲外へと逃走、その事に対してナルは文句を言うどころか称賛を送る。

 馬車そのものが壊れた場合はまだいい。

 持てるだけの荷物を抱えての旅となるが馬が生き延びていればそれだけで旅の難易度が変わるからだ。

 しかし馬が死ねば、あとに残るのは牽き手のいない馬車である。

 旅の内容はレムレス皇国に到達する前と変わらないものになる。


 それは現在位置から考えると非常に面倒な事態を招きかねない。

 軍隊を展開し、3人を相手としているという不可思議な状況だがそれでもこれはある種の戦争だ。

 それができるだけの場所というのは近隣に村や街が存在しないという意味も含んでいる。

 砦のようなものはあるかもしれないが、少なくとも他国の人間や一般人が入れるような場所ではない。

 何よりリオネットの鎧、これを捨てない限り一目でレムレス皇国の人間だとばれてしまう。

 当初レムレス皇国の皇帝は親書と共に使者としての意味を込めてリオネットをナルに同行させたが、今回に至ってはそれが裏目に出ていた。


「グリム! 」


「任せて」


 一方矢の雨にさらされたナルとグリム、事ここに至ってはナルは無力だ。

 最悪の場合急所さえ守れれば十分ともいえるが、その正体が不老不死とばれるのは非常にマズい事態を招きかねない。

 そこでグリムに矢を切り落とすように頼んだのだった。

 戦場を渡り歩いた数という点で見ればナルはグリムよりも多い。


 しかし質に至ってはどうか。

 圧倒的にグリムの方が上であり、この手の危機的状況を乗り切れるだけの実力があった。

 それを信じて託したナルと、それを見抜いたグリムのチームワークは完璧とも言えた。

 即座に【力】のカードを発動させ、腰を落として地面を踏みしめたナル。


 その肩によじ登ったグリムは直撃するコースの矢だけを的確に切り落としていった。

 第二射、三射と同様に切り抜けた二人は覚悟を決める。

 人を殺す覚悟だ。


「グリム、リオネットの護衛を頼む」


「……なんで」


 それは怒りを込めた言葉だった。

 グリムは人を殺すという事に強いトラウマを持っている。

 しかしそれを気遣われて、戦力外扱いされることをそのまま良しとする性格でもない。

 その不満がナルにぶつけられたのだ。


「危ないカードにも慣れておかないといけないからな……実験も込みで」


「……あの時の? 」


「あぁ、あれは本当にマズいカードだからいざという時は俺の首を切り落とすか、心臓か脳を潰してくれ」


「……わかった」


「すまんな」


 酷な事を頼んだと自覚のあるナルだったが、最終的に暴走という可能性がある以上ここは譲れなかった。

 リオネットには荷が重すぎるというのも理由の一つではある。


「じゃあ、いくぞ……デビル! 」


 心の中で、きっかけとなる言葉に連動させて引き金を引く。

 【悪魔】ならばデビル、【力】ならストレングス、【隠者】ならインビジブル、【月】ならルナとそれぞれに呼称を用意し、とっさにカードを切り替えなければいけない時などに連想しやすいようにと考えての物だった。


「っ……」


 半月以上戦闘を経験していなかったせいもあって、ナルは自分の感覚が鈍っていたと実感することになる。

 発動させた【悪魔】のカードの持つ意味は暴走であり、その名の通り理性を食い破らんとナルの心中で暴れまわる。

 その反面あらゆる力を100倍まで引き上げる事ができるため短期決戦に向いたカードだった。


「死んでも恨むんじゃねえぞ! 」


 以前マギカという少女を相手にした際は手加減できるだけの余裕があった。

 しかし今は、ざっと見た限りでも500人はいるだろうと数えるのを止めて作業に取り掛かった。

 急所を外し、できる限り足などを狙うようにして攻撃を繰り出すナル。

 たった一人に翻弄されているという事実に、さらに混乱の波を広げる帝国軍。

 まさしく蹂躙だった。

 そして当初予定していた実験の一つをむしばまれる意識の中で取りやめて、ある程度数を減らした所で【悪魔】を解除して【力】、膂力に限り10倍まで引き上げる持久戦向きのカードに切り替えて7割の帝国軍を蹴散らしたナルは後は消化試合とばかりに煙草に火をつけたのだった。


 事実残りの兵士達は委縮して戦闘どころではないと言った様子を見せている。

 完全に降伏している者までいる始末だ。

 強かなのか馬鹿なのか判断が難しいところでは死んだふりをしている兵士までいた。


「さて、と。お話聞かせてもらおうかね……」


 そう言いながらナルは先ほど捕殺命令について語った兵士を探し、そして運が悪かったのだろう。

 首があらぬ方向に曲がった元人間を見つけたのだった。


「こりゃ……逃げた方がいいな」


 そう言いレムレス皇国への道のりを逃げ帰ったナル達は追撃がないことに胸を撫でおろしながら今後どうするべきかという話し合いをしていた。


「……やはりこの程度では無意味か」


 縄を巻き付けた男の存在に気付くことなく。

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