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タロットカードの導き~愚者は死神と共に世界を目指す~  作者: 蒼井茜


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占い

「あーお二方にご連絡だ、十日後王都へ向かう事が決まったらしいぞ」


 翌朝目を覚ましたグリムとナルにそう告げたのはミーシャだった。

 一枚の羊皮紙を片手に辞令を伝えたミーシャの顔色はよくない。


「グリム、爺さんの武器は間に合いそうか? 」


「余裕、ものすごい、早さで作ってる」


「そうか、ならいいんだが……何が書いてあるんだ? 」


 ミーシャの顔色の悪さに遠回しに質問を投げかけたナルに対して、手にしていた羊皮紙をそっと差し出した。

 そこに書かれていたのは王都への遠征に関する内容と、その後ミーシャがどのような訓練を課されるかという内容だった。

 そこに記された物はただ一言、特別訓練地獄編とだけ。

 その一言からナルは全てを察した。

 あぁ、今までの不正やら不満やらに対するお仕置きだと。


「その、なんだ? 生きて帰れると良いな」


「……俺の墓には酒を供えてくれよ」


 すでに死を予見しているミーシャの声は震えていた。

 余程厳しい訓練なのだろう、特別なうえに地獄とまで称されているのだから当然のことだが、普段飄々としているミーシャがここまで覚悟を決めているのだ。

 まさしく死刑宣告に等しいものなのだろう。


「ひとまず日程に関しては了解した。あとで出発の時間を聞いておいてくれ。俺達はその間今まで通り過ごしていいんだよな」


「あぁ、そう聞かされているよ……」


「そうか……本当に大丈夫か? 」


「大丈夫だ……今は」


「いや護衛の仕事に差し支えないかって話だが」


「お前も大概酷いな……俺より強くて気配に敏感な二人の護衛に何の意味があるよ」


「ここできっちり仕事しておかないと地獄じゃすまなくなるかもしれないという心配も兼ねているんだがな」


「大丈夫だ任せろ! 」


 ナルの言葉にミーシャがやる気を滾らせた。

 それは背水の陣とも言うべき覚悟だったが、この任務完遂こそが生きる道であると悟ったのだ。


「……というわけだ、グリム。今日も自由行動、俺はもう少し寝たら街で金稼いでくる」


「占い、で? 」


「あぁ、十日なら噂がたっても無視できる範疇だ。それに少し無駄遣いをして懐がさみしくてな……」


「ん、頑張って」


 グリムの声援を受けたナルは再び布団に潜り込む。

 隣のベッドからグリムが這い出して身支度を整える音を聞きながら二度寝を満喫したナルはその後遅めの朝食を済ませて街へと繰り出した。

 ほぼ全ての国家、そして街では自由市という物が存在する。

 特定の範囲に限られるが個人で店を開くことのできる市場だ。

 先日ナル達が食べ歩きをした区域もその一つであり、立ち並ぶ露店の大半は個人経営の商会に属していない者達だ。


 日銭を稼ぐためにナルのような占いをする者もいれば、狩りで得た毛皮や肉を売る者、変わった物ならば独自に葉をブレンドした煙草を売っている者など業種という点で見ればきりがない。

 中には副業として自伝や著名人のスキャンダルを書き記した本を売りさばいている者もいた。

 そして現在ナルもその本に名を乗せられているが、本人はそれを快く思っていない。

 グリムは無頓着だが、有名になるという事は相応の危険が伴う。

 今のところは他国の間者にして暗殺者を撃退した凄腕の傭兵とその付き人として書かれており、ナルの偉業はグリムの物へと差し替えられているのが救いだろうか。

 また間者の侵入と暴挙を許した軍への抗議も兼ねた記事も存在しており、今の大隊長はダメだから先代をもとの椅子に戻せという物まである。

 この辺りの対応は非常に難しく、軍が力ずくで対処することもできたがそれをすれば別の者が言論弾圧として面白おかしく取り上げるだろう。

 かといって放置すれば火種は大火に変わり、街そのものを燃え上がらせる可能性もある。

 噂をまくしたてている者達はその事に気付いていないか、あるいはそうさせたい誰かの手の者であるため軍は秘密裏に諜報部を作り、そう言った記事を書いている者の身辺調査をしていた。

 そのうち数人がナル達に割り当てられている為、今は普段以上にこの手の記事が街に出回っているのだ。

 その手の記事は情報収取に役立つ事が多いため、ナルもなんか所かそう言った店を回り発行されている物には目を通していた。

 個人の者から業者が書いたものまで余すことなくである。


 そしてこの手の記事には大抵の場合占いが乗っている。


 生年月日に合わせて適当な事を書いた占いだが、それがまた役に立つのだ。

 ナルは大抵の場合この手の占いに合わせた答えを伝える。

 例えば春の何月に生まれたものは恋愛運が向上しているという記事の場合それを参考にするのだ。

 その気になればタロットカードでも好きな札を引く事もできる。

 フォールスシャッフルと呼ばれる、世間的にはトランプなどで使われるいかさまの手口だ。

 普段からそんな方法を使えば占いの腕が鈍るという理由から多用することは無いが、いざという時には役に立つ。

 その場合相手に混ぜさせるといかさまが成立しないのでかなり不自然なものとなってしまうという難点も抱えていたが、こちらは別のいかさまで補っていた。

 それは記憶である。

 カードの並び順を覚えて混ぜられたカードの配置を記憶する。

 そしてカードを纏める際に正位置逆位置の調整を行い、フォールスシャッフルをするのだ。

 これで百発百中のいかさまが完成する。

 賭場などでやれば問題になりかねない行為だが、占いを求める者というのはナルの経験則だが後押しが欲しいという者が多い。

 本格的に相談をしたいわけではないが、その程度の些事に知人を巻き込むのも気が引けるという場合に利用されることが多いと知っていたためいかさまだとばれる事は無かった。


 仮にばれたとしても証拠がないのだ、ナルならばいくらでも言いくるめる事は可能だった。

 しかし前述の通りナルはこの手のいかさまを使う機会はほとんどない。

 純粋に占いを行い、そして結果を伝える。

 その際にどのような伝え方をすればいいのかという参考に、記事に乗せられたスペースを埋めるためだけの占いを利用するのだ。

 もしその準備を怠り、普段通りの占いを行えばグリムと出会う前にやらかしたように客を怒らせ酷いときには暴力という手段で支払いを踏み倒す者まで出てくる始末だった。


「さて……この辺でいいか」


 しばらく自由市を歩き回ったナルは小さく空いたスペースを見つけて折りたたみ式の机と椅子を並べて腰を下ろした。

 あとは客を待つばかりの体制でタバコに火をつけてその時を待つ。

 暇な時間は昨日回った書店で見つけた書物を読み漁り、そして足元に吸い殻の山を作る。

 マナーとしてもルールとしても怒られかねない行為だが咎める者はいない。

 そういう場所を選んでいる為である。


「……まぁ、こないわな」


 数十分の時間そうして過ごしたナルの前に現れる客はいない。

 場所が場所であることも含めて、ナルが胡散臭いのだ。

 煙草を吸いながら読書にいそしむ占い師、外見は若い男で非常に胡散臭い事もあるが、周囲の店は煙草の臭いや吸い殻を気にしない、飲食物や読み物の類を取り扱っていない場所、すべての条件が客足を遠ざけるのには十分すぎる物だった。

 そもそも懐事情が寂しいとは言ったが、今後数年は遊んで暮らせるだけの貯えがある。

 年内の予算として割り振った分が寂しいというだけで、客が来なくても困らないのだ。

 その気になれば、あるいは煙草を我慢すれば客を呼ぶ事はできる。

 しかしその程度の理由で煙草を我慢できる程度の喫煙者ではなかった。

 有体に言ってしまうとヘビースモーカーである。

 旅で一番金をかけている部分は食料が一番だが、次いで煙草と酒、三番目に書物と娯楽の為ならば金を惜しまないのがナルの性分であり、主義なのだ。

 それから更に数十分ほどしての事。


「何をしているのだ君は……」


「お? 巡回か? 」


 ナルの前に現れたのはリオネットだった。

 数日前に有ったように簡素な鎧に身を包んでいる。


「何をしていると聞いているのは私なのだが……まぁ巡回だ」


「見ての通り路銀稼ぎだ」


「そうか、ならばもう少し外聞に気を使うべきだな。それと煙草を足元に捨てるんじゃない」


「帰るときには片付けるさ」


「なら……いや良くないな、まったく。それで客は? 」


「見ての通りだ」


「……仕方ないな」


 そう言ってリオネットはナルの前に腰を下ろす。


「巡回さぼっていいのか? リオネット大隊長様」


「さぼりではない、怪しい占い師の職務質問だ」


「そうかい」


 そう言いながらもリオネットの表情は占いの様子を気にしていたようにも見えたナルは、せっかくだから普通に占ってやるかとタロットカードを差し出す。


「混ぜればいいんだったな」


「あぁ、向きと書きにせず混ぜるんだ。でもカードを折らないでくれよ」


「む、私がそれほど粗忽者に見えるのか」


「見える」


 あまりに歯に衣着せぬ言葉にリオネットは押し黙るが、しかし今はそれよりも占いに気を向いているのだろう。

 ナルの失礼な発言を無視してタロットカードを広げて混ぜる。


「上手い上手い」


「この程度で茶化すな……」


 怒りを込めてナルを睨むがどこ吹く風のナルにその程度の威圧が通じるはずもなく無視されてしまう。

 しばらくカードを混ぜて満足したのか、リオネットは卓上から手を卸した。

 そしてバラバラにされたカードをナルが集めて三枚順番に並べる。

 グリムと初めて会った時同様のスリースプレッドである。


「さて、このカードは順に過去、現在、未来を示している」


「ほう、つまり今までの行いと今の行い、そして未来に起こるであろうことがわかるのか」


「当たっていたら色を付けてくれよ」


「定価で払おう」


 ちゃっかりとしているものだと思いながらも、この手の隠語はやはり通じないかと思い、面倒なので説明を放棄した。


「もう一枚アドバイスカードってのを全部捲ってから引くんだが、今回はそれは省略だ。俺とリオネット、グリムに関係しているという理由で察してくれ」


「む? あぁなるほど、そういうことだな。わかった」


「じゃ、まずは順番に過去から見るぞ」


 そう言って一枚カードを捲る。


「ペンタクルのエース、正位置だから恵まれたスタートや繁栄を意味しているカードだな。まさしくその通りって感じのカードだ」


「うむ、確かに私は恵まれていた。順調に出世したというのは繁栄とも読み取れるな」


「じゃ、次に現在」


「ソードの7、正位置。魔がさしたり大事な所で判断を間違える事を意味している……」


「大いに心当たりがあるな、お前の事やお前たちに着けた護衛の事とかでだいぶ間違えたのではないかと思っていた所だよ」


 耳の痛い思いをしながらもナルは誤魔化すように笑って最後のカードを捲る。


「未来は……あれ? 」


 三枚目のカードを表替えした瞬間、ナルの表情がこわばった。

 多少占いの知識があるリオネットだが、タロットカードの意味までは知らずにその表情から不穏な物を察する。


「塔の正位置……なんというか解釈の多いカードなんだがな……」


「何だお前らしくもない、はっきり言ってくれ。どんな意味があるのだ」


「ターニングポイント、や転機、魂の成長なんかを意味する」


「悪いカードではなさそうではないか。何をそんなに言いよどんでいたのだ」


「破滅や損失、失う事で価値に気付く、激変でそれまで手にしていた物を失う……そんな意味も有るカードなんだよ。実のところ俺が今まで占ってきた中では破滅の意味の方が圧倒的に多い」


「……おい、アドバイスカードとやらは本当に引けないのか? 」


「……裏技を使うか」


 そう言ってナルはデッキの上から二枚のカードをその場に伏せた。


「好きな方を選んでくれ」


 ナルの言葉にリオネットは先に曳いた方のカードに手を乗せた。


「じゃあこっちな」


 そう言ってもう一枚を開く。


「なぜだ? 」


「それ、開いてみ。【愚者】だから」


 言われるがままにカードを開くとナルの言葉通り【愚者】のカードが現れたのだった。

 裏技というのはカード保有者にアドバイスカードを引かせると必ず【愚者】を引き当てるならばもう一枚別に引いてしまえばいいという力技だった。


「えーと、ワンドの騎士逆位置……うん、あきらめろ」


「待て待て、意味とかアドバイスとかどうした」


「だからあきらめろってことだ、意味は争いごとや不破、足止め決裂と下手をすれば塔よりも救いがない。足掻けば足掻くほど泥沼にはまる上に収束した問題が再燃しかねないと好ましくない状況が続く暗示だな。徒労に終わる事もしばしば、だから下手に物事の中心で何かをしようとするよりも諦めて離れた位置から静観して解決策を探りなさいな」


「……最悪だ、私今週の占いはそれなりにいいことが書いてあったんだぞ」


「あぁ恋愛運向上仕事運良し無病息災だっけか、あんなもんサイコロでも振って決めてるんだろうからその気にさせてるだけだろ」


 実際の所サイコロを使った占いというのは存在する。

 しかしナルが言っているのは適当に割り振った表を使い、その中からサイコロで決めているにすぎないのだろうという考えに基づいた発言だった。


「なんて奴だ……私はどうしたら……」


「あまり落ち込むなって、結局はただの占いだぞ。酒の席での笑い話にも……ってそうか、禁酒だったか」


「あぁ……護衛は飲んでいないだろうな」


「特別訓練の脅しが効いているみたいで真面目に仕事してるよ。俺は一人でいいからグリムの護衛してろってそっちに着けている」


「そうか、私もそのつもりで一人しか護衛を用意しなかったから意図をくみ取ってくれたのならば嬉しいぞ」


「しかし俺の周りうろつかせてる監視役、あれもう少し何とかならないか? 」


「ならんな」


 監視が付いて当然という意味でリオネットは言い放つがナルが言いたい事はそこではない。


「そうじゃねえよ、もうちょいこっちの質問とかに答えてくれるような人員配置できなかったのかって話だ。気付いているんだから部屋で誰もいない時くらいは話し相手になってくれるくらいの度量は見せてくれって話だ」


「む……いやしかしだな、仮にも諜報という名目で着けているのだぞ。さすがにそれは……」


「まぁいいけどさ、暇でしょうがねえんだわ。もうちょい軽く接してくれる奴も派遣してくれると助かる。人員不足なのはわかるけどな」


 そう言って懐から何枚かの記事をリオネットに手渡す。

 そのどれもが獣騎士隊の怠慢について記載された物だ。。

 数十枚にも及ぶそれらは全て別の人物によって書き上げられたものであるにもかかわらず、先日のフライ潜入事件について面白おかしく書かれている。


「あの事件以降詰所の人間の身辺を洗いなおしたりと本当に忙しいのだ……私が直々に巡回しなければいけない時間が増えるほどに……」


「そりゃなんとも……しかしなぁ、ならなおさら俺達に諜報員張り付けてていいのか? 」


「国賓待遇せよという通達があったので手を抜くわけにもいかないのだ……」


「まぁなんだ。ならさっきのアドバイス通り距離を置いて静観しておけ。諜報員の数も減らしていいだろ。悪いことは……あー……」


 先日違法薬物を購入した際の事を思い出してナルは言葉を濁した。


「その件については言及するつもりはない、聞いた限りではまっとうに薬として使っていると聞いたからな」


「そうしてくれるとありがたいが、仮にも軍の上層部にいる人間がそんなこと言っていいのか? 」


「よくはない、よくはないのだが……」


 捕まえるわけにもいかず、かといって野放しにもできず、まさに静観するしかないリオネットは頭を抱えていた。

 そして数秒机に頭を乗せたまま何かを考えている様子を見せて、そしてガバリと起き上がった。


「よし、決めたぞ。私はしばらく休暇を取る! 」


「駄目だろ、混乱の最中上の人間がいなくなったら収拾がつかなくなるぞ」


「……わかっている、言ってみただけだ」


「というわけでだ、お代をいただこうか」


「む……そうだったな、いくらだ」


 その問いにナルは煙草を一本吸いながら椅子にもたれかかり値段を考える。

 普段であれば相手がどの程度満足したのかを見ながら相場と見合わせて金額を決めているのだが、如何せん相手はリオネットである。

 さらにこの街で初めての占い師としての仕事ゆえに相場が分からず、下手な事を言えばぼったくりだと怒られることは想像に難くない。

 占いの結果も、それなりに悪いものだった分言い出しにくいものもあり、そして他の国の相場があてにならないとも考えていた。


「300ってところか」


「随分と安いな……」


 適当な屋台で軽食を購入すればその程度の額である。

 先日食べた肉串の値段が一本150なので二本分である。


「まぁこの辺りの相場が分からんってのもあるし、なによりさっきも言った通りあまり儲けるつもりはないからな。あとは占いの方法と時間で上乗せ有りにすれば十分だ」


「ほう、参考までにどんなのがあるのだ」


「今やったのはスリースプレッド、過去から未来までを占うもので簡単な占いだ。てワンオラクルという一枚だけ引いて今後の運勢を見るものが一番簡単だな、これなら大アルカナだけでもできる。ツーカードと言って二つの選択肢に対してどのような未来になるかという占いも簡単な部類だな。面倒なのだとケルティッククロスとかホロスコープなんてのもあるがそっちは少し高めに設定するつもりだ」


「ほう……せっかくだ、もう一つ頼むとしようか。そうだな……ホロスコープとやらを頼もうか」


「現時点自分を取り巻いている現状を知りたいか、それとも今後一年一月ごとの運勢が知りたいか、どっちだ」


「む……どちらも気になるな、どうするか」


「じゃあサービスだ」


 そう言ってナルはリオネットと共に再びカードを混ぜる。

 そして二枚のカードを机の上に置いた。


「これがツーカード、現状と一年の運勢それぞれを占った結果どうなるかを教えてくれると考えてくれ。本当は商談でどっちの商品を進めるべきかとかそういう時に使うものだけどな」


「ならば現状を占った場合から見てみよう」


「ワンドの5逆位置、プライベートの悩みや苦い思い、ミスチョイスだな」


「あまりいい結果ではないな」


「じゃあ今後一年の運勢は……ソードの王正位置か。的確な判断や課題を明確にするって意味がある」


「おぉ、では今後一年を頼む」


「はいはい、ほれ混ぜるぞ」


「うむ」


 いささか機嫌をよくしたリオネットはカードを混ぜてご満悦の様子だった。

 今後一年の占いはなかなか厳しいという結果が前半に集中していたが、後半には相反して良い結果が並んでいた。

 ならば辛いのは今だけだなと軽快に笑ったリオネットは、少し多めの代金を置いて巡回に戻っていったのだった。

 後日リオネット大隊長巡回中に占いにいそしむという記事が書かれて上司からの叱責を受ける事になるのだが、当の本人は今は耐えるのだと言い聞かせ続けていた。

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