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ドリームガチャ ~人の欲望は十人十色~ [最良の選択]

作者: stb

男「あーどっちにしよう・・・」




彼の名前は時田透18歳、大学受験を終えて進路に迷っていた。


1つ目の進路は私立大学への入学、俗に言うマーチクラスの大学であり就職率も悪くない。


2つ目の進路は音楽学校への入学、彼はボーカルとしてバンド活動をしており、地元名古屋ではワンマンライブを行うほどの人気があった。




彼の気持ちとしては、2つ目の進路で夢を追いかけたいのだが、両親は猛反対。また、音楽で飯を食えるのが一握りであることもよく理解していた。




時田「自分の気持ちに正直になるか、これから先の結婚とかを考えるとやはり堅実な道か・・・」


進路の悩みはだれでも少なからず経験するだろう。そんな時、彼のスマホが急激なアップデートを開始した。




時田「な・・なんだスマホが急に動きだしたぞ・・・ん?アプリがインストールされた・・ドリームガチャ?しかも勝手に起動しはじめた。」




ドリガチャ君「はーい こんにちは ドリームガチャ支配人のドリガチャ君です。人の欲望は十人十色。あなたの欲望をガチャにかけてみませんか?」




ドリガチャ君と名のるジョーカーに似たマスコットキャラクターが急に出てきて喋り始めた。




ドリガチャ君「時田・・お前はいま進路で悩んでいる。ガチャで何かの能力を身につけてから考えてみるのも良いぞ。 1回だけルールを説明する。」



・ガチャは1回だけ。何かの能力が身につく。人生を賭けて引くのでリセマラは当然できない




・全世界の人の欲望がガチャで出た能力の内容


(“毎日安全な水を飲める”という日本では当たり前のものから、“海でも呼吸できるようになる”という超人的なものまで多種多様な能力がある




・ガチャのレア度は★~★★★★★まで


レア度が高い方が出る確率が低いが、能力は強力なものが多い




・能力は死ぬまで続く


 


ドリガチャ君「ルールは以上だ。どうだ引いてみるか?」




時田「ふん。どうせイタズラだろう。どちらにせよ気が紛れるし、運試しのつもりで引いてみるか。」




ガチャ・・・


複数あるカードが回転し始めた。




スマホ上にはカードを引く手が表れている、どうやらこの手をタップして1枚カードを選ぶらしい。




時田「これだ!」




カードが1枚選ばれ、ゆっくりと表向きなった。




時田「星5のカード来い!!」






【★★★★☆】能力:最良の選択



あなたの人生において2択の選択が迫られたとき社会的に最良の選択が選ばれる。


※あなたの意思は関係ないものとする




ドリガチャ君「星4とは運の良いやつだ。しかも、いまのお前にピッタリの能力だな。


あとはこの能力をどう使うかはお前しだい、ドリガチャライフスタート!」


そう言うとドリームガチャアプリは勝手にアンインストールを始めた。




時田「おいおい、本格的なイタズラだな。まぁ良いか、運が良かったことは証明された。そうするとミュージシャンの道でも行けるかもしれないぞ。」




時田は音楽学校の願書に手を伸ばした。


その時だった。頭の中に声が響いた。




声「あなたは、私立大学か音楽学校かの2択で進路を迷っていました。その結果、音楽学校への意思を固めましたが、それは間違いです。あなたの才能や技術から逆算するとプロになる確率は2%です。また、プロのレベルとしてドームでライブできる確率は0.01%となります。これは最良の選択にはなりません」






時田「なんだこの声は、あ…頭が割れそうに痛い。やばい意識が。。。」


消え行く意識のなか、彼は音楽学校の願書をビリビリに破いている自分がいたような気がした。。。


彼の意識がはっきり戻ったのは、私立大学に願書を出した時だった。




大学職員「お預かりします。」




時田「あれ?なんで大学にいるんだ? たしか俺は音楽学校へ行こうとして願書に手を伸ばしていたはず。あ、その時に突然声が聞こえたんだ・・・まさか、あの能力・・嘘じゃなかった・・・俺が私立大学と音楽学校の2択で迷っていた結果、最良の選択が私立大学だったってことか。たしか、プロになれる確率は2%とか言ってたな・・・もう、願書を出してしまったし、プロになれる確率も歩まずにわかったわけだし、私立大学のキャンパスライフを楽しむとしよう。」




彼は私立大学への道を歩むことになった。




時田「しかし、大きな決断をした後は腹が減るものだ。お気に入りの中華のチェーン店で飯でも食べるとしよう。」




定員「いらっしゃいませ」




時田「おぉ、春のおすすめメニュー対決がやってるな。ニンニク定食VSチャーハン定食か、ニンニク大好きだからこっちかなー。うーんチャーハンもいいけど。」




その時だった、頭の中にまたあの声が聞こえだした。




時田「ま、また、頭に痛みがはしる。まさか、こんな2択でも発動するのか。」




声「ニンニク定食に心が決まりかけていますが、社会的には最良の選択ではありません。栄養素から見ればニンニクのほうが優れていますが、スメルハラスメントの原因にもなります。このあと、新幹線に乗って名古屋に帰られる際にニンニクが原因で他の方に不快な思いをさせてしまう可能性が高いです。よって、チャーハン定食が最良の選択となります。」




次に意識がはっきりしたのは、彼がチャーハン定食の注文を終えた後だった。




時田「この能力・・・ヤバイぞ。進路に迷っていたときは良い。最良の選択を教えてくれたと思う。だが、このオススメメニュー対決のように予期せぬかたちでの2択を迫られた際に、少しでも心の中でどっちが良いか比べたら、すぐ能力が発動してしまう。これからの人生でどれだけ2択が迫られるのか。」




時田はこの能力を手に入れたドリームガチャをしたことを少し後悔した。




時田「ん・・いやまてよ。もしかしたらこんな使い方もあるかもしれないぞ。」




実況「1番ダークインパクト早い。おっーと3番のナカヤマサンダーを追い越すか。ゴール直前に迫る。1番追い越したー!1着はダークインパクト大穴が出ましたー。」




時田「おっしゃー万馬券だぜー!」




時田は競馬場でかなりの額を儲けていた。そう、最良の選択の能力を応用したのだ。




時田「この能力を使って、AとBの馬どちらにしようか選ぶ、AとBが両方勝利しない場合は、2択が発動しない。なぜかって?どちらも負けるからだ。社会的に見てもどちらを選んでも損は損。最良の選択は存在しない。ただし、どちらかが勝つときにあの声が出てくる」




声「AとCの馬どちらか迷っているようですが、Cを選ぶとお金を増やすことができます。社会的に見ても資産を増やすことは最良の選択です。よってCの馬を考えていた金額で賭けます。」




時田「こんな具合だ。1万ほどに金額が10万にまで膨らんだぜ。大学生活は何かと金がかかるからな。これでバイトしないでも金に困ることはないぜ。」




彼は能力で大学で遊ぶための資金を簡単に手に入れられることに気づいたのだった。



彼は何とかこの能力と上手く付き合う術を見つけて大学生活を謳歌していた。何せ金に困ることはない。懐が寂しくなったら競馬に行って小銭を稼げばいい。また、その気になれば就職をせずとも将来は安定なのだ。金に困らない大学生活の時間は腐るほどあった。彼は音楽を趣味で続けた。大学の軽音楽部サークルに入ったのだった。元々名古屋ではワンマンライブを行えるほどの実力があった彼がサークルで注目を浴びないはずはなかった。当然黄色い歓声を浴びることもできて彼は満足していた。




時田「いやー一時はどうなるかと思ったけど、能力に感謝だぜ。いまでは大学でも人気者。ラインを知りたがってる女子もたくさんいるって噂を耳にしたしな。」




時期はもうすぐクリスマスだった。現在、彼女のいない時田には気になる子はそれなりにいた。ただ、2人に絞ってしまうと能力が発動してしまうため、そこらへんは意識しないように気を付けていた。はずだった・・・




時田「もうすぐクリスマスか・・・ ♪ おっとラインだ! あ、理沙と舞からだ。2通一気に来るとは珍しいな。何だろう?」




理沙&舞のライン


「時田先輩。私達2人とも時田先輩のことが気になってます。私達親友なので、2人の関係を崩したくなくて何もモーションをかけませんでしたが、とうとう2人とも限界になりました。そこではっきりさせたくてラインしました。理沙か舞どちらも時田先輩のことが好きです。先輩は1人しかいないのでもし良かったらどっちかと付き合って下さい。お願いします。」




ちなみに、理沙は学校でも有名な美人でスタイルも良いが、舞はどちらかと言うとどこにでもいそうな平凡な感じであった。




時田「やばいぞこのライン。能力が発動してしまう。俺としてはもちろん理沙と付き合いたいのだが・・・」




時田が思っていたとおり能力が発動した。




声「残念なお知らせがります。実はあなたは子供がつくれない体です。いままで女性関係の2選択がありませんでしたので、知らせておりませんでした。理沙と付き合って結婚した場合、子供がつくれないことを知ったら、彼女は離婚を切り出す可能性があります。なぜなら彼女の将来の夢は子供の笑顔があふれる家庭にすることだからです。しかし、舞は違います。あなたの体のことを打ち明けてもそれを受け入れて寄り添ってくれます。離婚することは社会的な信用を失う可能性も否定できません。よって最良の選択は舞にななります。ラインを返信します。」




舞「ほんとに私で良いんですか?嬉しいです。よろしくお願いします。」




舞からの返信が来たときに時田の意識が戻った。




時田「俺の体のこと、理沙を振ってしまったこと・・・色々ショックだな」




なにわともあれ、舞と付き合うことになったのだった。




最初のうちは「なぜ、理沙ではなく、舞を選んだのか?」と学校のちょっとした話題となったが、いつしか皆それを受け入れていった。時田自身も舞のことはそんなに好きではなかったが、舞の性格や人柄の良さにだんだん心が引かれていった。




舞とは大学生活の4年間付き合いを続け、就職を機に結婚した。ちなみに時田は能力を使いながら大手企業に勤めることになった。





社会人になってからの生活はまさに順風満帆だった。都内のマンションを購入し、舞と幸せな生活を送っていた。幸せな時間は過ぎるのが早いもので、気づいたら30代後半に差し掛かろうとしていた。




最良の選択のとおり、子供には恵まれなかったが、舞はそれを受け入れてくれていた。しかし、どことなく寂しそうな顔をするときもあり、時田はそれとなく養子を迎えてみる相談を持ち掛けた。時田自身としては養子は受け入れなくてもいいのだが、舞のことを考えての提案だった。すると、舞は思いのほか乗り気であり、3歳の智之という男の子を養子として迎えた。




智之はとても聞き分けがいい子であり、旗から見れば仲睦まじい親子であった。


舞も智之のことをとても愛しており、時田は満足だった。ただ、彼自身は智之のことを自分の子として見ることはどうしてもできなかった。




智之「今度の休みに旅行に行きたい」




舞「パパに相談してみましょう」




~週末~




時田一家は、箱根旅行に向けて車を走らせていた。道も混んでなく順調だった。




時田はしばらく仕事が忙しかったこともあり、ついぼーっとしてしまった、その時であった。




時田「しまった。」




ハンドル操作を誤り、車のバランスを崩しトラックに衝突してしまった。




ドスン




ものすごい音がした。




運の悪いことに後続車も事故に巻き込まれ、辺りは悲惨な状態となった。




横転したトラック、ぐしゃぐしゃに潰れた車、事故の衝撃で外に投げ出されてしまった人、誰が見ても大事故であった。




パトカーや救急車が到着し、


時田一家はすぐさま病院に運び込まれた。




~病院~




時田「あれ。ここは・・・たしか事故にあったはず・・・」




不幸中の幸いとも言うべきか、意識を失っていたものの、時田は軽症で済んだのだった。




時田「体のあちこちが痛いが、助かって良かった。そ、そうだ、舞と智之は 無事なのか。」




看護師「いまお二人は緊急手術を行っております。容態については後ほど担当医からご説明いたしますので」




時田「ぶ、無事なのか、早く教えてくれ。」




時田は心臓の高鳴りとともに、とてつもない不安感に襲われた。




・・・もし、2人とも帰らぬ人になってしまったら、




いや、2人ともというよりは、舞が帰らぬ人になってしまったら・・・




いてもたってもいられなくなり、傷ついた体で手術室へ向かった。




~待合室~




待つこと3時間、医師が時田のもとへ説明をしにきた。




医師「2人とも内臓の損傷がひどく、非常に危険な状態です。」




時田「そんな・・・先生なんとかしてください。家族を2人も失うなんて耐えられない。」




医師「お気持ちは痛いほど、わかります。ただ・・・」




時田「ただ?何か助かる道があるんですか?」




医師「・・・これは、私の口から申し上げずらいことなんですが、奥様と息子様の損傷箇所がお互い異なるため、どちらかの臓器を移植すれば助かる可能性があります。」




時田「・・・それって。」




医師「もう片方の方は残念ながら・・・」




時田「ふざけるな!どっちかを選択しろってことか・・・」




能力が発動した。




声「非常に危険な状態の2人、どっちを選択するかは、智之君を生かす選択になります。理由は簡単です。舞さんは出産適齢期も既に過ぎており、現在専業主婦。社会貢献できる可能性が低くなっております。一方の智之くんは、これからの可能性が無限に広がっており、あなたのように体の欠陥もございません。また、親が自らの命を犠牲にして子供の命を助けるのは当然と言えます。日本の未来を担う子供を大切にするのは社会的にも裁量の選択です。よって智之君を生かします。」




時田「(やめろー やめてくれー) 智之を助けてください」






~数日たって~




ドリガチャ君「人間生きていれば、選択に迫られるときは誰しもある。最良の選択が自分にとって最高ではないこと、道を誤るから人間として成長できることを忘れちゃダメだな。さて、次は誰にしようか・・・」






人間の欲望がある限りドリガチャは存在する。



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