第89話 すごろくの振り出しに戻るの鬼畜さは異常
非常にお待たせして申し訳ありません。。
んー落ち着いて考えよう。
さっきまでダンジョンにいた。
謎の空間に入った。
出てきたら草原だった。
ワープの線が濃厚か? いやでも特筆すべきは空間干渉が制限されている点。最近あった近しい事象は、空間干渉が通じない敵がいたという事。で類似する点は、そいつらを追ってきた結果、空間干渉が出来ない場所に来てしまったという点。流石にこれは関係ないって事無さそうだな。
……だぁぁぁ最近考える事が多過ぐる!
どういう事なんだよ、誰か説明しろし。
ん? 待てよ、戻れるのかこれ。後ろには、あるな。謎の黒い渦があるわ。さっきの奴らはここから入って来てた訳だ。
取り敢えずエルメスさん心配させるのも悪いし、一旦戻るか。
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「フォッフォッフォッ!」
「……は?」
「ワシじゃワシ、久しいのぉ」
「しわしわ詐欺の方でしたか。警察へどうぞ」
「相変わらずお主は冷たいのぉ」
何なのこれ、今度は何?
戻ったら真っ白の空間?
意味不明過ぎて頭がついていかにゃい。
よし、諦めるか。
「寝るわ」
「待て待て待て」
「んもー、何なのじーさん。さては神か?」
「分かっとるなら最初から普通にせんか」
何でこのタイミングで神?
散々こっちからアクセスしてたのを無視しておいて?
「こちらとしてもな、接触できるタイミングは限られておるのじゃ。今回だと世界間移動で、精神的にも安定しておったからの。今じゃ! とスナイプした訳じゃ」
「ゴースティングかよ」
理由はあった訳か。
なら次はスナイプした理由の方だな。
「うむ、そろそろ事情を話しても良い頃合いかと思ってな」
「事情? 俺を送り込んだ?」
「平たく言えばそう言う事じゃ。疑問があれば答えるぞい」
疑問があれば?
疑問しかないんだが。
「じゃあまず俺だった理由について」
「うむ。実はお主だけではないのじゃ」
「は?」
「他にも何人か送り込んでおる。ワシの能力の限界で何百何千とはいかんが、ある程度の人数は送り込んだ」
「なら他にもいるの? 俺みたいなやつ」
「いや、全員死んだな」
「は? 全員死んだ?」
「うむ。普通に魔物にやられたり、怪我で死んだり、事故、餓死、様々じゃ」
「いや死に方は聞いてねぇよ。何でそんなギャンブルした訳? もうちょいなかったの? 異世界能力チートギフトみたいな」
「お主もあったじゃろ? シャッフルゲートが」
「ショボ過ぎワロタ」
アレが異世界チート?
ははーん、さてはこのじーさん、異世界物のラノベ読んだ事ない派だな。
「理由があるのじゃ」
「理由?」
「うむ。別の世界からワシが転移させる場合、この空間を経由する必要がある。その時、強い者を送り込めば送り込む程、ワシの消費が激しくなるのじゃ」
「成る程、頑張ってどれくらい?」
「特異能力なしで、Lv20の状態で送り込むには、Lv1を送り込む場合の1000倍のコストがかかる。特異能力も秀でた物を与えればコストばどんどん大きくなる」
「だから特異能力はあげるから、ワンチャン現地で育って下さい作戦な訳か」
「そういう事じゃ。ギフトも最初から強い物ではなく、育つ様になっとる、コスト削減なのじゃ」
成る程ね、じゃあ俺はガチで死ぬ所だった訳か。パイセンマジ感謝っす。
「因みに死ぬとどうなるの?」
「元の世界に帰れるのじゃ。時間の経過が向こうとこっちで違うから、ある程度の余裕はある。つまり肉体が残っておればの話という訳じゃ」
「え、帰れたの?」
「うむ。帰れる様にする為に、更にコストを上げとる」
「成る程ね」
あの時死んでたら俺は帰れてたのか。
ん? 今死んだら帰れるのか?
「お主の身体はもう骨しか残っておらんな」
「テラ鬼畜ワロタ」
もう死んでもアウトだからペラペラ話せてる訳だ、性格の悪い神様だ事。
「そこはすまんと思っとる」
まぁお陰で出会えた新しい人生もあるし、もう良いんだけど。
「そう言って貰えると少し救われるわい。因みに戻る時に状態がリセットされるから、肉体も精神も仮に粉々に破壊されたとしても元通りで帰れるのじゃ」
「……つまり記憶も無くなると?」
「そういう事じゃな」
「成る程、んじゃ次ね」
「うむ。どんとこいなのじゃ」
俺の転移の経緯は聞けたから、次はと。
「そもそも異世界人を送り込む理由は?」
「うむ。実はワシは世界間のバランスを取る役目があるのじゃが、その特異な存在故に過度な干渉は出来なくなっとる、その上でじゃ。今、世界間のバランスが壊され様としておる」
「うん? なんのこっちゃ」
「お主が転移した世界、あれは元いた地球の思念から生まれた仮想世界の一つじゃ」
「……まぁ続けて」
「世界の生まれ方については説明した所でなので割愛する」
「それでいいよ」
「こう在ればという過去から連なる思念から生まれた世界で、お主はその世界との調和性が高かった」
「成る程、確かにね」
「故にお主が選ばれた。そして、その役目は【他世界からの強制干渉を防ぐ事】じゃ」
「他世界からの強制干渉?」
「左様。他世界とは思念世界とは違う地球と同じ様な別の世界の事じゃ」
んん? んーつまり。
地球みたいな地盤のある世界と、その世界から派生した思念世界の2種類がある訳だ。で、その地盤のある別の世界から、思念世界への干渉に成功してしまったと。
で、そいつらが侵入して来るのを防いで欲しいってのが俺が転移した理由って訳か。選ばれたのはその辺りの飲み込みが早い、理解のあるタイプ、要するに神に選ばれたオタクだったと。
「うむ。正しくその通りじゃ」
大分読めて来たな。成る程、それなら大部分の謎に合点がいく。あーあーそしたらもう俺は帰れない訳か。
「思念世界の存在として転移したお主はもう戻れんな」
「なんか地球から直で行ってたら、肉体ごと戻れるみたいな言い方じゃね?」
「そういう存在もおるという訳じゃ」
「へー、成る程ね」
同類がいる訳か、頭の片隅にでも置いておこう。そう言う奴は遅かれ早かれどうせ目立つからな、出会うのは難しくないだろ、多分。
「後は、何で空間干渉出来なくなったの? 俺のチートさん仕事しないんだけど」
「あれは思念世界で生き残る為のギフトじゃ、故に思念世界でしか機能せん様になっとる。仮に使えたとしてもかなり制限が課せられる。世界間移動とはそういうものじゃ」
「ん? でも吸収は出来たけど?」
「それはギフトではない、お主自身の能力じゃ」
「あー成る程、そういう区分か」
今の言い方だと、完全に使えない訳でもないって感じか。制限が増えてるから、もう一度試し直しって事だな。
「うむ。どこまで使えるかは分からんが、ワシからのギフトは物体移動みたいな物であって、幻夢之懐ではない。ギフトが変化したとき、その一部にワシのギフトが混ざってある可能性を考慮した発言という訳じゃ」
「ふむふむ、ならその世界間移動の制限ってのはどう言う物なの?」
「文字通り世界間を移動する。それは場合によっては侵略にもなりかねない事なのじゃ」
「まぁ実際そんな感じだったよな、俺たちが被害者ポジションで」
「うむ。理が違うが故に育つ部分も違う、世界間を移動できる者はどうしてもやがて強くなってしまう」
「ん? ちょっと何言ってるのか分かんない」
「お主が移動した先の世界にはレベルの概念はないのじゃ」
「え、じゃあどうやって強くなればいいの?」
「そもそもじゃ、お主はレベルの概念がある世界から転移してきたのか?」
「……確かし」
成る程ね。世界間を移動した俺が、この能力を持って地球に帰ったらって事か。それはちょっとヤバいな。バランサーとしては問題しかない話だ。
「その通りなのじゃ。故に世界間移動には本来制限が課せられる」
「帰るとリセットされるみたいな?」
「うむ。じゃがその世界の奴らは自力で移動する術を見つけてしまったのじゃ。ワシも驚いたわい」
移動できるって事実はある訳だから稀にバグがあるのは仕方ないとして、それを見つけて利用しようとしてる奴がいるって事か。それはヤベーな。
「長く神をやっとるがこんな事初めてじゃ。ただ其奴らは世界間を移動する術を見つけたものの、移動は暫く出来んかった。じゃがな、移動時に自分達の能力が半減するという制限を設ける事と、利用時の移動人数に制限をかける事によって遂に突破しおったのじゃ」
「え、あれ半減してたの?」
「うむ、きっちり半分じゃ」
今戦ったら倍の強さになってる上に、俺は空間干渉出来なくなっちゃうって事? ヤバくね?
「神様や」
「なんじゃ?」
「護り手の俺に厳しくね?」
「悪いとは思うが、世界間移動とはそういうものなのじゃ」
うーん、思念世界で迎撃は出来ても、世界間移動後に討伐ってのは難しいかもしれないって事か。キツいなー。
「なら向こうで待って、来た所を返り討ちにするか」
「確実な勝利を求めるならそれが良かろう。しかしながら、あの時世界間を移動しておったのは、敵勢力の王の親衛隊的な奴らの配下じゃ」
「ヤバすぎワロタ」
「因みに王が最も強い、その世界では魔王と呼ばれておる」
「ルムたんの異世界バージョンって訳か。因みに実はロリババァで友好的って事は?」
「ないな、過去最高に苛烈な魔王じゃ」
「最悪なんですけど」
はぁ、何となく読めてきた。
つまりこう言う事か。
「再び世界間を移動し、その世界で研鑽を積んで更に強くなって、【チート×チート=魔王に勝つる大作戦】って事か」
「うむ。それしかなかろう」
「因みに神様って、今俺以外に干渉してる奴って誰かいるの?」
「世界間移動をせずワシとの親和性も高くないとくれば、干渉はほぼ出来んわい」
「ほぼって事は?」
「一度だけ、夢に出てくるくらいの形で、予言みたいな事はしたのぉ」
「テラ神様」
「そやつはその移動先の世界の、人族の王をやっておる者じゃ」
「ふーん、ならそいつは一応味方って事でいいの?」
「いや、お主ほど信用されとる訳ではなかろうて。言わん方がええじゃろうな」
「はぁ、敵しかいなくてワロタ」
「しまった! もう余り時間が残されておらん!」
「は? 時間制限とかあったのかよ。あとどれくらい?」
「あと30秒で通信途絶」
「既視感しかない件について」
オィィィ待て待て嘘だろ?
ここにきてそんな事ある?
「よし、最後に言うべき事を簡潔に伝えるぞい、お主、死んだ、異世界、ハッピーライフ、オッケー?」
「全然オッケー」
「よし、行ってくるのじゃ!」
「ってやかましいわ!!」
(この話は他言無用で頼むぞぉぉぃぃぃ)
俺は神様の頭をパシっと叩くと、気が付けばダンジョンの中に戻されていた。
おいおいおいおい。
これは前よりヤバい……って事はないか。
前よりかは大分マシだな。
うん、ならいいか。
うん、諦めるか。
「寝るわ」
「リーダー!?」